第13話 勉強とはこういうもの
翌日、相変わらず内容の理解できない授業を過ごして家に帰るとすでに家庭教師が家に来ていた。
家庭教師はルギナが学校に行っていて家に帰るまでの間、母親とよく話をしていたのか客間でお茶を飲みながら今後のスケジュールについて話し合っていた。
スーツを着こなし、眼鏡をかけたいかにも理系といった感じの青年だった。
「はじめまして日比田優一くん。今日から私が君の専属家庭教師になる水宮卓だ。よろしくね」
家庭教師になる男は挨拶を済ませると「今の優一くんにバッチリなスケジュールを組ませてもらったよ!」と誇らしげに言い、ルギナには相談せずに決めたスケジュールを言い渡した。
家庭教師は学校が終わった後帰宅した夕方から夜の十時まで間に夕飯の時間をはさんでみっちり優一に勉強を教えるスケジュールを組むことになった。
土日などの休日は朝早くから一日中だ。
そのぐらいのペースで勉強せねばとてもだが義務教育の小学校六年間分をきちんと履修し、なおかつ中学校の授業に追いつくのは難しいからだ。
家庭教師は県内でも一番評判が良い家庭教師の会社から呼ぶことになっていたので腕は確かなようだ。
中でもかかる金額は高いが最も評判の良い優秀な家庭教師に家に来てもらうことになったとのことでこれからは優一としてみっしりと厳しいスケジュールの毎日が始まるのである。
今までに勉強というものをしたことがないルギナにとってはそれは苦行になるのかもわからずに。
その日から「一日も時間が惜しい」ということで家庭教師との猛勉強が始まった。
小学校一年生の最初の単元から非常に速いペースで単元を進めていくのだ。
「私のいう通りにしておけば君はきっと記憶喪失のブランクがあっても今の授業に追いつける、頑張ろうね」
家庭教師は笑顔で地獄のスケジュールを言い渡した。
しかしいざ勉強は始まると、ルギナはかなり物分かりが良かったのか勉強をしていても暗記や計算といった能力が優れているのか難なく漢字や文法、計算に理科や社会といった暗記が必須な科目もどんどん覚えていった。
ルギナは今まで学校教育を受けたことがないとはいえ元々知能は高かった。
自力で魔法を使いこなせるだけの力があり、魔法を使いこなすには高い知能と精神力が必要なのである。
それは日本の教育内容とも相性が良く、ルギナは知能が非常に高いのだ。
魔法ですらほぼ自力で習得できたルギナにとっては日本の義務教育範囲の勉強などたやすいものであった。
大体三日ほどで小学校の一学年分の範囲の単元の習得を終わらせ、その翌日からは次の学年の範囲にうつる。
算数・国語・理科・社会・英語といった義務教育課程の勉強はすさまじいスピードで進んだ。
ルギナにとってはこの世界に来たばかりでは勉強のこと自体経験のない物事だった為に授業の内容がわからなかっただけで義務教育の範囲を全て一から始めて勉強のやり方さえわかればルギナにとって勉強などたやすいものだった。
教科書の内容を丸暗記し、家庭教師による説明で内容を理解する。
あっという間に小学校教育の六年分の範囲は終了し、中等教育を学ぶスピードも速かった。
このくらい学習能力が早いのならばきっとあちらの世界でも学校に通うことができていればきっと常に優秀の座を取っていただろう。
ルギナは数週間で本来なら義務教育課程の小学校六年間で勉強する範囲の内容を脅威のスピードで身に着けたのである。
ルギナは次第に勉強をするのはこんなにも楽しいことなのかと勉強で問題が解ける快感を覚え、これほどまでに勉強が楽しいのならばラフィディアで勉強ができる環境に入れなかったことが残念だと思うほどだった。
それには家庭教師も驚きを隠せず「凄い! 凄いぞ優一くん、君はなんて物覚えや習得が早いんだ!」と絶賛するほどである。
ルギナはあっという間に義務教育課程の小学校全学年分の範囲を履修し、中等教育にいたっては授業の範囲に追いつくのも数日で終わりそれどころかその先の勉強もあっという間だった。
「これなら君は将来難関な大学にも行けるんじゃないのか!? 今までいろんな子を見てきたけれど君ほど勉強ができる子は初めてだ!」
ルギナには家庭教師によって一から勉強を始めたことにより基礎さえ習得すれば義務教育の勉強もたやすいものになった。
ルギナは家庭教師をつけてもらってから授業の内容も理解できるようになり、ますます勉強が楽しくてたまらなかった。
家庭教師をつけてもらい一から勉強を始めて中等教育の現在の授業範囲に追いついてからというものの時々行われる豆テストは毎回満点を取り、優一としてルギナが中学校に通い始めてからは常にクラスで一番の優秀者になっていた。
「すっげーな優一! 入院してて記憶がないから勉強きつい、って言ってたのに今じゃ前よりも勉強できるなんて!」
「優一って実はすごく勉強できたんだな! むしろ今は前よりも凄いぜ!」
友人達はみなそう褒めたたえた。ルギナにとってはそれも気分がいいものだった。
これまで誰にも相手にされない、煙たがられていた存在だったルギナは今はクラスで一番の話題性のある人物となり多くの人にちやほやされる。
これはルギナにとっても快感でルギナはますます勉強に精を出した。
ルギナにとっても家族に愛され、勉強が楽しく、学校では注目される今の生活が幸福で仕方がなかった。
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