9、ガルドとの模擬戦 後編
ガルドが動きを止めている所へ、今度は俺から攻撃を仕掛けるために攻めていく。
「能力向上重ね掛け、能力超向上」
身体能力を強化して攻めていく。
俺の体が、今耐えられる最大までの身体強化を行い、地面を思いっきり蹴って向かって行く。
俺が向かって来ていることに気づいたガルドは、向かい打つ構えをとる。
俺は、最初にガルドの使ってきた手と同じ手で行く。
三年前の父との模擬戦の時とは違い、幻影、魔法は使わずに純粋な技術だけで攻める。
「っち! スピードだけは速いがそれだけか。そんな攻撃が俺に通用するか!」
「なるほどな」
父は気づているが、ガルドは何も気づいていない。
自分が使った技なのに、何故気づかない。
それに、最初から殺気を出しまくっている。
本来この技を使う時は、殺気をギリギリまで隠して、ギリギリで相手に殺気をぶつけて幻影を見せる。
そうすることで何をしようとしているのか悟らせないようにするのだが、今回はガルドを試すために最初から出している。
「は~あ」
俺は、ため息をついてしまった。
三年前、俺と父の模擬戦を見ているのであれば、気づいていい物だと思うのだが、その気配全くない。
もしかするとそう見せているだけかも知れないが、さっきの言葉を聞く限り、その可能性はかなり低い。
俺とガルドの距離が一メートルを切った所で、殺気をガルドにぶつけて背後へと回る。
そのことに気づかないガルドは、幻影の攻撃を受け止めるために木剣で防ごうとするが、俺の木剣はガルドの木剣をすり抜けて消えていく。
それにより気づいたみたいだが、もう遅い。
俺の木剣はガルドの頭上より振り下ろされる。
ただし力を抜いて。
攻撃を受けたガルドは、俺から距離を取る。
「何をしやがった!」
「???」
「何をしたか聞いているんだ!」
「兄さんはまだ気づいていないの。最初に兄さんが使った技と同じことをしただけだよ。三年前にも父様相手に使っているのは見ているよな」
俺の言葉に対して何も答えないガルド。
ただ、かなり悔しいと言った表情をしている。
「お前もなかなかやるようだな。だがそれもここまでだ。お前は俺の力を分かっていると言ったな」
「そうだね。この三年間、一緒に父様から剣を学んできたし、兄さんと父様の模擬戦も毎日見てきたんだからね」
「それを聞けて良かったよ。俺が父様に勝つためにやって来た、秘密特訓を見られていなかったようだしな。ここまで無能なお前にバカにされたくないしな。ただ父様の見ている前では使いたくはなかったがしかたがない」
ガルドは何か大技を出そうとしている。
剣に通う大量の魔力。
ただこれをガルドも父も魔力だと思っていないのだろうな。
そのことが残念で仕方がない。
それに、その光景を見て俺はガルドが何をしようとしているのか気づいた。
剣の中級スキルにある属性攻撃。
自身の持つ剣に火や風。
水など様々な属性を纏わせて行う攻撃。
よく勇者が使っていたのを見ていた。
中級スキルではあるが、このスキルから上位スキルへつなげる事ができ。
それ以外にも、相手の苦手属性を簡単につけるため、戦いでよく使われるスキルであった。
ただし、全属性を習得するにはかなりの時間を要するため、ガルドが今使えるのは、せいぜい一個か二個の属性くらいだろう。
魔力からどの属性を使おうとしているのかを読むことは出来ないため、発動してからじゃないと対策が取れない。
「面白い手を使ってくる」
ガルドはスキル発動前に迫ってくる。
相手に何の属性を出すかを悟らせる前に俺の懐へ潜り込む作戦だろう。
これもよく使われる手だ。
属性を見られれば対抗手段を取られる。
だから、見られる前に攻めて、対策を取らせないようにしようとしているのだ。
ただし、それは相手が俺でなければと言う話だ。
流石に父やレイクの見ている前で使うのは少しためらうが、この模擬戦の目的は、今の俺がどこまで戦えるかを見る物。
そのためには魔法を使わないと言う選択肢はない。
「ガルド兄さん、これで勝たせてもらうよ」
俺は五大属性の初級魔法を発動する。
「ファイアーボール、ウォーターボール、サンダーボール、アースボール、ウインドボール」
後方に発動さて待機状態にしている魔法五つ。
そのことに審判をしている父や、離れたところで見ているレイクは唖然としていた。
それは向かって来ているガルドも同じであった。
俺に対抗手段はない、そう確信して使ってきたんだろう。
その判断に間違いはない。
今までガルドに与えてきた俺の情報は、少し剣の出来る白い本の持ち主であることくらいである。
そのため、このような判断をすること自体は正解だ。
ガルドは俺の懐に入ってくると、雷を纏っている木剣で攻撃を仕掛けてくる。
良い手である。
対人戦に置いて、雷属性の攻撃はかなり有効的だ。
ダメージを与えるだけでなく、相手を麻痺させることも出来、動きを止めることも出来る。
それにより勝負をつけられる。
ガルドもそれを狙って取得したのだろう。
それに本を開かづに使ったところを見ると、かなり練習していたのだろうな。
その攻撃に対して、アースボールを剣へと当てて雷を解除。
ただの剣の攻撃に代わる。
その攻撃には力が殆ど入っておらず、簡単に受け流すことが出来た。
魔法も試せたし、強化魔法を試すこともできた。
それに今の自分の能力もある程度は把握できた。
もう十分だろう。
俺はガルドの首に手刀を当てて、意識を奪い模擬戦は終了した。
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