クラス分け

 入学式が終わり、自分の割り当てられたクラスへ向かうことに。

 当然だが、ニッケスとエマはスキル商業科なので同じクラスにはならない。

 クラス割り当ての掲示板が校舎前にあったので確認する……人数が多いので確認するのも一苦労、なのだが。


「オレは商業科Bクラス」と、ニッケス。

「わたしは商業科Dクラスです」と、エマ。

「私、スキル学科Aクラス」と、メリー。

「みんな見つけるの早い……えっと、俺は」


 A~Eクラスまで確認したが、ない。

 数分探し……Fクラスで、エルクの名前と生徒番号があった。


「お、あった。俺はFクラス」

「おいおいマジか……アイト、よく見ろよ」

「え?」

「Fクラス、新入生代表のヤトって名前あるぞ」

「あ、ほんとだ」


 クラス分けは、平民と貴族関係なく分けられているようだ。

 ちなみに、学園に出した入学願書には、名前、希望学科、スキルを記入して提出する。誰がどのような境遇、爵位を持つ貴族の子供、スキルを持つのかで、クラス分けが決まるとの話もある、とニッケスが言う。

 とにかく、ここで一度別れることに。

 エマが心配そうにエルクを見た。


「エルクさん……」

「エマ、ようやく始まるな。俺たちの学園生活が」

「……」

「俺のことは心配するな。お前はしっかり勉強するんだぞ」

「……ふふ、エルクさんってお母さんみたいです」

「え、そうか?」


 エマはクスっと笑う。

 どうやら、エルクが心配なようだ……当然と言えば当然だが。

 エルクは笑い、エマに言う。


「エマ、改めてよろしくな」

「はい!」

「おいおいお二人さん、オレも仲間に入れてくれよ?」

「こほん。兄さん、邪魔してはいけませんよ」

「あはは。悪い悪い。ニッケス、メリー、二人もよろしく」

「ニッケスさん、メリーさん、よろしくお願いします」


 エルクは軽く言い、エマは頭を下げた。

 ニッケスとメリーも、互いに頷きあい一礼する。


「こちらこそ、よろしくな」

「よろしくお願いします。それとエマさん、私のことはメリーでいいですよ」

「はい! じゃあメリー、わたしもエマで」

「わかりました。エマ」

「おお! 無愛想な妹に可愛い友達ができた。兄さん嬉しいぞ!」

「兄さん……蹴りますよ?」

「ごご、ごめんなさいっ!」


 エルク、エマは笑った。

 ニッケス、メリーという友人を得た学園生活の始まりだった。


 ◇◇◇◇◇


 エルクは、Fクラス教室へ向かっていた。

 Fクラスを確認したが、ロシュオとサリッサの名前はなかった。

 あまり時間がなかったので確認できなかったが、どこかのクラスにはいるだろう。

 Fクラス教室に到着……エルクはドアを開けた。


「何しやがんだテメェェェェぇ!!」

「うるさい……あたしに触れようとしたから悪いのよ。汚い手で触れられたら雑魚がうつるわ。汚らわしい」

「あぁぁぁん!? テメェ、少し可愛がってやろうと思ったけどよ、もう許さねぇぞゴラァ!!」


 …………エルクはドアを閉めた。

 なぜ、Fクラス教室の教壇前で、マルコスのお供であるガンボが、新入生代表のヤトと言い合いをしているのだろうか。

 いい気分で教室に入ろうと思ったのに、台無しだった。

 エルクはソロ~ッとドアを開ける。


「ん?……あ、テメェ!? 念動力の雑魚じゃねぇか!!」


 さっそくガンボに見つかったエルク。

 ガンボの声がデカいせいで、エルクのスキルが『念動力』だとクラス中に伝わった。

 さらに最悪なことに、教室に到着したのはエルクが最後。


「念動力、ってマジ?」「おいおい、平民かよ」「マジで?」

「念動力って雑魚じゃん」「あはは、ウケる」


 ヤトとガンボの言い争いを観察していた生徒たちの興味が、一瞬でエルクになった。

 ガンボは額に青筋を浮かべながら言う。


「さっきはよくもやってくれやがったな、このペテン野郎が!!」

「いや、あの……あれ? ネズミみたいなやつと、貴族の坊ちゃんは?」

「あぁぁ!? チュータはともかく、マルコス様を坊ちゃんだとぉ!?」

「お前、声デカいよ……」

「クソが!! チュータはIクラス、マルコス様はAクラスだよ!! マルコス様は貴族だからAクラスは当然だけどな!!」

「ふーん」

「それより……さっきの借り返すぞこのクソペテン野郎!! オレのスキルを見せちゃる!!」

「おい、こんな教室で……ああもう、仕方ないな」

「見やがれ!! オレのスキル『鋼鉄化』をぉぉぉぉっ!!」


 ガンボの右腕が、制服ごと銀色に染まる。

 鋼鉄化。文字通り、身体や身に着けた物を鋼鉄のように硬くするスキルだ。

 エルクは右手をガンボに向け───。


「いい加減にしなさい」

「ッっっ!?」


 ヤト。

 ヤトの手には、いつの間にか『剣』があった。

 ただの剣ではない。極薄の片刃剣だ。

 それがヤマト国の『刀』という剣であることに、エルクは気付いていない。


「これ以上騒ぐと斬るわよ……言っとくけど、脅しじゃないから」

「っっ……っ!!」

「ふん。この程度の硬さ、スキルを使うまでもないわ。あたし、騒がしいのは嫌いなの……今回は警告だけど、次は本気で斬るから」

「ッっっ……」

「……ふん」


 ヤトはガンボに興味を無くし、適当な席に座った。

 エルクは念動力を・・・・・・・・解除した・・・・。ガンボはガクっと前のめりに倒れそうになるが、結局ズッコケた。


「ぶへぇ!? ぐ、ぬぬぬぅ……」

「大丈夫か?」


 エルクは、ガンボに耳打ちする。


「あのまま動いてたらマジで斬られてたぞ」

「ぅ……」

「お前を止めた俺に感謝しろよ? あのヤトとかいう奴、マジでやばそうだぞ」

「……お、覚えておけ!! この借りは『新入生スキル武道大会』で返してやるからな!!」


 ガンボは立ち上がり、適当な席へドカッと座った。

 エルクも、空いてる場所へ座ろうとするが。


「鋼鉄化だってよ」「ヤバいぞ、あいつ」「あの剣すげぇな」

「あいつ、マジで念動力?」「ビビってたぞあいつ」


 エルクはうんざりしそうになった。

 鋼鉄化を見せたガンボ、刀を見せたヤトの評価が上がり……なぜか念動力のアイトは「ビビッて動けなかった雑魚」認定されているようだった。


「…………はぁ」


 始まったばかりの学園生活なのに、アイトの評価はマイナススタートだった。

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