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 それからというもの、本当に皆優しかったわ。

 私も夫も本当に子供を欲しがっていたことも皆知っていたし。

 私自身ねそれから半年ほどぼうっとしていたわ。

 身体も壊してしまったしね。

 ただ、ぼうっとしていたからと言って、何もしていなかった訳でもないの。

 いえ、途中までは本当に何も考えずにぼうっとしていのよ。

 だけど、ある日、実家の母が見舞いにやってきたのよ。あの母が!

 私は見舞いになら来るのね、と思いつつ、ちょうどあのひとがやってきた時間は、うつらうつらしていたの。

 何となく外の声は聞こえているのね。

 だけど身体は動かない目も開かない、という感じ。

 そんな中、実家の母は、寝顔だけ見させて、と言って入ってきたわ。

 使用人を外に置かせてね。

 と言ってもうちの使用人は皆、私の実家の人間が来たら警戒する様に、とは言われていたから、たぶんその時も扉のところできっちり見張っていたとは思うの。

 ただこの時、母は私がすっかり眠っていると思ったのか、使用人に聞こえない程度の声でこうつぶやいていたのよ。


「やれやれ、こう上手くいくとは面輪鳴ったねえ」


 何を? と私はその時思ったわ。

 母は続けた。


「さあ後は、上手いとこうちの関係から養子を取らせる算段をしなくちゃね」


 そして下卑た笑いを微かに漏らして。

 母の足音が遠ざかって行くのを私は今か今かと待っていたわ。

 早く、早くこの部屋から出ていって! と動かない身体のまま、ずっと思っていたのよ。

 玄関の扉が閉まる音、使用人が送り出す音が微かに聞こえてようやく私はほっとしたわ。

 そしてどういう意味なのか、私は何とか目をこじ開けて、身体をゆっくり起こして、考えることにしたの。


 上手く?

 私がこんな風に寝付いてしまうこと?


 いいえそれは違う。母の言葉は、その後に「養子」という単語が入っていた。

 まさか、と私は思ったわ。

 もしかして、実家が、私を流産させる段取りを組んだのではないか、と――


 ただ証拠は無かったのよ。

 馬が急に暴れ出したのは、どうやら耳に虫が入ったせいらしいのだけど…… 

 でも、そんな偶然が、ちょうどあるのかしら?


 そして思い出してみたの。

 それまでも、そんなことは無かったか、って。

 そして私はその日から少しでも起き上がる様にしたの。

 そして使用人達に、何か変わったことがここしばらくなかったか、と聞いてみたの。

 特に、私の実家の方から、何か無かったか、って。

 あの私に対して何もしない実家が。私の給金の大半をもぎ取って行くことが当然だと思っていた実家が。

 考えてみれば、この家に嫁いだ私に対して、何のアプローチもかけてこなかったこと自体が不思議だったのよ。

 少しずつ、少しずつ、使用人達のところで起こっていたちょっとした「不思議なこと」を私は集め出したわ。

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