師走哀歌

街にはクリスマスソングが流れ

コロナ禍ではあっても

其処にはささやかなる華やぎがある


人々の暮らしの息吹を

病院帰りの道すがら感じなから

わたしはうつむきながら歩く


父の手の温もりを思い出す

すっかり細くなった指の感触

頬のけた寂しげな横顔



バス停に着いたら

いつの間にか雨が

ぽつりぽつり静かに降り始めていた


この雨はまるで涙みたいだ

冷たい頬には温かくさえ感じる

そんなことを思いながら……



バスは、まだ来ない



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


◆ 緩和ケアよりもこちらの方が……ということでホスピスへと転院した父。そこでは時間制限はあるものの毎日面会ができて、父も落ち着いて穏やかに過ごすことができました。


 面会時間が終わってホスピスからの帰り道。近くの商店街から聴こえてくる賑やかなクリスマスソングは、わたしには何処か遠い国の音楽にしか感じられなくて。

 

 バス停に着いてバスを待っていると雨が静かに降り出しました。

 凍えた頬にあたる雨粒は、まるでわたしの心の代わりに泣いてくれているようでした。

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