第5話 ラストショットはプロテインの味

みかんが、店長にお願いしたのは2つ。1つは、射撃指導をして欲しい。

もう1つは、EXILEのSHOKICHI似のターゲットの動向を追って欲しい。

この2点だった。


組織での仕事は野球用語からくる3つに分類される。

S(ストライク) ターゲットを射殺

B(ボール)わざと外してターゲットを威嚇する。

D(デッドボール)死なない所にヒットさせる


実際のクライアントからの依頼は殺すか威嚇するかのどちらかだ。必然的にBとDは同じ扱いとなる。


「みかん、息を止めるんじゃなくて吐くんだ。95%位吐いたところで

撃つんだ。そうするとブレが無くなる。だから狙ったところに

撃てるんだ。後は風の計算だ。いくら弾丸だからといって完全には

まっすぐには飛ばない。少しの影響で数百メートル先の

ターゲットには結果メートル単位の誤差となる。難しいのは、自分がいる

位置とターゲットのいる位置で風の影響は違う。」


「風ってどう読めばいいの。」


「一番分かり易いのは街路樹の揺れだ、後はのれんやのぼり何かも目安になる。ただ勘違いしてはいけないのはターゲットの近辺の風はほとんど関係が

ない。影響がないと言った方が分かり易いか。地上より高い方が

風力が強いから、その状況を知るのが重要なんだ。だから街路樹が状況を

教えてくれる。」


「でも、みかんお前Sの仕事もやるのか。」


「まだ、わからないわ。でも上手くはなりたいの来るべき時に備えて。」

「そうか、Sは精神的にキツイぞ。離れているとはいえスコープ越しに

酷い光景目に焼く付くからなあ。よく考えるんだ。」


「ありがとう、店長。それで、奴の動向はどうなの。」


「奴のグループはあれから反撃に出てな。マフィア側と小競り合いが

続いてる。本人は用心深くほぼ潜伏しているなあ。だいたいの

エリアはわかるんだけどなあ。」


「それで、クライアントからは正式なオファーはきてるの?」


「いや、正式なのはまだだ。でも来るとするとSだけどなあ。でもSだったら受けるのか。」


「ターゲットがあいつならもちろん受けるわよ。」


数日後、クライアントから正式なオファーが来た。もちろんSだ。


『みかん、オファーが来た。Sだ』と店長は

メッセージを送った。


『了解。』とすぐに返信がきた。


いよいよかあ、溜息をつきながら別の部下にメッセージを送った。


『チャンスは一度しかない。適切な設定をMUSTで。』


東京都品川区某所


みかんは、店長から指定されたカフェである人物を待っていた。店長からの

メッセージは『ある人物がみかんに物を渡すから受け取り、ターゲットは

2Fにあるスポーツジムにいる、そこでSだ。』


みかんは、窓際の席で待っていると、カフェに未来が入ってきた。そして

そのままみかんの前の席に座った。


「みかん、驚いた。黙っててごめんね。私も組織の人間なの。あなたを

監視するために同じ会社に派遣されるようにセットされていたの。」


「えっ、未来。ほうとうに、組織の人なの。」


「シー、大きい声ださないで。もう1つ告白すると私、店長の義妹なの。

だから似ていなくて気づかなかったでしょ。」


「全然、気づかなかった。」


「私も、夏美こと助けられなかったから。。。みかん、頼むわね。必ずよ。」


未来は、小さなカプセルを置いてすぐに席を立ちカフェを出て行った。

カプセルの中身はケシの実を特殊な加工を施し、体内に入れると

30分後に心臓発作を起こし、死に至らしめる毒薬だった。しかも体内に

吸収される為物質が残らない、某国も使用している暗殺兵器だ。


みかんは、スポーツジムに入り、フィットネス器機を使用しながらターゲットを監視した。カプセルの粉を入れるのはターゲットが使用している

プロテインのボトルだが、ここには監視カメラがあるので行動は起こせない。


タイミングを待っていた。


ターゲットが、ランニングマシンを終わった後

汗だくになりながら、浴室へ向かった。みかんはこの時を待っていた。

トイレに入り、急いでカツラやメイクを施し男性に変装した。

幸い、コロナ禍なのでマスクをしていても不自然に見られなかった。

数分遅れて、男子浴室の更衣室に入っていった。そうここには、

唯一監視カメラが無いエリアだった。


ターゲットのボトルはすぐに見つかった。他に1名いたが服を脱いで浴室に

入ろうとしていたところなのでみかんのことはまったく気づいていなかった。素早く、ボトルにカプセルの粉を入れ軽くシェークした。

そして素早く立ち去り、またトイレに戻りカツラを取り、今度は女子更衣室に入り、着替えてジムを後にした。


道路の挟んで反対側にある、ファーストフードのお店でジムの方向が

見える席に座り時間が経つのを待っていた。


30分後、サイレントの音と共に救急車がジムがあるビルの前で止まった。

それを確認するとみかんはお店を出て、地下鉄の入口に向かった。


第6話につづく

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