10、魔力について
俺とガルドとの模擬戦は、俺の勝利で幕を下ろした。
結果を見れば圧勝。
ガルドは俺に一太刀も浴びせられなかった。
それとは逆に俺は、軽く当てていたとは言え、二度攻撃を当てて最後に手刀を首に当てている。
この差はデカいだろう。
バカにしていた弟にやられたのだから。
試合が終わり一息ついている俺の元へ、父とレイクがやって来た。
「……サージ、お前は一体」
「凄い、凄いよ」
父は唖然とした顔をしていて、レイクは凄くテンションを上げている。
俺の模擬戦を見ての反応だ。
それと、目の前で意識を失っているガルド。
起きたときにどういう反応をするのかが楽しみである。
「どうやって……お前が魔法を使ったのだ。剣の才はあると感じていた。だから本がなくてもある程度の使い手になれるとは思っていたが、まさか魔法を使うとは。だが、剣を使える者が魔法を使えるとは聞いたことがない。それにお前の本の色は白だ。なのに」
「そうだね。僕もそこに驚いていたんだ。白の本は魔法も武器スキルも覚えられないはずなのに」
二人の認識は間違っていない。
確かに白い本は魔法を覚えられないし、剣の才を持つ者は魔法を使えない。
そう今の時代の人達は思っている。
でもその認識は大きく間違っている。
「父様、レイク兄さん、剣や他の武器のスキルを使用する者が魔法を使えないと言うのは、違うんだよ」
『どういうことだサージ!』
二人は俺に詰め寄って来た。
「まず魔法と剣のスキルだけど、根本は何も変わらない。両方とも持ち主の魔力を本に流すことで発動しているんだ。唯一違うのは魔法をイメージしているか、剣などの武器のスキルが発動している所をイメージしているかの違いくらいかな」
「だがわしらには魔力などないぞ」
「それがそもそもの間違えなんだよ。魔力って言うのはこの世界に生まれた者すべてに平等に与えられている物なんだよ。まあ、多い少ないはあるけどね。それを表しているのが、みんなが持つ本の厚みだよ」
二人はそれぞれが持つ本を見る。
だがまだよく分からないと言った様子。
それもそうか、今まで自分には魔力がないと思っていたんだから仕方がない。
「僕には理解できるけど、父様はどう?」
「よくわからんな。確かに俺の本は分厚いが、これが俺の魔力の量だと言うのはピンとこんの」
「そうだね。レイク兄さんは元々魔法を使っているから、この話は聞いたことがあると思うけど。父様はまず自身の魔力を感じ取るところからかな。元々無意識で本に魔力を流していたのを自分の意識で使えるようにしないといけないからね」
そう、父もガルドも無意識で本に魔力を流してスキルを使っていた。
スキルを発動させる時に、イメージはしっかり作っているだろうけど。
今度はそれを意識して出来るようにすることと、魔法を発動させるイメージを作ること。
そうすることで、魔力を自在に操れるようになって、魔法を発動できるようになる。
父は強化の魔法を持っている。
これを使えるようになれば、これまで以上に戦で戦果を残せるようになるだろう。
「わ、分かった」
「僕にもいろいろ教えてくれるかいサージ」
「うんいいよ、兄さん」
これにより父とレイクの特訓が開始されることになった。
ガイルだが、目を覚まして自分の状況を把握すると、少し自信を無くしたかのようになっていた。
父から俺の特訓を受けるようにと言われていたが、「無能に教えを乞う必要などありません!」と拒否して自主練をしている見たいだ。
だが、あの試合で最後に見せたガイルの攻撃はなかなか良かった。
付け焼刃ではない属性纏い。
属性の選択も良かったが、何より洗練されていた。
真面目に努力を続ければそこそこ強くなれるだろう。
俺は毎日父に魔法を教えている。
もともと、剣のスキルを使うためのイメージ自体は出来ていたのでそんなに難しいことではなかった。
自身の中にある魔力を感じる事、魔法を使うイメージ、それをしっかりつかめていれば問題ない。
そんな感じに過ごしている間に、四年の月日が流れたのであった。
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