二
どうも皆さんお元気でしょうか。逸話家の黒守光です。
先月は簡単な説明しか出来ずに申し訳ありませんでした。
実は発売後にこのコーナーを見たお上さんが脇道に逸れた話ばかりでちっとも説明してないじゃないかと苦言を呈されてしまいまして。
私としては編集の方がOKを出したんだから最低限は問題無かったと思うし、店頭で立ち読みをして自画自賛だかどうにか読める文章になったじゃないかと感慨深く顎髭を撫でていたのですがね。
さて、またまた自分語りをしてしまったので前回の詳しい説明を。
怪談話は多くの人が話すことで認知され、それが実在するようになります。
だからこそ、その認知される事を利用する仕事だという説明をしたのでそれを更に深くお話します。
例えばここ近年で最も大きな被害を出した口裂け女の事件ですが、あれは話は
夜道に歩いていると口元をマスクで隠し、白いワンピースを着た長い黒髪の女が立っており、「私、綺麗?」と問いかけて来る。綺麗だと答えると「これでも?」と言いながらマスクを外して裂けた口を露出させて食べられてしまい、綺麗ではない、と答えると怒り狂い鋏で殺される
というものです。
この怪談話ですがご存知であった方は肝心な部分が無いと思ったのではありませんか?思っていただければ私たちの仕事がうまくいっているということになるのですが。
私が今省いた部分を言いますと所謂対処法です。口裂け女には遭遇しても死を回避できる方法が同時に噂として存在しています。
べっこう飴が好物で投げるとそれに飛びついて追いかけてこない、というものやポマードが嫌いで嫌がり逃げ切れる。などというものです。
実はこの対処法の噂は元々あったものではなく、私達逸話家が追加で流布した噂になります。この噂が広がる事でいざと言う時に命の助かる可能性ができる逃げ道が出来るわけなんですね。私はこの仕事を夜道に迷った際のカーナビの様なものだ、とよく説明していまして、だからこのコーナーのタイトルがこんな変なタイトルなんですね。因みに同僚には好評でした。最もそいつが車好きだったからかもしれませんが。
こんな風に追加で良い噂を流すのが私達の仕事です。そうするとさっき述べたように実体化して怪談が弱体化するわけです。
実は初めから強い効果を持つ良い噂、というのは流せないものでして遠回りをして怪談をなくしていきます。
理由はオカルティックなので論理的に解明されてないのですがまあ、みんなに話されて怪談も強くなってしまってあんまり極端な残酷な噂とと相反する噂なんて通用しないのかな、なんて勝手に思ってますがね。
まあこんな風に段々と弱っていった怪談はそのうち強い効果の噂も浸透していきます。
弱り始めたらこっちのもので、実は嘘という文章を付け足すわけです。
一定数の人数がその噂を存在しない、という噂として認識することで今後その噂が現れることが無いという仕組みになってます。
先月口裂け女の話をしたせいで「お前の記事が原因で口裂け女がまた増えたらどうするんだ」なんて言葉も頂きました。ご心配には及びません。既に対処済みですので。
こんな風にこのコーナーでは既に無害化された噂を話していきますので、皆さんご安心してお読みいただけますよ。
先程オカルティックな理由で解明されてない。と述べましたがこんな風にオカルトの世界ですから今までの常識が通じないなんてことが多々あります。ただ同時に現実でもあるのでどこか筋が通っていたりするのが面白いんですよね。筋を通すということは道が通っているという事。カーナビでありたい私達と道が通っている怪談。うーん、なんだか不思議な縁を感じますね。
そんなこんなで今回はこの辺で、今回の記事は上から怒られないよう祈りつつ。
追伸
こんなこと余計に書くから怒られるんですがね。
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