第2話カイロ?回路?海路リクナ(3)
マヤコはその衝撃でベッドから転げ落ち、寝ぼけながらも何かが起きたことは理解した。
「何? 地震?」
「いや、地震じゃない……」
さっきの地響きは法則性を持って動いているそう歩いているかのように。
「リクナ! マヤちゃんとママさんをお願い!」
ヨウは窓を開けると家々の屋根の上を使って音の方向に向かっていった。
「リクナさん、ヨウは! ヨウはどこに行ったんですか!」
「……怪獣を倒しに行ったよ」
「く、この町にも出るなんて!」
予想はしていた。
しかし、こんなにも早く!
「地響きからしてそんなに遠くはないはず」
ヨウが歯を噛み締めがら音の主を探していると土煙が大きく立つところがあった。
「あれは、マヤちゃんたちの学校!?」
何もないところから土煙が上がっているように見えるが徐々にその姿を現してきた。
二足歩行で猫背。
小さな腕の代わりに大きな口を持っている。
大きさは五メートルで以前倒した、野良ロボットより遥かに大きい。
ヨウは屋根をジャンプ台にし、大きく飛んだ。
そのまま、怪獣の顔に向かって蹴りの一撃を叩き入れた。
「このヤロウ……夜中に暴れるせいでマヤちゃん起きちゃったんじゃないか……」
バキバキと右手の間接を鳴らしながら言いながら怪獣に近づいていく。
「それにここは学校だ……マヤちゃんが勉強……」
ヨウは拳を作り。
「出来なくなったらどうすんだよ!」
怪獣の腹に拳をねじ込んだ。
怪獣の口から唾液が漏れだす。
ヨウは被らないように後ろに飛び、怪獣の唾液が滴った箇所を見つめた。
グラウンドに大きな穴が空いていた。
「参ったな……」
ヨウと怪獣の戦いは長期戦になった。
体力が限界に近づいているヨウに対し、怪獣の体力に変化は見られなかった。
「下手に近づくと唾液が飛ぶし、アイツ無駄に硬いしで、ああ! 最近の怪獣っていきなりハード過ぎ!」
「ああ。陽が出てきたな……」
(学校が始まる前に片付けないと。それにしてもシャワー浴びたい)
ヨウが余計なことを考えていると怪獣はビクっと何かに反応し、徐々に身体が透けていき、消えていった。
「おいおい、まだ倒してないって」
ヨウが家に戻るとママは何も言わずに風呂を沸かした。
マヤコはドタドタと階段を駈け下り、ヨウに近づいた。
「ヨウ、何があったの? 泥だらけだし、怪我もしてる!?」
「ヨウ、怪獣は倒せたかい?」
いつものリクナから想像できないような低い声でヨウを問い質した。
ヨウは静かに首を横に振ったまま倒れた。
「私、今日学校休むよ!」
「ヨウのことは心配しないで、私が側にいるから」
「ヨウがこんなになってるのに授業なんて受けられないよ!」
その様子を見ていたママは静かに学校に休みの連絡を入れた。
ヨウは怪我の手当てを受けて客間の布団に寝かせられた。
「リクナさん、一体、何があったんですか?」
リクナは腕を組んで。黙っている。
「あんなになってるヨウのことを何も知らずに一緒になんていられません!」
マヤコの声に涙が混じっていた。
リクナは意を決して、口を開いた。
「ヨウは……私にもわからないんだ……」
「わからないって……」
「私はヨウの強さを研究し、ヨウの身体からあの強さを取り出そうとした」
マヤコは黙って聞いていた。
「実験は失敗だった……ヨウを、ヨウをもっと強くしてしまった!」
「そ、それで!」
「
「バイオハザードランナー……?」
「あ、そういうことだったんだ」
ヨウは腕を枕にし、欠伸をしながら言った。
「リクナ博士に
「ヨウ、大丈夫なの!?」
「おかげさまで、治りも早いんでね」
腕の包帯を取ると痣だらけだった腕はキレイに戻っていた。
「しかし、困ったことがあるんだよね」
「何?」
「怪獣の出現地がマヤちゃんの学校ってこと」
「え?」
沈黙が部屋を包んだ。
「ちょっと! 学校で怪獣と戦ったの!?」
「そうだよ」
「戦った痕でグラウンドとかめちゃくちゃになってるやつじゃん!」
「いや、それはないよ」
リクナは小型端末を器用に片手で何かを入力しながら言った。
「ガバメントアンビュランスバイオハザードランナーは怪獣も倒すし、後片付けもするよ」
「そんな、朝方、帰ってきたのに戻すことなんて!」
「できるよ。それがプロだからね」
「うう。お腹空いた。マヤちゃん、何かない?」
ヨウは呻き名がいってきた
「え、じゃあ、軽めにコーンフレークとか」
「ステーキ食べたい」
「んなもんない!」
マヤコは怒りつつも、いつものヨウが戻ってきたようでホッとした。
マヤコが台所に行ったのを完全に確認してからリクナは口を開いた。
「ヨウ、倒せなかった分、弱点ぐらいは掴んだんでしょうね?」
「うーん。まあ、一応ね」
「それならこっちも対策を立てることができる。今日は倒しなさいよ」
「モチのロン」
そう言ってヨウは拳を掲げた。
ママが仕事から帰ってきたがいつもの細い目がいつもより鋭く見えた。
「倒さないとこっちがどんどん振りになっていく」
夜十二時、ヨウとリクナは二人で学校へ向かった。
リクナはいつもの白衣を着ずに黒のピッタリとした服を着て、ヨウは異様に大きなバッグを背負って。
学校の門の前まで来ると大きな影が待ち構えていたかのように存在していた。
そいつは怪獣というより怪獣の類に成長していた。
口は大きく裂け、足と腕には太くて長い爪が備わっていた。
「あちゃー参ったね」
「それをやるのがアンタの仕事でしょうが」
そう軽口を叩きながらお互いの健闘を祈るようにヨウは右手、リクナは左手の拳をお互いぶつけ合った。
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