16 家に、星川さんを連れ込んで、寝泊りさせた、和解できるのか!?

「どうする、もう夜になっちゃう。」

 星川さんは、不安そうに言った。 

 

 

 

 家でしてきているのだ。 


  

 これからどうなることやら。

 

 

 

 「僕の家に来なよ。」

 僕は、言った。

 

 


 「いいの。親とか大丈夫。」

 星川さんは、心配そうにきいた。

 

 

 

 「大丈夫だよ。親は、そういうの気にしない。」

 僕は答えた。

 

 


 時刻は午後7時ごろになっていた。

 

 

 

 「ただいまあ。」

 玄関の扉を開けて家に帰る。

 

 


 「おかえりい―、あらあ、女の子連れ込んで来たのお。」

 母さんは、星川さんをみて言った。

 

 

 

 「うん。星川さんだよ。ちょっと今日は、お泊りさせていい。」

 僕はきいた。

 

 


 「急だわねえ、ま、いいけれど、大丈夫なの、星川ちゃん。」

 母はたずねた。

 


 

 「はい、大丈夫です。お願いします。」

 星川さんは、深々を頭を下げた。

 

 

 

 「あらあ、ちゃんとした子ねえ。」

 母には好印象な様子だった。

 

 

 

 「にぃにの彼女さんですか。」

 末の妹の紗津貴が、リビングから出て来て、星川さんに言った。 


 

 

 「違うわよ。成れればとは思っているけれどね。」

 星川さんは言った。

 

 

 

 「えー。にぃに、こんな美人さんとどうして、付き合わないの。」

 紗津貴は驚いた様子で言った。

 

 

 

 「いろいろ、事情があるみたいだよ。」

 星川さんは、僕の事を考慮していった。

 

 

 

 「へえ。」

 紗津貴は頷いた。

 

 

  リビングに入る。

 



 恵真理がテレビをみていた。

 

 

 

 テレビには、芸能人としての、星川 茜が映っていた。

 

 


 「あの、実は私、星川 茜なんです。」

 星川さんは、急に、告白しはじめた。

 

 

 

 ウィッグを取り、変装を解いた。

 

 

 

 「え。凄い。本物だ。」

 恵真理は、目をパチクリさせて言った。

 

 

 

 「かわいい、かわいい、かわいい。」

 紗津貴は興奮して、かわいいと連呼している。

 


 

 「本物なの。どうしてうちに。」

 母は、星川さんをみてたずねた。

 

 

 

 「ちょっと、家庭の事情で、家出してるんです。」

 星川さんは言った。

 

 

 

 「家出ねえ。」

 母は、しみじみと、同情するように言った。



 

 「家族と上手くいってないの。」

 母は星川さんにきいた。

 

 

 

 「はい。」 

 星川さんはうつむき加減に言った。

 

 

 

 「そう。」

 母は返した。

 

 

 

 「親の事は好きでしたが、動画でお金が稼げるようになってから、私を金のなる実と考えるようになってしまって、変わってしまいました。私が動画を休んだり、上手くいかない事があると、その―、ぼう、力を、ふるってきて。」

 星川さんの声は震えていた。

 

 

 

 「大変だったわね、でも家出してても解決はしないわよ。」

 母は厳しい言葉をかけた。

 


 

 家出では解決しない。

 

 家庭の問題だ。

 

 根本を正すには、どうすればいいのか。

 



 「ですよね。」

 


 

 「明日、一緒に話をしに行こう。」

 僕は提案した。

 

 

 

 星川さんはしばらく考えた後に言った。

 「お願いできるかしら。」

 

 

 

 「いいよ。乗った船だ。」

 僕は言った。

 

 


 次の日、僕は星川さんの家に行った。

 

 

 

 星川さんは、大きなビルの最上階に住んでいるらしい。

 

 セキュリティも万全で、自分にとっては縁もゆかりもない、暮らしだと思った。

  

 

 

 ピーン・ポーン。

 

 

 

