農業改革の始まり

新年の宴会が終わった10日後、遂に所領として与えられた大泉村へ足を運ぶ。

とはいっても当然のごとく歩いてではなく馬に乗ってだ。


そして大泉村を見渡せる台地の上から見下ろすもやはり現代とは全く違う地形だった。

恐らく俺が今居る場所は現代で大泉小学校があった場所だと思うけど、駅側は台地だったとは。

確かに実家から大泉学園駅駅に向かう道は上り坂だったけど元々が台地だったんだな~。

白子川の流れもなんか違うし、遠目に見ても結構水量があるような気がするし。


俺が子供の頃はドブ川だった白子川も最近では綺麗になったけど、昔は清流と言っても良いぐらいの川だったとは。

まあ当然の事ではあるんだけど…。


台地から村と川、田畑を見た後、村へ向かい顔役を呼んで大泉村とその一帯が俺の領地となった為、今年の田植えは俺の指示通りに行うように命じた。

当然のごとく豊嶋家の嫡男とは言え頭ごなしに5歳児がいう事を聞けと言っても何を言ってるんだ? と言う感じだったが、田植えの際、直撒きではなく、塩水選、苗を育ててからの移植栽培、そして正条植えをする事を伝え、もし昨年よりも米の収穫量が下がっても、下がった分の年貢を差し引く事で、農家の収入は変わらないようにするという事で半ば強引に納得させた。


後は肥料だが、急ぎ雨が当たらないように堆肥小屋を作るように命じ、村で飼っている牛の糞や刻んだ藁に米ぬか落ち葉を集めさせて堆肥を作らせる。

因みに村に居る牛の糞だけでは量的に足りない為、守役である原田時守の所領と白子川の下流部を治める白子朝信所領からも牛糞と馬糞を用意して貰った。

勿論、石神井城の厩に居る馬の馬糞も大泉村の堆肥小屋に送る手はずを整えた。

上手くいけば恐らく2~3か月で堆肥が出来るはずだから春までには間に合うはず。


あと堆肥作りと並行して行ったのが農機具開発だ。

牛に牽かせる耕運機、柄振、中耕除草機、千歯扱き、唐箕、手押しポンプ、水車等の制作を命じたけど、現在村には鍛冶師が数人しか居ないうえ、複雑な構造の物はすぐは出来ないとの事で、今の所は田植え後必要になる中耕除草機を量産してもらうことにした。

父に頼んだ鍛冶師が来ればもっと農機具なども作れるんだろうけど、頼んでからまだ数日しか経ってないので村に居る鍛冶師に作らせるしかない状況だったりする。


中耕除草機はそれなりの数が必要だけど、千歯扱きは少なくても問題無いし、優先順位をつけて製作していこう。


本当は治水を行い開墾して田畑を増やしたりしたいんだけど人員不足が深刻だ。

人を雇いたいけど、ぶっちゃけ使える金が無い!!

父に言えばそれなりに人集めや金などは融通してくれるとは思うけどそれだと所詮は親に助けられたと言われかねないから、まずは今年の収穫まで今可能な事だけを実行して、年貢が手に入ったら本格的に人を増やそう。


それにしても、石神井城から大泉の所領まで通うのはめんどくさいな…。

いや大した距離では無いし、現代なら自転車で2~30分ってところなんだけどいちいち往復するのもメンドクサイ。


いっその事、大泉に家でも建ててそこを拠点に…、って5歳児がそれを言っても却下されるよね。

しかも一人息子だし。


てか普通、側室とか居ないの?

この時代は大体子沢山なイメージなんだけど。

いや、それよりも石神井城伝説の照姫は何処?

一応調べたけど、照と言う女性が居ないんだけど!!

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