第4話

私はゆっくりと立ち上がった。すると私の目の前には私がいた。

「モリー、痛いわ。お医者さんを呼んで…!!」

目の前にいる私はそう言っていた。階段の手すりの反射で見てみると、

「嘘でしょ…、リドルになってる?!」

私は三つ編みで一つに束ねた髪の毛の色や、不自然なそばかす、目の細さ、全てが私と違う。

「あなた何言っているの!ふざけないで!」

モリーは私の胸ぐらを掴み叫んだ。

「モリーやめなさい。リドルを許してあげて。」

私がそう言っている。私は後ろで倒れている私に駆け寄り、

「あなたがリドルなんでしょ?そうなんでしょ?何で入れ替わっているの?ねえ!!」

私は叫んだ。目の前の私の体をゆさゆさと揺らした。するとモリーにビンタされた。

「やめて!次マリア様に触れてみなさい!

ビンタじゃ済まないわよ!!」

え?モリーにぶたれた?モリーは私が小さい頃の乳母で結婚して昔住んでた邸宅を離れる時いまの邸宅に着いてきてくれたのよ?

そんな母親のような存在にビンタされたの?あぁ、やっぱり私は今リドルなんだ。夢じゃないんだ。そこから私は気を失った。


目が覚めると牢獄の中にいた。

そうだった。入れ替わって、私は公爵夫人殺害未遂犯になっているんだ。おそらく死刑になるな。なんで…?なんで入れ替わったの?

おかしいでしょ。お願い神様元に戻して。

そう思いながら天井を拝んでいると、公爵様とエーミールが牢屋の鉄格子の前にきた。

「公爵様!!エーミール!!」

私は思わず叫んだ。

「助けて公爵様!私リドルと入れ替わってしまったんです。信じられないかもしれないけど、ホントなんです!!信じてください!」

そう言うと鉄格子がガラガラっと開いた。公爵様が扉を開けたのだ。あぁ、やっぱり愛する人は信じてくれるんだ。体は違くても、わかってくれるんだ。

「信じてくれるのですね!!ありがとうご…」

そう言おうとすると公爵様は躊躇うことなく私を殴った。

「なにが入れ替わっただ!!そんなの信じるわけないだろう!マリアは、背中の骨を折ったんだぞ?!ふざけるな!!」

こんな公爵様見たことない。なんで怒るの?

なんで殴るの?痛いよ。信じてよ。私は涙が出てきた。

「エ、エーミールは信じてくれるよね?

家族しか知らないこと知ってるよ?信じてよ!」

私は大声で叫んだ。公爵様は私のお腹を蹴った。私は息ができなくなった。公爵様がまた蹴ろうとしている。私は身構えた。

「やめて!お父様!死んじゃう!」

エーミールが叫んだ。私はエーミールの手を掴んだ。

「エーミール、今日だって庭園で一緒にお茶飲んだでしょう?信じてよ!」

エーミールは私の手を振り払った。公爵様が私の顔をもう一度殴った。

「次そんな戯言を言ってみろ!」

あぁ、今日は厄日だ。モリーにぶたれ、エーミールに見捨てられ、公爵様に殴られ蹴られ、夢だ。きっと夢だ。早く覚めて。

お願い!

私は止まらない鼻血を手で抑えていた。

しばらくして鼻血は止まったが、涙は止まらなかった。

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