第3話 秘書の勤務開始
さていよいよ初勤務の日である。
この前案内されたロッカーから白衣を着て出てきたとき、
「あれ、結糸さん今日から?」と中年男性に声をかけられた。
誰だっけ、この人。
私を知っているということは、おそらく面接してくれた教授が医局長なんだとは思うんだけど…。まったくわからん。
「はい、よろしくお願いします」と言ったものの、結局今日にいたるまで最初に声をかけてくれたのが教授だったのか医局長だったのかはわかっていない。というか覚えていない。
医局の隣は秘書室となっており、そこが私のメインの勤務場所となるそうだ。
続々と秘書さんがやってきて、1週間交代でゴミ当番、水道掃除を二人組でやることになったと教えてもらった。
とりあえず初回はゴミ捨てをすることになった。先生方のいる部屋やらロッカーやらからゴミ集め。ちなみにノックは3回して部屋へ入りましょう。2回はトイレノックなので失礼なんだそうです。別にここで教わったわけではありませんが。念のため。
ここでちょっと医局の秘書さんの紹介を。
一番のぺーぺー。私。結糸。
一番のベテランで、40年くらい勤務していてすでに定年退職しているが後任が来ないため継続している杉さん(仮名)。
次に20年以上勤務だけど短時間勤務の松さん(仮名)。
半年前に来たという竹さん(仮名)。
ひと月前にきたという梅さん(仮名)。
そして秘書とはまた別の医師事務作業補助者という業務をしているある程度お勤めの桃さん(仮名)。
さらに桃さんと同じ業務で私の二週間くらい前に入った一番若い美人の桜さん(仮名)。
この方たちと主に医局で働くことになった。
私の仕事は杉さんの仕事の引継ぎがメインである。
竹さんと松さんも杉さんの仕事を引き継いでいるらしいのだが、一人でやってた仕事をそんな割り振るもんなのかな…。と思いつつ、新人は仕事を覚えるのが仕事、と気合を入れてメモをとる。
新人は先生方のスクラブのクリーニングに出すのと戻って来たものの配布、そして週に一度医局や教授室、先生方の部屋やロッカーの掃除をするのが決まりらしい。
ん? …ということは、私の後に誰も入らなければずっと私が一人でそれをやり続けるということ?
………。
今のところはツッコまないでおこう。ぺーぺーだし。
まだ仕事を覚えていないうちから不安になってもしょうがない。
そう思っていたが。
杉さんは定年のため、朝は遅く来るのだった。
その間、私に仕事を教えてくれる人は誰もいないので何かお仕事手伝うことありますかーと聞くと。
松さん「ないかな」
竹さん「ないです」
梅さん「ないです」
………。
こんな生暖かい返答が返ってきた。
仕方ないので掃除はどうか言われて、医局の床掃除やらをするのであった。
私が早く来るからといって杉さんが早く来るということはなく、仕方ないので毎日帰り際に杉さんに明日は何しますか?と聞く毎日。
しかし杉さんは2時間以上遅れてくるので、時間つぶしが大変だった。
私、本当にここで必要なのかな…。と最初の2週間くらいは本気で悩んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます