第42話

「なれません。」


「なら修行の意味がないのではないか。」


どう頑張っても自分は象には勝てない。


「象に勝つにはライオンになるしかないでしょう。

 ライオンに成ったら、僕が僕であった意味を無くしてしまいます。」


いつも、弱気な自分だと自覚している。

この師匠たちは自分のことをもっと自分から知って欲しいと考えていると思う。

自分の弱さを、弱さと視るのか、良さと観るのか。

難しいことを問われていた。


武道の心得とは違い、自身の内なる心を開くことにある。

己の道を見出さなければ我が道にあらず。

教えは道にあらず。


「ライオン、うむ、良いことを言う。

 確かに人間は皆ライオンだ。

 大河君は皆と同じようなライオンには成りたくないのかい。

 ライオンになればなんだってできるよ。」


「いいえ、僕、俺はライオンには成りたくありません。」


「よい心構えだ。

 では君がライオンにならないように修行しようか。」


「はい。」


「おっと、その前に彼らとの戦争を終わらせなくてはならないね。」


「彼ら?」


「今、ダンジョンに来ている王国の軍のことさ。」


◇◇◇◇


「また、報告と異なる地形に変わっている。

 ここのダンジョンマスターは健在にしろ、暇なのか!

 一見同じ土地に見えても細かいところを変えて迷宮に作り変えるなど暇にもほどがある!」


同じアンデットタウンではある。

しかし、木々の配置を微妙に変えてある。

そのせいで方向感覚に僅かな違和感を生じさせてしまい。

目印となるオブジェクトをずらすことでさらに拍車をかける。


違和感の正体に気づいてマッピングをしようとしたところで戦闘を強いられる。

戦闘は多少なりの動きを要するモンスター、

主に虫系が配置され、

稀にアンデットが混じることから対処するには陣形を組むのは必須。

精神攻撃も兼ねた攻撃は対処は出来ても、兵士たちの苛立ちは溜まる一方。


国の仕事であるため、これ以上は引くに引けない。


「こうなれば、聞け団員たち。」


気が滅入っていた団員たちは団長の喝に反応する。


「こうなればロードを使うことを許す。」


「隊長いいんですか?」


「あれってまだ実験段階だったでしょう。」


「半分実戦導入は出来てるんだ。

 行っても問題はない。

 何かあったら私が責任を持つ。

 団長であるこの私がな。」


「わかりましたよ。

 じゃ今の録音してたからなんか言われたら団長の責任ってことでやりますよ!」


厳しめの団長に対して副団長が追い打ちをかけるように兵士を和ませ鼓舞した。


「「「ロード起動、王の力をわが手に。」」」


____________________________


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スライム道

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