15 星川さんとデートで、告られる!?

「んんんん。もうっ。何で獲れないのよ。」

 星川さん、地団駄を踏んだ。

 

 

 

 今、僕と星川さんは、街のゲームセンターに来ている。

 

  

 

 「こうすれば獲れるよ。」

 僕は、百円玉を入れて、星川さんの操作する手の上から手を乗せて、UFOキャッチャーのアームを操作した。




 星川さんの手は、柔らかくて、細かった。

 

 

 

 「ほら、獲れた。」

 僕は景品の熊のぬいぐるみを獲って言った。

 

 

 

 「ほら獲れたじゃないわよ。もうっ。近いのよ。」

 星川さんは、うつむき加減に、顔を真っ赤にして照れた様子で言った。

 

 

 

 「はい。あげる。」

 僕は熊のぬいぐるみを、星川さんに、贈った。

 

 

 

 「ありがとう。大事にするね。」

 星川さんは、ぬいぐるみをギュッと抱きしめて言った。

 

 

 

 嬉しそうにしてくれてよかった。

 

 

 

 ゲームセンターから外に出て、カラオケに行った。

 

 

 

 星川さんは、歌がめちゃくそ上手かった。

 

 

 

 「また98点越えか。すごいね。」

 僕は言った。

 

 


 「へへへ。練習してるからね。」

 星川さんは、恥ずかしそうに笑った。

 

 

 

 テレビや、動画で見る、星川さんとは違った愛嬌があった。

 

 

 

 「歌も歌えたんだね。」

 僕は言った。

 

 

 

 「まあ、そこそこはね。」

 星川さんは謙遜していった。


 

 

 カラオケを終えた。

  

 

 

 「次、なんかしたい事ある。」

 僕はきいた。

 


  

 「観覧車、乗ってみたい。」

 星川さんは、僕の手を引っ張っていった。

 

 

 

 近くの遊園地に行った。

 

 

 

 高さ100m程度で、頂上までに8分ほどかかり、乗り終わるので16分ほどの、観覧車だ。

 

 

 

 そこそこ、大きい。

 

人がそこそこいて、並んでいる。


 「私、こんな大きな観覧車乗るの、はじめてだあ。」

 星川さんは、観覧車を見上げて、目を輝かせて言った。

 

 

 

 「へえ。そう。」

 僕は、返した。

 

 

 

 「観覧車好きなんだ。私。」

 星川さんは言った。

 

 自分たちの順番が来て、観覧車に乗り込んだ。

 

 

 

 観覧車に女の子と二人で乗るのなんて、はじめてだ。

 

 妹二人と母と僕で、乗ることは、小さい頃あったけれど、女の子と乗ったことはなかった。

 

 なんだか、新鮮だ。


 

 

 「男の子と二人きりで、観覧車に乗るのはじめてだな。」

 星川さんは、僕をじっとみつめた。

 

 

 

 「僕でよかったの。」

 僕はきいた。

 

 

 

 「うん。成り行きだね。」

 星川さんは、微笑んだ。

 

 

 

 「高いねえ、ちょっと、コワいかも。」

 星川さんは、窓から外をみて言った。

 

 

 

 「だね。」

 僕は返した。

 

 

 「ねえ。手、繋いでいい。」

 星川さんは僕の横に来ると、甘い声で言った。

 

 

 

 「どうしたの。」

 僕はきいた。

 

 

 

 「なんだか、手、繋ぎたくなったの。」

 星川さんは、僕の頬を右手で包み込んで、甘い息を漏らして言った。

 

 

 

 星川さんの様子がおかしい。 




 息が荒いような気がする。

 

 

 

 「才丸くうん。チュっ。」

 

 

 

 「え。」




 ほっぺにキスされた。

 

 

 

 なんで、僕は星川さんに、嫌われているはずなのに―。 

 

 


 「あ、ごめん。ついしたくなっちゃって。」

 星川さんに、下を向いた。

 

 

 

 気まずい沈黙が流れた。 

 


  

 「―、厭だった。」

 星川さんは、不安げに僕の表情を伺うようにきいた。

 

 

 

 なんと答えればいいんだろう。

 

 わからない。

 

