第26話 あの時の場所へ


元から禁じられている魔法を使って、さらにそれを悪用したのだからこういわれても当然だ、とルギナは陰口に対して反論することはなかった。

兵士に囲まれて手に縄をかけられ連行されるルギナを見て一人の男が声をあげた。

「うちの子はあいつに殺されたんだ! 子供だからって許せねえ、とっとと死んじまえ」

ルギナはその者の姿に見覚えがあった。夢で見たロッシュの友人だった少年の父親だ。

あの日、誕生日会だとヴィルキア家に招待された少年はルギナの犯行により命を落とした、

男は地面に落ちていた石を拾うと、ルギナに向かって怒りを投げるつもりで石を投げた。

「疫病神! お前なんか死んじまえ! うちの子を返せ!」

投げられた石はルギナの額に衝突し、鈍い音を出して石は地面に落ちた。

頭に痛みが走るとルギナの額からはたらりと温かいものが流れる感覚がした。出血したのである。

石を投げられるくらい、今のルギナは犠牲者の家族からは憎まれている存在だ。

今まではルギナの身柄が行方不明だったために怒りのぶつける場所がなかったその男性は目の前に自分の子を殺した犯人がいるという事実に興奮を抑えられなかったのである。

「そうだ! そいつはヴィルキア様を殺したんだ! 死ぬべきだ!」

 その一人の男の行動により次々と他の民衆達も同じように地面の石を拾ってはルギナめがけて投げつける。

ルギナの身体には次々と石の雨が降り注いで石がぶつかっては落ちてと次々と投石による痛みが襲った。

 もはや子供だから可哀そうだ、と反論する者もいなかった。

「死ね! てめえなんてとっとと処刑されちまえ」

「魔法が使える奴なんてやっぱりこの世に生まれるべきじゃなかったんだ!」

 一度怒りに火がついた民衆はもはや周囲につられるように次々とルギナにめがけて石の雨が降り注ぐ。

 子供だからといって手加減をするつもりはない。

ルギナはそれだけ怒りを買うことをしでかしたのだから。そしてそれをかばう者もいない。

 次々と民衆は石を投げつけ、もはや兵士にも止められぬ暴動となりかけていた。

「やめないか! 貴様ら」

 次々と怒声と共に暴力を振るう民衆に、一人の声が響いた。

その声に石の雨がピタリ、とやんだ。

怒り狂う民衆の動きをたった一言で抑えられるほどのこの町でもそこそこの権力を持つ者の声だ。

この町における裁判を務める仕事の中心人物である裁判官の声である。

裁判官はやや年老いたいかにも怪訝がある中年の男性だった。

「怒りをぶつけるのもよってたかって暴動を起こすのも正式な裁きの場で証言してもらおう!」

裁判長は大声でそう叫んだ。

石を投げられ的になっているルギナを悲観して止めたのではなく、あくまでも民衆の暴動を抑える為の制止だ。

裁判長はルギナの近くに行くと民衆に宣言した。

「この子供はこれから裁判にかける! 意義のあるものはそこへ!」

 裁判、という言葉にルギナはいよいよ自分の罪を裁かれるのだ、と覚悟した。

もはやそこで決まったことは変えられない、自分の運命を決める時なのである。


 

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