第9話

「ルドリヒ…、いつになったら別館にモリーが来るのぉー!」

私が別館で働き始めて一ヶ月。一度もモリーは姿を現さなかった。

「夫人。お言葉ですが、モリーは今リドルが最近練習している刺繍を教えていて…。」

「私は元々刺繍はできるはずよ。もう…リドルのやつ、初っ端から怪しまれることをしているわね!もう、メイドなんか嫌よ!早く戻りたいわ!!」

私はルドリヒに愚痴を言いながら階段の掃除をしていた。周りのメイドは怖がって近寄ってくれないし、仲間はルドリヒだけよ…!

そう思いルドリヒの方を見た。

「ルドリヒー!信じてくれてありがとう!」

そう言ってルドリヒの手を握っていると、

「何をやっているの?!」

モリーの声だ。

「リドル!あなたはこの騎士に何をしようとしていたのよ!!」

いつも誰にも優しいモリーが私にだけ当たりが強いのは傷ついた。

「申し訳ございませんが、モリー。夫…じゃなくてリドルからお話があるそうです。」

ルドリヒが私のことを夫人と呼びそうになりながらも、モリーに伝えた。アイコンタクトで…ね!

「はあ…!」

モリーは大きくため息をついて、階段を上がってすぐの空き部屋に私とルドリヒを入れた。ここで話すのだろう。

「なんですか?」

モリーは私のことを睨んだ。

「あのねモリー。私ほんとにマリアなの。」

「まだそんなこと…!」

ルドリヒがモリーの口の前にさっと手を出した。最後まで聞けという意味だろう。モリーは黙った。おそらくなんなの?!と思ってるだろう。早めに終わらせよう。

「あの雪山の時のこと覚えてる?」

私はゆっくりとあの日のことを話し出した。

「それであの日の雪男は誰かわかんないけど2人だけのやくそ…」

そこまで話してモリーを見るとモリーは涙を流していた。思わず言葉が止まってしまった。

「…様…。」

「え?」

「マリア様!!今までのご無礼をどうかお許しください!!」

ルドリヒとほぼ同じ反応だな。




「私、仕事場所を別館に移動します!」

「え?大丈夫なの?リドルに怪しまれたらしない?」

私が心配するとモリーはニコッと笑い

「あんな奴のそばにいたくないです。」

と中指を本館に向かって立てた。

ん?ちょっとよく見えないな…あはは…。





よくないね…。

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