34 花織と、一緒に寝ました。

「お風呂、沸けたわよお。」

 母は、告げた。

 

 

 

 「入るううう、お姉ちゃん一緒に入ろお。」

 紗津貴は、言った。



 

 「いいわよ。花織さんも、一緒にどう、3人で入らない。」

 恵真理は、花織をみて、提案した。

 

 

 

 「いいわね。お邪魔させてもらうわ。」

 花織は、提案をのんだ。

 

 


 お風呂の音が聴こえる。

 

 

 

 心地よきお風呂の音だ。

 


 

 「あーいい、お湯だったわあ。」

 紗津貴は、風呂から上がると、冷蔵庫から牛乳を取り出して、飲み干した。

 

 

 

 花織は、体が火照っていて、艶っぽかった。

 

 

 

 僕と目が合うと、ニヤリと目を細めていった。

 「私のお風呂あがりの姿に欲情したでしょお。」

 

 

 

 「してないよ。」

 僕は、否定した。

 


 

 「真七瀬、先、入ってもいいわよお。」

 母は言った。

 

 

 

 「いいよ。僕は最後に入る。」

 僕は、返した。

 

 


 「だと、思ったわ。」

 母は、呟いた。

 

 


 母が風呂を上がると、僕も風呂に入った。

 


 

 風呂から上がると、花織が、リビングのソファで座って僕を待っていた。



 

 レモン色の、かわいい柑橘系の果物がプリントされた、パジャマを着ている。

 

 

 

 「やあ、あがったんだね。さあ、部屋に連れて行ってくれ。」

 花織は、僕の腕に自分の腕を絡ませ、体を密着させた。

 

 

 

 近い。

 

 

 

 理性が吹っ飛びそうだ。

 

 

 

 いい匂いがする。

 

 


 髪の毛から紅茶のような、シャンプーとリンスの香りがする。

 

 

 

 カモミールとミモザの甘く優しい香りのボディソープの香りと、入浴剤のカシスベリーの甘酸っぱい香りが、花織の身体から、している。

 

 

 

 「近いよ。」

 僕は、言った。 

 


 

 「いいじゃん。ほら、顔、真っ赤になってるぞ。」

 花織は、僕の頬を指先でつついて、ニヤリと笑った。

 


 

 部屋に入る。


 


 時刻は、夜の9時半を回っていた。

  


 

 「僕が床で、寝るよ、君はベッドで、寝な。」

 僕は、床に敷き布団を敷こうと、押し入れを開けた。

 

 

 

 「一緒に寝ようよ。」

 花織は、僕に後ろから抱き着いて、言った。

 

 

 

 「一緒にか。」

 僕はききかえした。

 

 

 

 女の子と一緒に寝るのはいいのだろうか。

 

 

 

 何もなければいいのだが―。

 

 

 

 しばらく、後ろから抱き着かれたまま黙っていると、花織は言った。

 「いいでしょ。最後なんだし。私の気持ちを踏みにじる気。」

 

 

 

 泣きそうな声だった。 


 

 

 「わかったよ。」

 僕は、折れた。

 


 

 ベッドに入ると、花織は、僕の右横に入った。

 

 

 

 シングルベッドなので、広くはない。

 

 

 

 身体が触れ合っている。

 

 

 

 仰向けに寝ている僕を、横から足で挟み込み、腕を首裏に回して、抱き着いてきた。

 



「ねえ、こっち向いてよ。」

花織は囁いた。




花織の吐息が、直にきこえて、身体がビクっとなってしまう。


 


 花織は、僕の身体を横に向けるように、動かそうとした。

 

 

 

 僕は、花織と、向き合うような形になった。

 

 

 

 花織は、僕の足に足を絡ませて、両腕で、僕の身体に抱き着き、身体を密着させた。

 

 

 

 「ひえ。」

 思わず声が、漏れた。




 「今日は、このまま、寝よぅ。」

 花織は僕をガッチリ、ホールドしたまま、目を瞑った。

 

 

 

 かわいい。

 


  

 思わず、見蕩れてしまう。

 

 

 

 花織の体温を、じかで、感じ、一体化したかのような、感覚に陥った。

 

 

 

 幸せな感覚。

 

 

 

 イケない事をしているのに、幸せな気持ちが出てくる。

 

 

 

 涙が出るほど、切なかった。

 

 

 

 僕は、花織の身体を感じつつ、眠りについた。

 

 

 

 次の日の朝、僕が目を覚ますと、もうすでに、花織は起きて、制服に着替えていた。

 

 

 

 時刻は、6時ごろだ。

 

 

 

 「おはよう。真七瀬、昨日は、よかったわよ。」

 花織は言った。

 

 

 

 一緒に寝たんだった。

 

 

 

 花織は、ずっと、大人っぽくみえた。

 

 

 

 いつもより、ずっと、大人びてみえた。

 

 


 窓からの日差しが、髪の毛を砥ぐ花織を照らしている。

 

 


 「じゃ、私は帰るわ。もう、お別れしなきゃね。」

 お別れと、いったところで、感極まって花織は、涙ぐんだ声になっていた。

 

 


 「うん。」

 僕は言った。

 

 

 

 「バイバイ。最後に。」

 

 


 チュっ。

 

 

 

 花織は、僕のおでこに、キスをした。

 

 

 

 「ふふふ。かわいい。じゃあね。」

 花織は、いたずらに笑って、駆け足で、家から出て行った。

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