警察

〈警察〉

 まずいな、もう九時になってしまう。子供たちが家を回り出す前に、早くサキさんとジャックを見つけなければ。


「そういえばお巡りさん」


 隣を走る西澤さんが話しかけてくる。


「なんでしょう」

「今日ってハロウィン、で合ってますよね?」


 何を今更言ってんだ、だからジャックも現れたんじゃないのか。


「ハロウィンって、家回ってお菓子貰うやつですよね?」

「ちょ今それは置いといてもらってもいいですか、もうすぐイベント始まっちゃうんで」

「分かりました。いやぁでもおかしいなぁ、何で誰もお菓子くれないんだろう」


 どこだジャックは、サキさんを連れてどこに……、お、何だ、何の騒ぎだ。


「私のー! 私のお菓子ぃー!」


 先程のおばさんが開く屋台の前で、一人の女性が空に向かって叫んでいた。隣には派手なコスプレをした少年がいる。


「ど、どうしましたか!」

「あ、お巡りさん! さっきはすいません通報したのに家を出ちゃって」

「あなたがサキさんですか!」


 よかった、連れ去られてなかった。


「ハハハッ、今年もたくさんのお菓子を手に入れることができたようだ、ハハハハハハッ!」


 空に浮かぶジャックの声が一面にこだまする。


「あの男、誰なの?」


 変なステッキを右手に少年が聞いてきたので、俺は西澤さんを前に出し説明した。


「この人が言うには、ハロウィン泥棒のジャックらしいよ。ハロウィンの夜に各地で……」

「そ、そいつ!」

「え?」


 サキさんがこちらを険しい表情で見つめる。何が言いたいのか尋ねようと口を開いた瞬間、後ろから激しい足跡が迫ってくるのが聞こえた。


「おぉ、みんな来たようじゃな」

「二郎くーん! 早く早くー!」

「おばさーん! お菓子お菓子ー!」


 おいおいおい、色々なことが起こりすぎだよ。

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