第9話 秘書と人間関係

 医局には様々な人がいます。それは秘書だろうが医師だろうが同じです。

 そんなことを言ったら、まあどこの会社に所属してもいろんな人がいるわけですが。今までもそれで散々苦労した。それは今は置いといて。

 医師とは別に専門の資格を持った、ここでは専門士さんと呼びましょう。その専門士さんも私と同じころに入った若い二十代の女子がいました。楓さん(仮名)と言います。

 彼女は学校でその専門士の勉強をしたのですが、実際に仕事をするのが某大学病院が初めてだったのだそうです。

 そんなわけで専門士の先輩桂さん(仮名)に教わりながら仕事をしていたということでしたが、私と違ってコミュ力の高い桃さんが楓さんから悩み相談を受けていました。

 桂さんとうまくコミュニケーションをとれない、と。

 実は桂さんと合わない人は楓さんが初めてではないらしく、前にいた専門士さんも桂さんと合わなくて辞めたらしいです。桂さんにいじめられたという話でしたが、どこまで真実かはわかりません。

 そこでお昼に医局で話をしていた桃さんや松さんはたまたま医局に来たE助教にその話をしたところ、

 E助教「面談だなあ。でもあおるようなことするなよ」

 と言われて、そんなことしてない!と松さんと桃さんは機嫌を損ねておりました。

 楓さんはそれを聞いてトイレに行ってから戻ってこなかったです。

 それからしばらくして、楓さんと私のお昼が一緒になった時、あれから桂さんとどう?と私も聞いてみてしまいました。

 楓さん「もう桂さんに言っちゃったんですよ。ちゃんと話してくださいって」

 私「ああ…。うん。そういうことも必要かもね」

 それがいいほうに転べばいいだろうけど、悪いほうに転んだら…。

 しかし、私も曖昧な答え方しかできず、彼女の言うことを否定することはできませんでした。

 でも楓さんもかなりコミュ力は高いほうだと思うのですが。合う合わないはどうしようもないですけどね。それに、私は楓さんからしか話を聞いていないので、桂さんの言い分も聞かないとなんとも言い様がありません。

 それから数日後。楓さんは仕事中に教授室へ入って行ったのです。

 教授室を出てから実験室の檜さん(仮名)のところにいるのを見かけましたが、その次の日から某大学病院へ来なくなってしまいました。

 桂さんがとある日教授室へ呼ばれて、1時間ほどお話しされてから教授室を出て行かれました。

 それを見た松さんが一言。

 松さん「教授と1時間も話してたら、胃酸で胃に穴が開くよね…」

 桂さんの胃に穴が開いたかどうかは定かではありませんが、結局楓さんは某大学病院をお辞めになりました。本当に人間関係とは難しいです。

 その後、新しい専門士さんは採用されていません。

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