41 高校卒業、ありがとう、でも、まだ人生は終わらない。

 2024年3月1日。

 

 

 

 卒業式だ。

 


 

 今日で、高校生活が終わる。

 

 

 

 終わっちまうのかあ、感傷に浸る。

 

 

 

 別れの歌が、寂しくて、泣かせてくる。

 

 

 

 校歌も、泣かせてくる。

 


 

 もう校歌を歌う事もないのだ。

 

 

 

 僕も、もう大人になるんだな。

 

 


 はやいなあ。

 

 

 

 卒業式が終わると、教室に戻った。

 

 

 

 クラスで集まっていた。

 

 

 

 後輩たちが、用意した卒業生を送る言葉や、絵が描かれている。

 

 

 

 担任教師は言った。

 「卒業をおめでとうございます。卒業あとも受験がまだの人、進路がまだ決まっていない人、もう既に大学に合格している人、就職が決まっている人、色々いると、思いますが、それぞれの道を自信をもって歩んでください。」


 

 

 泣けてくる。

 

 

 

 担任教師は、何の縁があったのか、三年間ずっと、同じだった。

 

 

 

 海鳥椿だ。

 


  

 「あと、進路が決まったかどうか、連絡くださいね。浪人する人も、連絡ください。進路が決まるまでが、担任の役目ですから。」

 担任教師は、付けたしていった。

 

 

 

 いい教師だったなあ、と思った。

 

 

 

 一年の時、僕のおっぱいとお尻観察で、通報され、やめてくれと、頭を下げてお願いされた時の事を思い出していた。

 

 

 

 あれから、随分と、僕も変わったなあ。

 

 

 

 今じゃ、おっぱいとお尻をじろじろ、みることもなくなった。

 

 

 

 元、愛人たちのおかげであろう。

 

 

 

 担任からの最後の言葉が終わった。

 

 


 卒業アルバムが配られ、ついに、解散した。

 

 

 

 「ねえ。真七瀬くん。」

 同じクラスだった、雨ノ降桃花は、僕を呼び止めた。

  

 

 

 「桃花。」

 僕は名前を呼んだ。

 

  


 「最後に、記念写真撮ろ。」

 桃花は、言った。 


 

 

 教室の黒板を背景に写真を撮った。

 

 

  

 教室を出た。

 

 

 

 ギュ。

 

 


 「最後だから。」

 桃花は、僕に抱き着いてきた。




 頬をスリスリ、僕の頬にした。

 

 

 

 チュ。

 

 

 

 ほっぺにチューされた。

 

 

 

 「ありがとう。大好きだよ、じゃあね。」

 桃花は、笑顔で、涙を流していた。

 

 

 

 寂しい笑顔だ。

 

 

 

 切ない恋の終わりの笑顔だった。

 

 

 

 廊下を歩いていると、なんとなく、屋上に行きたくなって、階段を上った。

 

 

 

 

 屋上の扉を開けると、桧がいた。

 

 

 

 「お前も、来てたのか桧。」

 僕は、話かけた。


 

 

 「ああ、真七瀬か。」

 桧は、返した。

 

 

 

 「黄昏れてんのか。」

 僕は言った。

 

 

 

 「ははは。君には、世話になったよ。これからも、友達でいてくれ。」

 桧は、笑った。

 

 

 

 「もちろんだよ。」

 僕は、答えた。

 

 

 

 「最後に写真でも撮ろう。」

 桧は言った。

 

  

 

 カシャ。

 

 

 

 屋上で、青空を背景に写真を撮った。

 

 

 

 チュ。

 

 

 唇にキスをされた。




 「大好きだよ、真七瀬。ありがとう、さようなら。」

 桧は、目を細め、涙をポロりと流し、笑った。

 

 


 僕は桧を抱きしめ、頭を撫でた。

 「ありがとう。さようなら。」

 

 

 

 屋上から降りて、廊下を歩いていた。

 

 

 

 竹川花織が突っ立っている。




 「ちょっと、待ちなさいよ。」

 花織は、僕の前で、仁王立ちになって制止させた。

 