 部屋のインターホンを鳴らす。

 



 星川 沙理

 

 星川さんの母だ

 

 綺麗な人だ。

 

 金髪で巻き髪のロングヘアの、女だ。

 

 

 

 「ただいま。」

 星川さんは言った。

 

 


 「おかえり。どこへ行っていたの。その男の子は誰。」

 星川さんの母は、僕と、星川さんを交互にみて言った。

 

 


 「あたし学校の同級生の、才丸 真七瀬くんよ。」 

 星川さんは答えた。

 

 

 

 「あら、そう。茜、男と遊んでたの。」

 星川さんの母は、沈んだ声で言った。

 

 

 

 「ち、違うの、えっと、―。」

 星川さんは、声が出なくなった。

 

 


 急にぶるぶると震えだした。

 

 

 

 「僕は、茜さんの友達で、家に帰りたくないと言っていたので、僕の泊まらせていたんです。」

 僕は言った。

 

 

 

 「へえ。うちの大事な子をかってに、持っていくのはやめてもらえるかしら。さっさとあなたは帰って。」

 星川さんの母は、僕を睨みつけて、家にかえそうとした。

 

 

 

 「厭です。茜さんは震えてます。ちゃんと話してください。」

 僕は言った。

 

 


 「茜ねえ。何か、私に言いたい事でもあるのお。」

 星川さんの母は、不気味笑みを浮かべて、星川さんに語りかけた。

 


 

 「えっと、その。私に暴力を振るうのをやめて―、く、ださい。」

 星川さんは、言葉を振り絞って言った。

 

 

 

 「人ぎきの悪い事言わないでよ。暴力じゃないわよ。愛じゃない。あなたの事を思って、やっているのよ。」

 星川さんの母は言った。

 

 

 

 「あれが、愛なの。私、痛かったよ。一生残る傷が、身体のみえないところにいっぱい残ってる。化粧で隠してるけど、もう耐えられないよ。」

 星川さんは泣き出した。

 

 

 

 「だって、あなたが売れる為に、私だって、必死だったのよ。」

 星川さんの母は、感情を高ぶらせて言った。

 

 

 

 売れる為にする事が、娘への暴力だなんておかしい。

 

 


 歪んで曲がってしまっている。

 

 


 「私だって、むかし、若い頃は、芸能界にあこがれていたのよ―。」

 星川さんの母はポロリと本音を漏らした。

 

 

 

 「え。」

 星川さんは、呆気に取られた様子だった。

 

 

 

 「娘が、有名になって行って、誇らしかったわ。まるで、自分の事のようにね。」

 星川さんの母は言った。

 

 

 

 「でも、どうして暴力をふるったの。私を傷つけたの。」

 星川さんは、おそる、おそるきいた。

 


 

 「わからない。人気になっていくあなたで、もっと凄い事ができる、だから、もっと頑張らせようと思って、子供に自分の理想を押し付けていたからかしらね。理想通りに動かない娘を、暴力でわからせようとして―。」

 星川さんの母は、自分のしている事も恐ろしさに気づいて息を呑んだ。

 

 

 

 「私、サイテーな事をしてたんだね。」

 

  

 

 「サイテーだよ。」

 星川さんは容赦なく言った。

 

 

 

 サイテーな事をしているということがわかったところで、直ぐにやめられるはずはない。

 

 きっと、星川さんへの虐待はやまない。

 

 

 

 二人はこれからも喧嘩して、言い合って、お互いを理解していく事だろう。

 



 「真七瀬くんだっけ。ありがとうね。娘のこと。よくみるといい男ね。うふふ。」

 星川さんの母は、言った。

 

 


 「泣いてる女の子を、ほうってなんて置けませんよ。」

 僕は言った。

 

 

 

 「へえ。純粋でかわいいわね。真七瀬くん。娘が好きになる気持ちもわかるわ。」

 星川さんの母は言った。

 

 

 

 「もう、やめてよ。お母さん。」

 星川さんは顔を真っ赤にして言った。


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