サキ

〈サキ〉

 コンビニまでかなり距離があるなと思っていた矢先、道端に一つの屋台を見つけた。「お菓子販売中」という看板が街灯に照らされる。光輝くんと二人でその正面に行くと、大量のお菓子が並ぶ奥で全身真っ黒のおばさんがヌッと立ち上がった。


「す、すいません、お菓子買いたくて」

「まだ子供たちは公民館にいる時間じゃないのかい」


 凄いオーラだ。しゃがれた声がその空気感を一層際立たせている。


「この子、仲間に入れてもらえなかったんです」

「そうかい。それはきっと、その王子様みたいな服のせいじゃな」


 ゆっくりとおばさんが、光輝くんの服を指さす。可哀想だが、正解であることは間違いない。


「わ、私は似合ってると思うんですけどね……」

「いいよサキさん、この地区のみんなからしたら、こんな仮装はセンスないんだよ」

「でも、お母さんが縫ってくれたんでしょ、それだけでも」

「このステッキとかどうじゃ」


 唐突におばさんが出してきたそれは、先端に大きく黄色い星が付いている、なんとも安っぽいおもちゃだった。


「ちょっとおばさん、光輝くんのこといじってませんか」

「いじっとらんわい、せっかく王子様の格好しとるならこのステッキをあげようかと思っただけじゃ。別に要らんなら構わんぞ」

「どうする? 光輝くん」

「んまぁ……でもタダなら、貰っときます。せっかくなんで」

「……じゃあそうしようか。あぁ、あとお菓子お菓子。おばさん、なんかいいお菓子ありますか」

「んー、例えばこのカントリーマアムはどうじゃ、一個1500円」

「え、おばさんそういう商売なの」

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