47 美香との再会

 ただ、もう一度、会いたい。

 

 

 

 僕の願いは、会いたいということだけだ。

 

 

 

 紗津貴と、花織の協力も、あって、美香の、現在住んでいる場所が分かった。

 

 

 

 2033年、10月9日、日曜日。




 僕は、美香に会いに、地図に付けられた印を、もとに、金色街を歩いた。

 

 

 

 「この辺かなあ。」

 印のある、ところの周辺にやって来た。

  

 

 

 美香の住んでいる家の写真が、画面に表示された。

 


 

 昨日、花織から、送られてきた画像だ。

 

 

 

 いい家だった。

 

 

 

 金色街はそこそこ、地価も高い。

 

 

 

 三階建ての一軒家に美香は住んでいるらしい。

 

 

 

 「あった。多分、この家だ。」

 写真と見比べて、確かめる。 

 

 

 

 どうしよう。

 

 

 

 来たはいいけれど、緊張する。


 

 

 玄関の前で、不審者か、小さな子供のように、もじもじ、うろちょろしていた。

 

 

 

 やがて、決心を付けて、インターホンを押した。

 

 

 

 ピーン、ポーン。

 

 

 

 「はーい。」

 家の中から、声がきこえた。

 

 

 

 美香の声だ。

 

 

 

 疑いようのない、声。

 

 

 

 覚えている。

 

 

 

 涙さえ、出てくる。

 

 

 

 ガチャ。

 

 


 玄関の扉が開かれた。

 

 

 

 「あ、真七瀬く、ん。」

 美香は、大きく目を見開き、目を丸くした。

 

 

  

 目が合った。

 

 

 

 一瞬、時が止まった。

 

 

 

 運命の歯車が、大きく、回ったような、感覚に襲われた。 




 もう、9年以上も前の、高校生のころの美香と比べると、随分と大人びて、綺麗で、美しくなっていた。

 

 

 

 「え、っと、っ美香。会いに、来た、よ。」

 僕は、止まった時を動かした。

 

 

 

 「会いに来たの。」

 美香は、聞き返した。

 

 

 

 「うん。」

 僕は答えた。

 

 

 

 「どうして、遅いわよ。」

 美香は、言った。

 

 

 

 「遅い。」

 僕はききかえした。

 

 

 

 「うん、遅いわよ。今日は、夫が休日で家にいるから、明日の昼、来てくれない。二人で、話ましょ。」

 美香は、提案した。

 

 

 

 美香の結婚相手。

 

 

 

 果たして、どんな人なのだろうなあ。

 

 

  

 気にはなったが、触れない事にした。

 

 

 

 「わかった。ごめんね。急に押しかけてきちゃって。」

 僕は謝った。

 

 

 

 「いつもの事じゃない。」

 美香は、許した。

 

 

 

 2033年、10月10日、月曜日。

 

 

 

 僕は、美香に会いに行った。

 

 

 

 美香と話せると、考えただけで、胸がはち切れそうなほど、うれしかった。

 

 

 

 高鳴った。

 

 

 

 やっぱり、僕、美香の事が、好きで、恋に焼かれていて、愛しているのだと、自覚した。

 

 

 

 「お邪魔します。」

 僕は、美香の家に入った。

 

 

 

 美香は、玄関で、僕を出迎えた。




 「本当に、来てくれたんだ、うれしい。」

 美香は、二コりと笑った。

 

 

 

 美香は赤ちゃんを抱いていた。




 後ろには、小さな子供もいる。

 

 

 

 「あ、この子は、港。私と旦那の子なの、男の子で、今2歳よ。」

 美香は言った。

 

 

 

 もう、美香は別の男と子供をつくっていて、僕の入る隙間なんて、もうとっくの昔になくなってしまっていたのだと、思うと、感傷に浸らずにはいられなかった。

 

 

 

 「かわいいね。」

 僕は、ニッコり笑って、美香の子供の港を撫でた。

 

  

 

 優しく、撫でた。

 

 

 

 美香の子供だと思うと、愛着が沸いてきて、愛らしく思えた。

 

 

 

 「で、こっちが、真衣香。女の子で、まだ、生後3か月くらい。」

 美香は、赤ちゃんを抱っこして、揺らしていた。

 

 

 

 なんとなく、自分も家庭を持ちたくなってきた。

 

 

 

 「かわいいね。」

 僕は言った。

 

 

 

 「抱っこしてみる。」

 美香は、きいた。

 

 

