川越城

婚礼を終えた5日後の朝、供回りとして100人程の兵を連れ江戸城を出発し川越城へ向かう。

江戸城を出て一旦宮城へ行、そこから入間川を船で遡り川越城へと行く予定だ。

領内の視察を兼ねて陸路で行っても良いんだけど船で行った方が早いし楽なので船にした。

馬は俺の愛馬で最近更に大きくなりサラブレッドぐらいの大きさに加え道産子のような足、にも関わらず颯爽と大地を駆ける事が出来る黒帝と家臣の乗る10頭ぐらいで後は足軽だから船で行っても問題は無い。

馬が船に大人しく乗ってくれるかが心配だったけど大きめの船だからか特に問題も無くスムーズに馬を船に乗せる事が出来た。

そして現在、黒帝は舳先で風を受け気持ちよさそうにしてる…。

のは良いんだが、何故に照と彩が鎧姿でここ居る?


てか時高が江戸城攻略の際、照も加わっていたと聞いて彩の嫁入り道具に鎧を混ぜ込んでいたのは知っていたけどさ…明るくて気立ても良いって言ってたけど、明るくて活発な少女の間違えじゃない? 色白じゃ無いのは太陽の元で元気に活動しているからだと思う…。

ある意味時高に騙された!!

しかも照の爺様に会ってしっかりと挨拶をするっていってついて来たけど流石に今回は色々と面倒だからと伝え留守番をさせようとしたけど、自分の身は自分で守れますし挨拶は大切ですからと押し切られた。

2人して黒帝を撫でていいる姿は絵になるけどさ…。

あの馬…、というか黒帝は江戸城に居る雌馬に片っ端から手を? 出している絶倫馬なんだよ?

ある意味女の敵みたいな奴だよ。


実際の所、日本の在来馬は背丈が低く鎧を着込んだ武者を乗せて長距離は走れないので黒帝と掛け合わせたら在来馬より体格や体力に優れた馬になるのではないかと江戸城に作った馬場で定期的に黒帝と雌馬だけ放して気に入った雌馬が居たら種付けするか様子を見てたら毎回と言っていいほど馬場に放した雌馬全部に種付けしてやがる!!

最近は家臣の所有する雌馬も連れて来させて馬場に放っているが雌が居たら居ただけ手を?出してる。

なんか最近は馬場が黒帝のハーレムとなっている気がしてならないが良い馬が産まれて来るならそれでも良いんだけど転生してから禁欲状態の俺としては少しムカつく…。


いや、俺まだ14歳だけどさ、14歳の男児って結構欲求不満気味なお年頃な訳よ!

元からというか転生前からだけど、女性の胸元とか、太ももとかガン見しちゃうし、絶対領域的なものにムラムラしちゃうんだよ。

ただ転生前だとガン見してると変態扱いされるけど、転生後の戦国時代だとガン見してても変な目で見られないうえ、触ったとしても痴漢扱いされない、それどころか下手に触ろうものならご当主様に夜の誘いを受けたと誤解されかねないから自重しているんだよ!

それなのにそんな俺を他所に黒帝はハーレム生活を満喫してるのが何かズルいと思えてしまうんだよね。

戦国時代に転生して馬に嫉妬するとは思わなかった~~!

欲望に忠実になりたい…。

いや、馬としたい訳じゃなくて、女の子としたいんだよ!!


そんなハーレム生活を満喫している黒帝を横目に川岸を眺めていると、堤の建設が結構順調に進んでいるのが目についた。

まだ転生してから大雨や長雨になった事は無いけど堤が完成すれば入間川が増水しても豊嶋領への被害は少なくなるはずなので年内には終わらせたいけど終わるかな?

冬の農閑期になれば周辺の農民が出稼ぎに来るけど、農閑期は合戦の季節でもあるから早々うまくいかないだろうし。


そんな景色を眺めつつ、入間川を遡り川越の船着き場に到着したら既に俺の到着を予測していたのか道真の家臣が出迎えに来ていた。


「お初に、ではございませぬな、某は太田道真の家臣、斉藤勝康と申します。 わが主太田道真の命でお出迎えに参りました」

「道真殿の家臣? 上杉顕定様の家臣では無く?」


「はい、某は元々道灌様の家臣でございましたが、道灌様が出家し隠居した為、道真にお仕えし命により顕定様の元に出仕しておりました」

「関東管領である上杉顕定様の元に出仕するのなんて普通は出来ないだろうに…、それだけ人手不足? それとも道真殿の口添えがあったとか?」


「道真様のお口添えがあった為、豊嶋家への使者の任を名乗り出て任される程度の信任は得ておりましたが小童に丸め込まれるとは恥を知れと言われ遠ざけられましたので道真様の元に戻った次第」

