スピンオフ 仲村先生②

そして夜。


結局日中は忙しくて何も出来なかったが帰る際に彼女を見つけて慌てて物陰に隠れた。


なんか・・・悪い事しているみたいだ。


このまま家にまで着いていってしまえばさながらストーカーみたいじゃないか。


いやいや、僕はそんなつもりは!などと考えていると彼女がコンビニに入って行くのを見かけた。


外からチラッと中華まんを購入しているのが見えた。


・・・よし、こ、ここだ!ここでなんとか話かけないと!でも、なんて話しかけたら。


そうこうしてる間に彼女がこちらに向かってくるので僕はまた慌てて隠れる。


そ、そうだ!よそ見していたことにして軽くぶつかれば!


追い詰められて稚拙すぎるきっかけしか頭に出てこなかった僕はとにかく彼女にぶつかることにした。


ドンッ。


・・・し、しまった!


力みすぎて軽くぶつかるはずが彼女を転ばしてしまった。全身冷や汗に包まれる。視界の一部でオレンジの中華まんがコロコロ転がっていくのが見えた。


『す、すいません。ついよそ見してました。大丈夫ですか?』


ああ、もうこれは終わったかもしれないとは思いつつ後戻り出来ないので展開を強引に続けることにした。


彼女は僕の足元をガン見している。


『フラミンゴ柄の靴下だ。』


『えっ、フラミンゴ?』


『あっ、すみません。こちらの話です。気にしないで下さい!』


彼女が見上げてきて僕達は初めてちゃんと目が合った。


『怪我はありませんか?』


そう言って勇気を出して手を差し出したが内心は彼女と手を繋げた事が嬉しくて興奮してしまう。


落ち着け、自分。


『ぜ、全然大丈夫ですので、お気になさらず、それでは私はこれで・・・。』


彼女はすぐさま帰ろうとしていた。


『あ、ちょっと待ってくださいっ!』


『・・・?』


ここはピザまんをしっかりお返しして、それから僕の話を聞いてもらわなければ!


慌ててコンビニに駆け込みピザまんを二つ購入した。


『これ、本当にすみませんでした。』


『・・・・・ありがとうございます。』


勇気を振り絞ってさりげなく誘ってみる。


『・・・あそこに座って一緒に食べませんか?』


『え?あ・・・・・ハイ。』


よ、よし!とにかく話は聞いてもらえそうだ!


僕は彼女に悟られないように薄い深呼吸をして気持ちを整える。


大丈夫だ。ズルズル先延ばしにするより、失敗を恐れず行動にうつす方がかっこいいっておばちゃんも言っていたじゃないか!


『実は、あなたと同じ病院で働いているんです。』


僕の事知ってるんだろうか・・・?


『あ、ハイ・・・。』


彼女が困惑しているように見え疑われていたら嫌なので一応念をおす。


『本当です!』


彼女は相変わらずなんとも言えない顔をしているが、ここはもう、伝えるしかない。行くんだっ!!!


『いきなりこんな話で・・・不快な想いさせちゃうかもしれないんですが・・・でも、この機会にちゃんとお伝えしておかないとと思って・・・よかったら今度僕とデートしてもらえないでしょうか?』


彼女はいきなりすぎる告白でかなり驚いているようだった。


そりゃそうだよな・・・それでも自分の想いに嘘偽りはない。どうか届いてくれと少し泣きそうな目で彼女を見つめる。


『・・・私なんかとで・・・いいんですか・・・。』


え・・・それはOKって事!?


状況を理解した僕は世界が急に明るく見えて自然と彼女の手を握りしめていた。


『もちろんですっ!僕はずっとあなたとデートがしたいとって・・・あ、すみません、つい興奮してしまって!』


現実に戻った僕はかなり慌てたけど彼女が嫌がってなかったのですごく安心したし嬉しかった。


『二人でどこに行きましょうか?』


帰り道夜空を見上げながらこれからの事について話し始めた。


今度デートに行ったときにはちゃんと伝えようと思う。


君の事がずっと大好きだったってこと。

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