 

 僕のような、けがらわしい人間が、神聖な美香の赤ちゃんに触れる事など、許されない。

 


 

 「そんな険しい顔してないで、ほら。」

 美香は、僕に真衣香ちゃんも、抱かそうとした。

  

 

 

 僕を、赤ちゃんを抱っこした。

 

 

 

 かわいい。

 

 

 

 涙が出てくる。

 

 

 

 「美香の子供が抱っこできてうれしい。」

 僕は言った。

 

 

 

 「あら、泣くほどうれしかったの。」

 美香は、驚いた様子で、僕をみた。

 


 

 リビングキッチンのソファに、美香は腰を降ろした。

 

 

 

 「ねえ、真七瀬くん、高校生の時、私の気持ちに、気づいてた。」

 美香は、問うた。

 

 

 

 「気持ちって。」

 僕は、問い返した。

 

 

 

 「あー、やっぱ、気づかれてなかったんだ―。」

 美香は、天を見上げた。

 

 

 

 「あたし、が、真七瀬くんの、事好きだったって事。」

 美香は、僕をみて、言った。

 

 

 

 「え。」

 僕は、固まった。 

 

 

 

 嘘だ。

  

 

 

 美香が、僕の事を好きだった。

 

 

 

 聞き間違いではないのだろうか。 

 

 

 

 「僕も、好きだった。」

 僕は、言った。

 

 

 

 静寂の時が、永遠と思われるほど長い時が流れた。

 

 

 

 「あーあっ。あたし達、どこで、間違っちゃんだろうね。」

 美香は、どうしようもない運命に、思わず、ニコりと笑った。

 

 

 

 

 間違った。

 

 

 

 僕は、美香の気持ちに気づけなかった。

 

 

 

 「すれ違っちゃんだね。」

 僕は言った。

 

 

 

 「そうだね。」

 美香は返した。

 

 

 

 「2024年の、夏祭り以来どうして、僕を避けてたの。」

 僕は、きいた。

 

 

 

 「あれは、真七瀬くんの事が、気になって、好きで、呼吸が苦しくて、だから、話せなかったのよ。」

 美香は、言った。

 

 

 

 はは。

 

 

 

 僕は、美香に、嫌われていたわけではなかったのか。



 

 美香は、僕の中で、神聖なものになっていて、神様になっていたのだ。

 

 

 

 僕にとって、美香は神様だったのだ。




 きっと、これからも、死ぬまでずっと、美香は僕の神でありつづけるだろう。

 

 

 

 本当に、愚かでバカだなあ、僕は―。

 

 

 

 「ごめん。」

 僕は、謝った。

 

 

  

 「謝らないでよ。真七瀬くんの、破廉恥なハーレム、の仲間に入れてほしかったな。」

 美香は、衝撃の事を口にした。

 

 

 

 あ、美香は、僕が、不純異性交遊をしている事を知っていた。

 

 

 

 知っているだけでなく、許容していた。

 

 

 

 なのに、僕は、自分の正義感で、僕を愛してくれた女の子を全員、手放してしまったのだ。

 

 

 

 愚かだ。

 

 

 

 愚かしい、愛のカタチだ。

 

 

 

 愚かしくて、愛おしい。

 

 

 

 「もう、別れたよ。美香の事だけ、考えて、9年間ずっと、絵を描き続けた。あれから、一度も女と付き合ってない。」

 僕は、言った。

 

 

 

 「え。私のために―、うれしい。」

 美香は返した。

 

 

 

 「でも、もう、遅いんだよ。」

 美香は、言った。

 

 

 

 美香は、赤ちゃんの真衣香と、港を寝かしつけた。

 

 

 

 「ねえ。最後に、頭を踏んづけてあげようか。」

 美香は、甘い声で、僕の耳元で囁いた。

 

 

 

 え。

 

 

  

 いいのだろうか。

 

 

 

 「僕が、ドマゾだって知ってたの。」

 僕はきいた。

 

 

 

 「知ってるわよ。いつも6人で、いちゃらぶしてたじゃない。」

 美香は、言った。

 

 

 

 「うん。ごめん。」

 僕は、謝った。

 

 

 

 「で、どうなの。」

 美香は、足で僕の身体を、なぞった。

 

 

 

 「あぁぅ。」

 美香に初めて触れた。

 

 

 

 美香と肉体の接触をした。

 

 

  

 触れられただけで、うれしかった、幸せで罰が当たりそうだった。

 

 

 

