『思い上がった銀のフォーク』 PENALTY
N(えぬ)
一話完結
彼は、銀色に輝くフォークとして生まれ、それを誇りに生きていた。あらゆるものを突き刺し、無敵を誇っていた。食卓テーブルで彼を欲しない人はいなかった。その鋭い刺し心地は、先祖伝来の由緒正しき銀のフォークとして讃えられ、その身の見事な造形とともに屋敷の主も、その客も、彼を見て「美しい」と褒めそやしたのだった。
あるときフォークは、どちらが優れた食器であるかをスプーンと言い争った。スプーンは、「どちらにも得意があり、それぞれに生き方があるはずだ」と主張した。が、フォークは、「何でも突き刺せる自分のほうが優秀だ。君に肉は刺せまい?わたしはときには人さえ刺すのだぞ」といって譲らず、とうとうスプーンを刺して傷を負わせてしまった。
*
銀のフォークとスプーンのその争いを遠い天で神が見ていた。
神は銀のフォークに呼びかけた。
「わたしは、すべの物を作り出した。そして、それらは、それぞれに役割があるから作ったのだ。だが、フォークよお前は、自分こそが全ての中の1番と騒ぎ立て、わたしが作り出した物に優劣があるというのだな。……ならばこれからお前は、スプーンとして生きよ」
神がそう言うとスプーンとして生きる銀のフォークの前に、一枚のスープ皿が現れ、「この皿が空になるまで、すくうがよい」と神の声が響いた。
その皿には、いくらすくっても決して無くならないスープがよそわれた。
おわり
『思い上がった銀のフォーク』 PENALTY N(えぬ) @enu2020
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