第9話 加速装置の発明

1.高速移動のヒーローたち

 超高速で移動するヒーローの元祖は1938年に発表されたスーパーマンです。弾丸よりも速く飛びます。


 ちなみに、スーパーマンにさかのぼること数千年、超高速で移動する神様が韋駄天で、韋駄天がお釈迦様のために食べ物を探したことから「御馳走」という言葉が生まれました。


 また、中国の武侠小説には「軽功」という、高速で走ったり、空中を走る技が出てきます。もともとは実際にある武術の飛んだり跳ねたりする鍛錬法の一種が発端のようなのですが、いつから非現実的な能力として描写されるようになったのかは不明です。


 1940年には超高速で走ることができるフラッシュが、アメコミヒーローに登場します。日本では超高速で走るロボット8マンが1963年に週刊少年マガジンに連載されました。



2.加速装置の発明

 外側から見た視点で描かれていた超高速移動するヒーローたちに、演出革命を起こしたのが1964年に連載が始まったサイボーグ009の加速装置です。なお、Wikipediaによると、奥歯にある加速装置のアイデアは1956年に発表された『虎よ、虎よ!』に出てくるそうです。


 そして、009が加速装置を起動すると、009に視点が移動し、009以外の周りの物体はスローモーションとなり、まるで009以外は時間が止まったような状態になります。


 この加速装置演出が009が世界初なのかどうかがわかりませんが、一般に、加速装置と言えば009が真っ先に出されるほど、009の加速装置がヒーロー界に与えたインパクトは大きいものでした。


 アメコミの映像化作品にも周りが遅くなる演出は使われており、2014年公開の「X-MEN: フューチャー&パスト」や2015年公開の「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」に出てくるクイックシルバー、2014年から始まるテレビシーズの「THE FLASH/フラッシュ」や、2017年に公開された「ジャスティス・リーグ」に出てくるフラッシュの、超高速移動のシーンでも利用されています。



3.そして時は止まる

 加速装置の発展版として、「超高速移動中は、周りの時間が止まったように見える」という部分だけを取り出し、超高速移動はしないが「時間を止める能力」を持つキャラクターも作られています。


 有名なのは、1989に年に連載された「ジョジョの奇妙な冒険 Part3 スターダストクルセイダース」に登場するラスボスのディオ・ブランドーが使うスタンド能力「ザ・ワールド(世界)」で、約5秒間(時間が止まった世界でのディオ時間)、時を止めることができます。


 時を止める能力は、たいてい時間制限があります。ドラゴンボールに登場するクルドは、息を止めている間、時間を止めることができます。


 また、完全に時を止めると光や電波、空気中の分子なども止まってしまい、いろいろと不都合なことが起こるため、完全に止まっているように見えるが、実際にはわずかに時間は動いているという設定が多いです。


 1999年公開の「MATRIX」では、被写体を取り囲むように複数のカメラを配置して同時に撮影することで、時間を止めたように見える「バレットタイム」というSFX手法が使われ、前述の「X-MEN」など多数の作品に影響を与えています。



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