 「美香、好きだ。僕を蹴って、罵って、踏みつけてくれ。」

 僕は、告白した。

 

 

 

 「遅いのよ。もう付き合うのも結婚するのもできないわよ。」

 美香は、沈んだ声で、言った。

 

 

 

 「あたしも、好きだったわ。」

 美香は、僕を見つめて、言った。

 

 

 

 「ほら、何してんの、はやく、床に、跪きなさいよ。」

 美香に、ニヤり、と黒く赤い笑みを浮かべた。

 

 

 

 ドキリ。

 

 

 

 胸がキュンとなった。

 

  

 

 美香の妖艶な笑みに、身も心を吸い取られそうだ。

 

 

 

 「じゃ、いくわよ、えいっ。」

 美香は、遠慮なく、僕の頭を踏み、踏み、踏みした。

 

 

 

 白く、柔らかい、美香の、靴下を履いた足が、僕の頭を踏みつける。

 

 

 

 力強く、優しく、痛く、踏みつける、圧力をかける。

 

 

 

 ギュ、ギュ、ズん、ズシ。

 

 

 

 ブギュウウ。

 

 

 

 踏みつけられ、床に顔が、押し付けられる。

 

  


  

 気持ちいい。

 

 

 

 「ふがああ。ブへっ。」

 思わず、オホお、となって、イってしまった。

 

 

 

 「やだあ、踏まれただけで、オホっちゃったの。」 

 美香は、うれしそうに、笑った。

 

 

 

 「はいいいいぃ。踏まれただけで、イッちゃう、ドマゾの、クソ男なんですうう

。」

 僕は、うめいた。

 

 

 

 「ははは。ほらほらあ、気持ちいんでしょお、いい年した、おっさんが、夫もいて、子供も二人いる、人妻に踏み踏みされて、イッちゃって、ねええええ。」

 美香は、僕の首を掴むと、立たせて、頬に平手うちを連打した。

 

 

 

 べシンっ。

 

 

  

 ベシン、ペチ、ぺチ。

 

 

 

 頬っぺたが、真っ赤になっているのが、自分でもわかる。

  

 

 

 涙も出てくる。

 

 

 

 でも、気持ちいいんだ。

 

 

 

 美香の手に触れられて、幸せだ。

 

 

 

 ありがとう。

 

 

 

 「痛かったねえ。ほら、あたしに、甘えていいだよお。」

 美香は、僕を抱きしめた。


 

 

 「えらい、えらい、我慢できて、えらいねえ。」

 美香は、僕の頭の、撫でで、よしよし、した。

  

 

 

 「いい子には、ご褒美だよお。」

 美香は、僕に熱い、キスをした。


  

 

 口の中に、舌が入って来て、暴れ回っている。

 

 

 

 バチン、ベチン。

 

 

 

 美香は、僕の頬を、さらに、強い力で叩いた。 

 

 

 

 甲高い、音が、ぺチン、ぺチンと部屋中に鳴り響く。

 

 

 

 痛い、なんて、強い力なんだ。

 

  


 頬っぺたが痺れる。

 

  

 

 「えらいねえ。」

 美香は、僕を褒めると、また、頬っぺたを叩くの。

 

 

 ベチン。

 

 

 

 痛くて、気持ちよくて、脳が破壊されちゃう。

 

 

 

 「ほら、寝っ転がって、もぉっといい事してあげるから。ほら、はやく。」

 美香は、僕を床に仰向けにさせた。

 

 

 

 「よくできましたねえ。よぉし、顔面、踏み踏みタイムですよお。」

 美香は、顔を赤らめて、興奮していた。

 

 

 

 踏み、踏み、踏み。

  

 

 

 グり、グり、グりいいい。

 

 

 

 美香の足の、匂い。

 

 

 

 鼻孔が刺激される、甘い、苺の香りがした。

 

 

 

 「どうしたのお。身体、ビクビクさせて、痙攣させちゃって、かわいい。」

 美香は、僕の顔を踏みつけて、足でなぞった。

 

 

 

 「ほら、舐めろ。」

 美香は、足を舐めるように、言った。

 

 

 

 「はいい。」

 僕は、返事して、美香の足を舐めた。

 

 

 

 ペロ。

 

 

 

 ペロ、ベロ、ベロロロ。

 

 


 美香の足の味。

 



 少し、しょっぱくて、甘い女の味がした。

  


 

 感触、柔らかく、しっとりしている。

 

 

 

