心泣(うらなく)
確実に近づいているものに
「点滴を勝手に外してしまうのです。もう一口も食べられなくなりました」
病院からの電話に
すぐにでも駆けつけて側についていたいのに
コロナ禍の中、それさえ許されず
家に帰りたいと電話でせがむ父の
その願いを叶えることさえできない
「本来お一人だけですが、特別にお二人まで。その代わり明日面会したら来週以降でないと面会できません」
主治医の心苦しそうな声
明日、父が緩和ケア病院に行く日が決まる
痩せた肩と震えていた指先を思う
握った手の温もりを思う
いつか誰もが通らねばならない道だ
それはわかっているけれど
こんな見送り方しか出来ないのか
こんな見送り方しか……
せめて今宵、少しでも
父の心から
不安や寂しさが無くなりますように
できることなら
ずっとずっと
手を握っていたいのに
お父さん
お父さん……
側にいられなくてごめんなさい
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
◆ コロナ禍の中、普通なら毎日面会時間ギリギリまで側にいられるはずなのに、面会すらできずに携帯電話で話すことしかできなくて。
あれほど気丈な父が、みるみる弱っていくのを見ているしかない辛さ。
仕方ないこととはいえ普通の病院での入院生活には限界がきていました。
そして、わたしと息子たちは緩和ケア病院かホスピスへの転院が何とか出来ないだろうかとお願いしたのです。
せめて少しでも、父が心安らかに残された日々を送れるようにと祈る気持ちで……。
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