第5話 秘書と提出物①
秘書の仕事の中に、先生方に書類を提出していただくという仕事があります。
事務からいつまでこれ出してね!と指示が来るので、それに合わせて医局内で早めに設定して先生方にいつまで出してくださいとお願いします。
しかし、これまた先生方の個性が非常に出るものであるのです。
A教授…かなり早く提出物を出してくれる。
B医局長…提出物は早い。机もきれい。
C講師…机の上は乱雑。しかし催促すればなんとか出物は出してくれる。
D助教…まあ机はきれい。提出物は出してくれる。
E助教…机の上がヤバい。どこに書類を置いたらいいかわからん。提出物は催促。
以下、F助教…というふうに続いていくのだが、この前驚かされたのがE助教である。
事務から来た書類をE助教の机の上に「ご記入の上、結糸までご返却ください」とふせんを貼って置いておいた。
置いておいたが来ない。うん、書類が戻って来ない。確かにE助教は机上はしっちゃかめっちゃかだが、見ていらっしゃらないのだろうか。
でも先生方忙しいしな…。と思って、先生方がシュレッダーボックスに出す書類をシュレッダーにかけようと集めてシュレしていた時だった。
患者さんの個人情報があるので、先生方はシュレッダーに結構書類を出されます。
ん? なんか見たころある書類があるぞ。しかも見たことあるふせんが貼ってある。このメモの内容、見たことある…。
って、私がE助教に返してってメモしたふせん貼った書類じゃないかああああ!!
いくらなんでもシュレッダーに入れることないだろ!!
…いやいや。メモが小さかったし、目立たなかったせいだろう。仕方ないのだ、先生方はお忙しいのだから。目につきにくい黄色のふせんにメモした私が悪いのである。
そんなわけで、慌ててその書類を拾って今度はピンクやら緑やらのメモックロールをびたびたとその書類に貼り、
「捨てないでください!」
と目立つように書いてE助教の机の上に置いたのだった。
そしたら、さすがに出してくれました。
先生が予想外のことをするなら、そうしないようにさらに上の手を考えるのも秘書の仕事なのである。
まあ、間違ってシュレッダーかけて書類出せなくなっても、最悪事務にもう一回出してくださいと言えば出してはくれるんですけどね…。
そうするといろんな手間がまたかかるというだけで。できるだけ先生方の手間をなくすのも秘書の仕事です。
そんなわけで、経費で買う事務用品では目立たないので、100円ショップでめちゃ目立つシールとか買ってきた。これで先生が目を通してくれるなら、多少の自腹は痛くもなんともないんだぜ。
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