 

 

 「っつ。花織。」

 僕は、名前を呼んだ。

 

 

 

 「最後に、あたしに何かいう事あるでしょ。」

 花織は言った。

 

 

 

 「ありがとう。」

 僕は言った。

 


 

 「まあ、いいわ。最後に一緒に写真くらい、撮りなさいよ。」

 花織は、少し、照れた様子で、言った。

 

 

 

 カシャ。

 

 

 

 廊下で、花織と写真を撮った。

 

 

 

 よく見ると、廊下の脇には、思い出の空き教室があって、空き教室背景の写真だった。

 

 


 「ねえ。真七瀬、こっち向いて。」 

 花織は、言った。

 

 

 

 チュ。

 

 

 

 花織は、僕に抱き着いて、キスをした。

 

 

 

「ふふ。どうだった。最後のキスだよ、愛してる。ありがとう、バイバイ。」

 花織は、苦く、甘く、切ない笑みを浮かべ、涙を隠した。

 

 

 

 「困った時は、連絡くれよな。」

 僕は、言った。

 

 

 

 「うん。」

 花織は、うなずいた。

 

 

 

 最後に部室にでも寄っていくか。

 

 

 

 部室に入る。

 

 

 

 中には、吉川さんがいた。

 

 

 

 「あ、真七瀬くん。来たんだね。」

 吉川さんは言った。

 

 

 

 「うん。美術部も本当の意味で、終わりかあ。」

 僕は、部室を見渡した。

 

 

 

 「ねえ。はやいねえ。ほんと、ずっと、したかったよ。」

 吉川さんは、思いをこぼした。

 

 

 

 「進路決まったんだろ。私立の美大。」

 僕は言った。

 

 


 私立は国立より、試験の日程も合格発表も早いのだ。

 

 


 「おかげさまでね。ま、楽勝だったよ。進路は別れちゃうね。」

 吉川さんは寂しそうに言った。

 

 

 

 「仕方ないよ。」

 僕は答えた。

 

 

 

 「ねえ。最後に写真撮ろ。」

 吉川さんは言った。

 

 

 

 カシャ。

 

 

 

 いい写真が撮れた。

 

 

 

 ギュ。


 

 

 吉川さんが後ろから、抱き着いてきた。

 

 

 

 「ちょっとの間、このままでいて。お願い。」

 吉川さんは、消え入る声で、訴えかけた。

 

 

 

 体感的に30秒くらい、吉川さんは僕を背後から、抱きしめた。

 

 

 

 僕は黙ってじっとしていた。

 

 

 

 背中に顔を押し付けて泣いているのが分かった。

 

 

 

 「もういいよ。ありがとう、バイバイ真七瀬。」

 吉川さんは、少し大人な様子で、目の下を赤くして言った。

 

 

 

 部室から出て廊下を歩き、昇降口で靴を仕替え、外に出る。 


 

  

 校門を出た。

 



 「真七瀬。卒業しちゃったね。」

 

 

 

 星川さんが、校門の横で、変装して立っていた。

 

 

 

 「うん。」

 僕は返した。

 

 

  

 「ねえ、握手しよ。」

 星川さんは手を出した。

 

 


 僕は、星川さんの、手を握った。 

 


 

 ギュ。

 

 

  

 シュっつ。

 

 

  

 星川さんは、僕の手を掴むと引っ張って、口付けをした。

 

 


 チュ。

 

 

 

 「へへ。どうだったかな、私からの最後のキスは。」

 星川さんは、照れて、顔を紅らめて、少し俯き加減に、上目遣いで、僕をみた。

 

 


 「ありがとう。」

 僕は、星川さんを抱きしめて、言った。

 

 

 

 「うん。」

 星川さんは涙を流した。

 

 

 

 「写真撮ろうよ。」

 星川さんは、言った。

 

 

 

 カシャ。


 

 

 「いいのが、撮れたよ。ありがと、さようなら。」

 星川さんは、目を細め、涙を零しつつ、笑った。

 

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