ひとりの娘

庭の落ち葉が風に乗って

くるりくるりと踊っている


いつまでも暑いと思っていたのに

朝晩の肌寒さにカーディガンを引き寄せる


季節を何度も繰り返し

それなりに歳月を重ねながら

こうして生きてきたけれど


いつまでたっても

大人らしくなりきれない自分に

ふと、苦笑いする


情けないほどの弱気で

覆われてしまいそうになって


失ってしまいそうな言葉を探しながら

暮れていく空を見ていた



ただ、ひとりの娘として


病室の父を想いながら



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


◆ 昔……我が家は、祖母と父と母とわたしの四人家族でした。

あれから、わたしは嫁ぎ、年月は流れ、

祖母は逝き、母も逝き、そして、父もまた病に伏し……。

いつか誰にも、別れの時は来るのだとわかってはいたけれど……。


 もう充分に歳を重ねたはずのわたしなのに、心はあの頃の"ひとりの娘"として、病室の父を想っておりました。

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