42 国立美大の二次試験を受けた。

 大学に合格しても、ゴールは、合格する事ではない。

 

 

  

 人生は、まだ、終わらないのだ。

 

 

 

 大学の先がある。

 

 


 卒業してからも、先がある。

 

 

 

 勿論、進路が決まるという事は、いい事だ。

 

 


 受験で人生が狂う人もいるのだから。

 

 

 

 2024年、3月2日。

 

 

 

 卒業式のあった次の日、国立美大の一次試験の合格発表があった。

 

 

 

 昼の3時に、発表されるのだ。

 

 

 

 インターネットで、確認すると、バッチリと僕の受験番号が公式ホームページに掲載されていた。

 

 

 

 よし、一次は通った。 

 

 

 

 二次試験は、3月8日から、10日の3日間ある。




午前10時から午後3時までの、5時間を3日間、受けて、一つの絵画を完成させる。

 

  

 

 なかなか、精神的にも肉体的にも、厳しい戦いになるのだ。

 


  

 リビングで、、晩御飯を食べる時、僕は言った。

 「一次は、通ってたよ。」 

 

 


 「あら、そう、よかったわねえ。」

 母は、箸の手を止めて言った。

 

 

 

 「すごい、流石にぃに。」

 紗津貴は、言った。

 

 


 「よかったじゃんお兄ちゃん。二次も大変だろうけれど、頑張ってね。」 

 恵真理は、言った。

 

 


 祝福し、励ましてくれているようだ。

 

 


 「ありがとう。」

 僕は、礼を言った。

 


 

 予備校の担任講師の、橋一さんや、師匠の神谷さんにも、一次通過を伝えた。

 

 

 

 「うん。当然の結果だね。君だったら、二次も受かるよ。」

 橋一さんは言った。

 

 

 

 「よかったね。二次も気を抜かずに、上手くいくといいね。」

 師匠の神谷さんは、言った。

 

 

 

 担任教師の、海鳥先生は、言った。

 「すごい、よかったじゃないか。応援してるよ。」

 

 

 

 

 てな塩梅で、僕の国立大の一次試験は、通過という事で、終わった。

 

 

 

 2024年、3月6日、水曜日。

 

 

 

 二次試験の二日前。

 

 


 師匠は言った。

 「明後日から、大変だな。」

 

 

 

 「はい。」

 僕は返した。

 

 

 

 「僕は、国立医大卒業だから、美術大学の試験ってのを受けた事がなくて、よくわからないが、ま、無理しない程度に頑張れ。」

 師匠は、僕を励ました。

 

 

 

 「ありがとうございます。」

 僕は、礼を言った。

 

 

 

 予備校に行くと、担任の講師の、橋一さんは、言った。

 

 

 

 「いい色使いだ、遠近もハッキリわかるし、影もちゃんと落ちてる、光もちゃんと入ってる。濃淡もちゃんとついてる。やっぱ、上手いね君。」

 橋一さんは、僕の絵をみて言った。

 

 

 

 「ありがとうございます。」 

 僕は、言った。

 

 

 

 「あ、ああ。明後日は、いつも通りの感じで、伸び伸びと楽しんで描きな。」

 橋一さんは、言った。

 

 

 

 2024年、3月7日、日曜日。

  

 


 朝、6時。 

 

 

 

 明日の試験に向けて、国立美大の試験場の周辺のホテルを予約してある。

 

 

 

 一次試験の時と同じ、ホテルだ。

 

 

 

 「行ってきまーす。」

 僕は、家を出る前に、言った。

 

 

 

 「行ってらっしゃい。受かるといいわね。」 

 母は、言った。

 

 

 

 「うん、じゃね。」

 僕は、玄関の扉を開けて、外へ出た。

 

 

 

 電車に揺られて3時間半ほどで、最寄りの駅に着いた。

 

 

 

 ホテルにチェックインして、部屋に入る。 

 

 

 

 時刻は、朝11時ごろだった。

 

 


 外に出て、軽い昼食を済ませた。

 

 

 

 午後2時ごろに、ホテルの部屋に帰ってきて、6時くらいまで、スマホを弄って調べものをしたり、明日の試験の事を考えたり、軽く、絵を描いたりしていた。

 


 

 6時ごろになると、外に出て、店でごはんを食べた。

 

 


 ホテルに帰り、部屋でシャワーを、浴びて、着替えた。

 


 

 朝6時に目覚まし時計をセットして、眠りについた。


 

 

 ベッドの中は、あたたかい。

 

 

 

 絶対に、合格するんだ。

 

 

 

 ちゃんと、すごい、偉大な画家になって、美香に告白するんだ。

 

 

 

 ピピピピ、ピピピピ、ピピぴ―。

 

 


 「やかましいわね、おりゃ。」

 

 

 

 目覚ましの音を消す。

 


  

 6時か。

 

 

 

 試験は、朝の10時からはじまって、午後3時に終わる。

 

 


 集合時間が、8時50分なので、一次試験と同じように、午前7時半にホテルを出た。

 

 

 

 9時50分になり、会場の教室に入った。




 試験内容は、

 

 

 

 あなたの願いを、自由に描きなさい。




試験が開始した。




僕は、幸せな、7人の女の姿を描いた。

 

 

 

7人の女を描いている男は僕だ。

 

 

 

僕の愛した女たちを、イメージして、容姿だけやや、抽象化して、描いた。

 

 

 

 三日間に渡って、何とか描きあがった。

 

 

 

 あたたくて、どこか、重たく暗い絵が描きあがった。

 

 

 

 自分の中では、結構、お気に入りだ。

 


 

 受かる絵かはわからないが、自分は好きだ。

 

 

 

 受かるといいな。

 

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