17 同じクラスの雨ノ降桃花は、宇宙人だった!?

 宇宙は広い。

 

 だから、地球に宇宙人の一人や二人いてもおかしくないのかもしれない。

 

 ふとそんな事を考えていた夏休み明けの9月1日、水曜日。

 

 

 

 学校を終えて、家に帰り、飯を食い、風呂に入り部屋に戻りくつろいでいた。

 

 

 

 ピポ、パロ、ロンロコリンリン、オレオレオ♪ピポ、パロ、ロンロコリンリン―、

 

 

 

 スマホが鳴った。 


 

 

 誰だ、こんな夜に電話なんて。

 

 

 

 画面をみると、雨ノ降 桃子からの着信だった。

 

 

 

 出てみるか。

 

 


 「もしもし。」

 僕は受信して、声をかけた。


 


 「あ、真七瀬くん。ちょっと、話があるんだけれど、今から外出られない。」

 雨ノ降さんは、開口一番に言った。

 

 

 

 「大丈夫だけれど、どうしたっていうの。」

 僕は不審に思った。

 

 

 

 「会って話がしたいの。瞳ヶ原駅で待ってるわ。」

 急を要する感じだったので、僕は急いで支度して、瞳ヶ原駅まで行くことになった。

 

 

 

 時計をみると、午後9時ごろだった。

 

 

 

 家を抜けだして、自転車を走らせて、駅へ向かう。

 


 

 雨ノ降 桃花は、駅の近くの柱のあたりで、待っていた。




 「来てくれたんだね。よかった。」

 雨ノ降さんは、安堵した様子で言った。

 

 

 

 「当然だよ。」

 僕は答えた。

 

 

 

 「宇宙人って信じる。」

 雨ノ降さんは唐突に質問してきた。

 

 

 

 「さあね。わからないや、でも地球にはいないと思う。」

 僕は答えた。

 

 

 

 「私が、実は宇宙人で、地球を破壊する為に送られてきた兵器だったっていったら、どうする。」

 雨ノ降さんは神妙な面持ちで質問した。

 

 

 

 奇妙な質問だ。

 

 目的がわからない。

 

 

 

 「どうだろう、でも雨ノ降さんは、雨ノ降さんだよ。変わらないね。」

 僕は答えた。

 

 

 

 「そう。」

 雨ノ降さんは意外そうに僕をみた。 

 

 

 

 「ちょっと、着いてきて。今日が最後になるかもしれないから。」

 雨ノ降さんは僕の手を引っ張って歩き始めた。

 

 

 

 「どこ行くの。」

 僕はきいた。

 

 

 

 「あの山の頂上よ。」

 雨ノ降さんは指をさした。

 

 

 

 笹原山だ。

 

 奇妙な光や、未確認飛行物体が散見されると言われているパワースポットだ。

 

 

 

 「どうして、笹原山なの。」

 僕はきいた。 


 

 

 「今日の夜、迎えがくるの。」 

 雨ノ降さんは、言った。

 

 


 「君の乗ってきた自転車に乗って行こう。」

 雨ノ降さんは、僕の自転車に跨って言った。

 

 

 

 「僕はどうすれば。」

 僕は困惑した。

 

 

 

 「君は後ろの席に座っていればいいよ。」

 雨ノ降さんは、後ろ座席を叩いて言った。

 

 

  

 「でも女の子に自転車を漕がせるなんて厭だよ。僕が漕ぐよ。」

 僕は言った。

 

 

 

 「ああ、そう、どっちでもいいけれど。」

 雨ノ降さんは降りて後ろに乗った。

 

 

 

 「じゃあ、行くよ。」

 僕は自転車をこいだ。

 

 


 すると、どうでしょう。

 

 

 

 チャーン、チャーンチャララララああ、うあああああ。

 

 

 

 「え。空を飛んでる。」

 

 

 

 自転車が宙を浮き、飛んでいるではありませんか。

 

 

 

 「なんでえええ。」 

 僕は叫んだ。

 

 

 

 「宇宙人特有の念力だよ。」

 雨ノ降さんは、愉快そうにケラケラと笑った。

 

 

 

 「すっすごい。本当に、宇宙人だったの。」

 僕は、驚いて、腰をぬかしそうになった。

 

 

 

 「えへん。まあね。」

 雨ノ降さんは、誇らしげに言った。

 

 


 やっぱ、宇宙人といえば、自転車で空を飛ぶのが定番らしい。

  

 

 

 「女の子と自転車二人乗りしつつ、空飛ぶのなんてはじめてだよ。」

 僕は、叫んだ。

 

 

 

 「やっほーい。」

 

 

 

 「そりゃ、よかったわ。」

 雨ノ降さんは言った。

 

 

 

 空飛ぶチャリをこいで、一時間ほどで、笹原山の頂上付近までやってきた。

 

 

 

 笹原山の頂上に自転車で着地する。 

 


 

 「着いたね。」

 雨ノ降さんは自転車から降りて、辺りを見渡した。

 

 


 「うん。真っ暗だ。何もみえないよ。」

 僕は言った。

 

 

 

 「はい。どうぞ。」

 雨ノ降さんは懐中電灯をポケットから二つ取り出して、辺りを照らし、一つを僕に手渡した。

 

 

 

 「持ってきてたんだね。ありがとう。」

 僕は、懐中電灯を受け取った。




 「もうすぐ来るよ。」

 雨ノ降さんは空を見上げた。

 

 

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