 「厭ではないよ、でも君と僕とじゃあ、釣り合わないんじゃないかな。」

 僕は言った。

 

 

 

 「いいの。今日くらい羽目を外させてよ。男の人とこういう事してみたかったんだあ。」

 星川さんが、楽しそうにみえた。




 もしかすると、星川さんは、誰とも付き合ったことがないのかもしれなかった。

 

 親に束縛され、籠の中で、ずっと育ってきたのかもしれない。


 


 「綺麗だね。」

 僕は、外の景色をみて言った。

 

 

 

 「君とみられてよかった。」

 星川さんは、僕をみつめると、肩から僕に寄り掛かった。

  

 

 

 近い。

 

 


 「少女漫画でしかみたことないや。遊園地で男の子とデートするなんて。」 

 星川さんは、言った。

 

 


 「楽しい。」

 僕はきいた。

 

 

 

 「うん。すごく。」

 星川さんは、答えた。

 

 

 

 「ねえ。頭、なでなでしてよ、いつも頑張ってって偉いねえ。って。」

 星川さんは、僕の膝の上に頭を降ろして、上目遣いに言った。

 

 

 

 「えらい、えらい。いつも頑張ってえらいねえ。無理しなくていいんだよお。茜ちゃんが、頑張り屋さんなのは知ってるからねえ。えらい、えらい。」

 僕は、まるで、赤子をあやすように、星川さんを撫でて、褒めた。

 

 

 

 ポロ、ポロ、ポロ、ポロ。

 

 

 

 「ひっぐっ。」

 星川さんは、泣いていた。

 

 

 

 心のたかが、外れたように泣いていた。

 

 

 

 ずっと、我慢してきたんだろうなあ、と思うと、僕まで泣けてきた。

 

 

 

 「ありがとう、もう大丈夫だよ。真七瀬くん。」

 星川さんは、立ち上がった。

 

 

 

 いつの間にか、星川さんは、僕を下の名前で呼んでいた。

 



 観覧車を乗り終わって、降りた。

 

 

 

 「次は何する。」

 僕はきいた。

 

 

 

 「服を買いに行こう。私、買いたい服があるんだあ。」

 星川さんは言った。

 

 

 

 好きな古着屋があるらしく、そこで、服を買うらしい。

 

 


 「お洒落な店だねえ。」

 僕は言った。

 

 


 お洒落に疎い、僕でもわかった。

 

 

 

 いい雰囲気の店だな。

 

 

 

 星川さんは、ジャケット、Tシャツ、ブラウス、ズボン、ワンピース、帽子とかを買った。

 

 

 

 どれも似合っていて、ファッションセンスもある人なんだなあと、思った。

 

 

 

 店を出た。

 

 


 時刻はもう、午後4時を回っていた。

 

 

 

 デートと言えば映画館だとか、レストラン、海、水族館が人気で、むしろ、カラオケとか、ゲーセンは、不人気だが、楽しければいいのだ。

 

 

 

 「最後に、海に行こうか。」

 僕は言った。

 

 

 

 「いいよ。」

 星川さんは答えた。

 

 

 

 移動中、星川さんはずっと、繋いだ手を放そうとしなかった。

 

 

 

 手を繋いだまま、まるで、カップルのように、海まで歩いた。

 


 

 「いい香りね。」

 星川さんは、風で運ばれる海の潮の匂いを、嗅いで言った。

 

 

 

 「うん。」

 僕は答えた。

 

 

 

 

「ねえ、私の彼氏にならない。」

 星川さんは、僕の方をみて唐突に告白した。

 

 

 

 言ってから、恥ずかしくなったのか、顔を真っ赤にしている。

 

 

 

 「ごめん。ほかに好きな人がいるんだ。」

 僕は、断った。

 

 

 

 「生意気ね。私からの告白を断るだなんて。」

 星川さんは、強がってはいたものの、こたえた、らしく、声が震えていた。

 

 

 

 「本当に、好きな人なんだ。」

 僕は、言った。

 

 

 

 「バカ。」

 星川さんは、泣きながら言った。

  

 


 「バカだよね。ごめん。」

 僕は、謝った。

 

 

 

 「そうよ。優しくしないでよ、もっと好きになっちゃうじゃない。」

 星川さんは、悔しそうに言った。

 

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