「そう、何となく読めて来た。 豊嶋家への使者を名乗り出たのは道真殿の命ってとこか。 まあその辺の所は道真殿に直接お伺いしよう」


そう言い、斉藤勝康の先導で川越城に向かい、主殿にて道真と太田家の当主、川越城主太田資常と面会し援軍に来たことを伝え、大まかな周辺の地図に書かれた敵味方の城、現在の戦況などの説明を受ける。


まあ実際は既に1000人の兵が川越城に援軍として入っているから今更なんだけど形式って重要なんだよね。


その後、太田家の家臣と俺の家臣を集めてささやかな酒宴が行われたが、俺はまだ酒飲まないし、もっぱら道真と話している感じだ。


どうやら出迎えに来ていた斉藤勝康と言う男は道灌の懐刀とも軍師とも言われ重用されていたらしいが出自が身分の低い家だった為、他の家臣からはあまり良く思われていなかったらしい。

その上、斉藤勝康自身も身分の低い家の出という事を気にしており、その為か出世欲が強く道灌が出家して隠居した直後、道真の元にやって来たとの事だった。

ただ道真も道灌の命で来たのか、自分の出世の為に来たのかの判断が付かず、関東管領である上杉顕定に口添えし出仕させ上杉家の情報収集をさせていた。

そんな時、豊嶋家に少しでも負担をかける為、川越城へ援軍を派遣させようとしているとの情報が入り、道真が使者の任を任せるよう申し出ろと命じたと言った感じだ。

道真もまさか豊嶋家が援軍を出したのに当主が出陣していないと難癖をつけるとは思ってなかったようでそのような事は命じていなかったと上杉顕定に諌言したところ斉藤勝康が結果的に遠ざけられたので呼び戻したとの事だった。

そして今度は俺に仕える事を勧めたらしく、斉藤勝康は既に俺の家臣のように振舞っている。

まあ偉ぶる訳でも無く、新参の家臣のように酌をして回ったりしてるだけだけど。

うん、新参の家臣だよな…。


ネット情報だと斉藤勝康って確か太田道灌が上杉定正に殺された後、主君を上杉定正に鞍替えし重用されたって言う人物だよな…。

既に関東管領である上杉顕定に鞍替えし太田家を探っている可能性もありそうだけど…。

う~ん、こればっかりは疑い始めたらきりが無いな…。


酒宴の後、斉藤勝康を呼び、俺の家臣として本気で働く気があるのかを確認をした。

本人は出自に関係なく才能で重用し相応の扱いをして貰えるなら豊嶋家随一の家臣と言われるよう働くとの事だったので一つ難しい仕事を与える。


難しい仕事…、京へ行き公家に接触したうえで朝廷から俺に武蔵守の国司、三浦時高の嫡男である三浦高虎に相模守の国司、そしてあわよくば官位を賜るように交渉をする事だ。

とは言えただ京に行き交渉しろと言っても確実に相手にされない為、国司を賜れれば朝廷に10000貫文を献金する事、国司を賜る事に手を貸してくれた大物の公家には江戸城城下に館を建てたうえで館の維持費として豊嶋領内で2000石の所領を用意する事を餌にして良いと伝え、当座の活動資金として5000貫文を持たせて京へ行くよう命じる。

堺には品川湊の宇田川清勝、俺の手足となり石神井川の水運で利をあげてくれた川上屋彦左衛門の店が進出しているの必要な物を取り揃えるよう便宜を図る事も伝えた。


当初は難しい顔をしていた斉藤勝康は京の情勢を多少なりとも知っているようで話を聞くにつれ自信に満ちた顔になり「必ずや吉報を持ち帰りまする!」と気合満々に答え翌日には俺の書いた書状を複数携え京へ向かって行った。


交渉に自信があるのかな…。

それとも条件が良すぎたのか? それとも公家に伝手があった?

あそこまで自信満々な顔をされるとなんか大盤振る舞いしすぎたような気がして来た…。

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