 美香ああ、いとおしい、好きだ。

 

  

 

 足の指の間までしっかり、舐めた。

 

 

 

 「ぁあ。いいわよ。真七瀬くん。」

 美香は言った。

 

 

 

 「ありがとうございますううう。」

 僕は、舐め続けた。

 

 

 

 「真七瀬くうん。」

 美香は、ソファから立ち上がると、僕の顔を、おっぱいで挟んだ。

 

 

 

 ブニュ、プニュり、ぼにょ

  

 

 

 ギュうう

 

 

 

 「どう、気持ちい。真七瀬くん、おっぱいと、お尻が好きなんでしょぅ。」

 美香は、僕を挟んだまま、耳元で囁いた。



 

 桃と、ココナッツのような、美香の匂いと、おっぱいの弾力と、しとやかで柔らかい感触を感じて、僕は昇天した。

 

 

 

 「イッちゃったんだね。次は、お尻だよ。」

 美香は、おっぱいを、僕の顔から、離すと、お尻で、僕の顔を、押し付けた。

 

 

 

 美香のお尻いい。

 

 

 

 ボにゅ、ポにゅ、ズシり

 

 

 

 お尻に顔面、押し付けられて、幸せえええ。

 

 

  

 「ぶへええ。」

 僕は、白目になって、オホ、オホ、昇天した。

 

 

 

 「オホ、オホ、昇天で、イッちゃったねえ。」

 美香は、僕の、顔からお尻を離すと、立ち上がって、顔を足で踏みつけて言った。 

 

 


 「ありがとう。」

 僕は、美香に踏みつけられながら言った。

 

 

 

 「いいわよ。私も、高校の時、ずっと、してみたかった事だし。」

 美香は答えた。

 

 

 

 「ごめん。もう、ダメだよね。最後に、君に触れられてよかった。」

 僕は、言った。

 

 

 

 「あら、そう、光栄だわ。」

 美香は返した。

 

 

 

 美香は、足を顔からのけた。

 

 

 

 僕は、立ち上がって、ソファに腰かけた。

 

 

 

 美香も横に座った。

 

 


 「美香、いま、何してるの、ピアノは未だ、やってる。」

 僕は、きいた。


 


 「ピアノは、やめたよ、趣味ではしてるけれどね。私は、家で曲、作ってるよ。」

 美香は言った。




 「へえ。知らなかった。」

 僕は返した。




 「そりゃあね。本名では活動してないから。」

 美香は言った。

 


 

 「そっか。」

 僕は呟いた。

 

 

 

 美香は、絶対に、偉大なピアニストになるものだと、ばかり思っていた。

 

  

 

 けれど、美香はピアノの道を究める事はなかった。

 

 


 音楽はやめていないようだった。

 

 

 

 「真七瀬くんは、凄いね、本物の画家になって、知らない人は殆ど、いないよ。」

 美香は、ボソっと言った。

 

 

 

 「運がよかっただけだよ、美香の御蔭でもあるし。」

 僕は、答えた。

 

 

 

 「どうして、あたしが出てくるのよ。」

 美香は、言った。

 

 

 

 「だって、美香に釣り合う男になる為に、絵を描き続けたから。」

 僕は、答えた。

 

 

 

 「え。あたしに、釣り合うため。」

 美香は目を、丸くして、きき返した。

 

 

 

 「そう。美香と高校最後に行った夏祭りから、僕は、君が、もっと好きになって恋に焼かれて、決心したんだ。いつか、偉大な画家になったら、告白しようって。」

 僕は、高校三年の時の、夏祭りの事を思い出し、感傷に浸りつつ言った。

 

 

 

 「あたし、なんて大した人間じゃないよ。」 

 美香は言った。

 

 

 

 「僕にとっては、神様だったよ。ピアノを聴きに行ったとき、本物なんだって、思ったから。」

 僕は返した。

 

 

 

 「やめちゃったけれどね。」

 美香は、答えた。

 

 

 

 しばらく、話込んでいると、もう時刻は、夕方の5時を回ろうとしていた。

 

 

 

 「もうすぐ、旦那が帰ってきちゃうわ。お別れね。」

 美香は言った。

 

 

 

 「最後に、手を繋いでくれないか。」

 僕は、お願いした。

 

 

 

 「いいわよ。」

 美香は、了承した。

 

 

 

 夏祭りの時、繋ぎたくても、繋げなかった、美香の手だ。

 

  

 

 僕は、美香の手を握りしめた。

 

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