第3話 悲しいターゲット

東京都渋谷区某所


「みかん、セット出来てるか。」


「できてるわよ、店長。それよかさあ、前までマンダリンって呼んでたのに

なんで本名になってんの?」


「いや、マンダリンって長いからなあ。それより今日のターゲットは31歳で

紫のジャケットと来てる奴だ。今カニ天国でお付と飯食ってるところだ、

もう出てくる頃合いだ。」


「31歳っていつもに比べると若いわね。」


「ああ、だけどこいつは極悪人だ。元々水商売のスカウトだったんだが

ドラッグの方に手を出し始めて、今じゃ多くの若い女の子を食い物にしてるんだよ。この辺のエリアでこっそりやってたらよかったんだが、

奴はエリアを広げ過ぎたんだ。結局マフィアのターゲットになったって

わけさ。」


「ふーん、そうなんだ。」


「まあ、EXILEにいそうな男前だから女の子も騙されちゃうんだよなあ。」


「そんなあ、いるわけないじゃん。」


「出てきたぞ、スコープから確認できるか。」


その時、みかんの体に電気が走った。

「何でえええええ、EXILEのSHOKICHIそっくりじゃん。」

(だめ、メチャクチャタイプの人だああああ、どうしようドキドキが

止まらない。)


「みかん、北方向へ向かうぞ。えーーとお前からみて左方向だ。左側頭部を

狙え。後5メートルだ。 」


「4,3,2,2,3ってあいつ電話しながら

ビルの入口にもどりやがったなあ。でも、また戻って来るから油断するな。」


(さっきより余計心臓がバクバクしてるー。

どうしよう。SHOKICHI好きだったんだよねえ、ヤバいは、とりあえず

落ち着け、落ち着け。)


「来たぞ、準備しろ。5,4,3,2,1」


ドキューン。


「あれっ、みかんどこに撃ったんだ?」


しばらして、ガシャーンと大きな音が響き渡った。何と、カニ天国の

看板オブジェの爪部分が落下しターゲットの1メートル先に落ちたのだった。

「みかん、すごいぞ!!お前、こんな大技いつ覚えたんだ。ボーナスとして

今日の報酬は10万だ。よし、撤収しろ。」


「あっ、はい。」

(いやあ、危なかったわ。ドキドキしてスコープぐらぐらだったわ。

正直どこねらったかは覚えてないわ。それにしてもカッコよかった。。。。)


翌日、派遣先の会社食堂にて、みかんはいつも一緒にお昼ご飯を食べる、

香里・夏美・未来が座っているテーブルに向かった。着席すると、

香里が

「みかん、昨日の渋谷の事故知ってる?」


「え、何だっけ。」


「カニ天国の看板が落下したことよ。」


「ああ、そうなんだ。」

「ニュース位見なよ。LINEニュースでも取り上げられてたでしょう。

それでさあ、実は夏美の彼氏がその看板のすぐ近くにいてあぶなかったん

だって。ねえ夏美。」

「そうなの夏美?」みかんはつい声を張り上げた。


「あっ、でも無事だったみたい。少し破片は当たったっていってたけど。」


「そうなんだ。」


みかんは、就業後夏美を駅前のカフェに呼び出した。

「夏美の彼氏大変だったわね。で、いつから付き合ってるの?」


「まだ、付き合い出したばっかりだよ。1ケ月位かなあ。」


「何やってる人なの?」


「詳しくはわからないけど、イベント系の会社を友達とやってるって

言ってたわ。」


「写メとかある。ちょっとみせて。」


「別にいいけど、えーとはいこの人なの。」


「えー、すごーいカッコいい。SHOKICHIみたい。」

みかんは昨日のターゲットだと確信した。


「そうなの、似てるでしょう。」


「夏美、ちょっと言いにくいんだけど、この人怪しいことしてない?

ドラッグ関係とか勧められてない?」


「えー、何言ってんのよ。マサトくんは私にすっごく優しいよ。

普通の人だよ。」


「それだったらいいんだけど。いやちょっと噂でね、渋谷近辺でEXILE系の

イケメンがドラッグのディラーしているって聴いたことが

あったから気になっただけ。」


「マサトくんは大丈夫だよ。じゃそろそろ時間だから行くね。」

みかんは、夏美の後ろ姿を見ながらどうするべきかを考えた。


みかんは、心配しながらも何もできないと思い数週間が過ぎていった。

すると、夏美は会社に来なくなっていた。もちろんみかんや

派遣会社からも連絡しているが返信はなかった。

仕方がないので、香里を誘って一緒に夏美の

アパートに向かった。


呼び鈴を押しても出てこなかったので

大家さんに事情を話して玄関の鍵を空けてもらった。

部屋の中に入るとベッドの上で瘦せ細った

夏美が横たわっていた。すぐに救急車を呼んだ。待ってる間、夏美の手を

握り声かけをしたが虚ろな表情のまま視線をさまよったままだった。

すると突然、夏美が

「うあああああああああああああああ」と叫び出した。


「夏美、大丈夫よ、もういいのよ。」と必死になだめた。少し経つと夏美は

死んだように眠った。その後、何とか病院に搬送され一命は取り留めた。


後日、病室で夏美を面会した際に実はみかんと

カフェで話した時に既にドラッグは貰っていたが恥ずかしさやマサトを信じたい気持ちがあり正直に話せなかったとのことだった。

みかんは、病院の屋上にあがり、

「ああああああああ-ん!どうしてなの!

私がもっと早くきづけばあああああ、よかったのにいいいいいいいい。」


その後、みかんは店長に

『店長、お願いがあるんだけと空いてる日

教えて。』とLINEでメッセージを送った。


第4話につづく

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