44 大学二年の夏休み
大学は、楽しいところだ。
学生生活は青春だ。
けれど、僕は高校での思い出が、強すぎた。
大学生活は、モノクロだった。
きっと、冷めてしまっていたのだろう、乾いてしまっていたのだろうと思う。
2025年、大学二年の夏休み。
NFTやら、ネットで、イラストの注文を受けて描いたりして、10代の大学生にして、億を稼いでしまっていた。
完全に、過大評価だった、運がいいと言えばよいのかは、わからない。
金もあったので、夏休みは、海外に短期留学する事にした。
フランスで、勉強した。
フランスには、一般人が、普通に絵画を買う文化があった、僕の絵も売れた。
世界には、ああいった国もあるのだなあと、勉強になった。
ついでに、フランス語はある程度喋れるようになった。
夏休みが終わり、留学から国へ帰ったのは、9月21日だった。
2025年、11月11日、水曜日。
僕は、はじめて、教授の一人に、褒められた。
新しく入って来た、女の教授だった。
緑 景
緑色の、ボブカットの、オカッパヘアの女だ。
世界的画家で、そこそこ、有名ならしかった。
日本じゃ、嫌われものらしいが、海外では人気があるそうだった。
「才丸ちゃん、いいじゃん。あたしのやる個展に、絵、出してみない。ニューヨークで、今年の1月からやるんだあ。」
緑さんは言った。
僕が、はじめて、教授に評価された。
嬉しかった。
「いいんですか、僕みたいな目立たないやつの絵で。」
僕はきいた。
「見る目がないだけだよ。君の絵には、何かある。確かに、絵になってる。存在感がある。」
緑さんは、言った。
あれからだ、僕に風が吹き始めたのは。
ニューヨークで、出させてもらった個展で、富豪から、1億で油絵が売れた。
僕は、また、億を稼いでしまった。
僕の絵は、好評だった。
「やっぱり、私の目に狂いはなかったね。」
緑さんは、うなずいた。
和歌城陽、川中才、糸川加奈。
三人は、僕が大学で出来た、数少ない友達だ。
「四人でグループ展をしませんか。」
僕は、お願いした。
僕から、誰かを誘う事なんて、人生でほとんどなかった。
けれど、僕は、したかった。
同じ、画家を志すもの同士、絵を描くもの同士、一緒に、絵を展示したかった。
「いいねえ。」
陽は、うれしそうに、僕の背中を叩いた。
「真七瀬ちゃんが言うんだったら、いいわよ。」
川中さんは、言った。
「私でいいんですか。光栄です。」
糸川さんは、驚いていた。
「ありがとう。」
僕は、頭を下げて礼をした。
2027年、3月1日、月曜日の事だった。
もう、一カ月もすれば大学三年になろうとしていた。
2027年、4月27日から、グループ展をする事になった。
いつの間にか、フォロワーが100万人を超えていた、SNSも駆使して、宣伝しまくった。
結果、グループ展は、成功した。
1万人近い人が来て、SNSで、拡散された。
4人の名前も売れた。
美香は、みているだろうか。
もう、僕の事なんて、忘れているかも知れなかった。
でも、まだだ、もっと、偉大で、すごい画家になったら、絶対、会いに行く。
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