第10話

気象制御船を作り気象を支配した人間。


人間は、強い。


だけど暴走した気象制御船によって壊滅した人間。


人間は、弱い。


それでも生きる。


人間は、生きるために、世界にあらがっている。


では僕は今、生きるために何をする?


『人間』として。


目を開いた僕は、おのれに問う。


あの状況下で、なぜ僕が無傷で助かっているのかなんてわからないし、なぜコウ一人だけがひどい火傷やけど瀕死ひんしながらも生き残って僕の目の前に倒れうめいているのかも、なぜ海底に沈んでいたはずの気象制御船が直立して湾の真ん中に突き刺さっているのかも、わからない。


ただ、沸騰も嵐も、この気象制御船の暴走が引き起こしたのであろうことはわかった。


足元から再びうめき声が届いた。


目を向けると、動くこともままならずに苦しんでいるコウの隣に、大鉈おおなたが転がっている。


この状況で、僕は今、生きるために何をする?


身をかがめた僕は、腕を伸ばし……コウをかつぎ上げると、大鉈おおなたを捨て置いたまま洞窟の入口へ、他のみんながいる元の鍾乳洞しょうにゅうどうへと向かって、歩き出した。


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