第2話 活動制限の発明

1.カラータイマーの発明

 強いヒーローが最初から最後まで強いままでは物語に緊張感が生まれません。いかにピンチの状態に追い込むかが、物語制作者の腕の見せ所です。より強い敵を出す、絶体絶命のピンチの状況を作る、しかし、それもネタ切れになります。


 そんなネタ切れのピンチを救った大発明が1966年から放送されたウルトラマンの「カラータイマー」です。


 「カラータイマー」を備えたウルトラマンは、3分間しか戦うことができません。なお、当初は明確に3分と規定されておらず、次作のウルトラセブンにはカラータイマーも装備されていませんが、その次の帰ってきたウルトラマン以降ではカラータイマーが必須となり、活動時間が明確に3分と決まりました。


 この3分しか戦えないという設定が物語に緊張感を生み出します。弱い敵だと3分もかからずに倒せますが、強い敵だと3分ギリギリ、そして、遂には3分を超えて……という展開を作り出すことができます。


 また、「カラータイマー」の優れた点は、視覚的にも制限時間がわかりやすいことです。青から赤に色が変わり、さらに制限時間に近づくと点滅の間隔がどんどん速くなり、ピコピコという音とともに緊迫感を作り出しています。


2.活動制限時間のある主な作品

◇テッカマン(1975年)

 変身して一定時間(37分33秒)を過ぎると肉体の細胞が崩壊する。

◇快傑ズバット(1977年)

 ズバットスーツは着用後5分経過すると爆発する。

◇メカンダーロボ(1977年)

 メカンダーロボに合体すると、ロボの原子炉めがけて敵のオメガミサイルが発射される。撃墜前(ミサイル到着まで3~5分)に敵のロボットを倒して合体を解除しなければならない。

◇恐竜戦隊コセイドン(1978年)

 タイム戦士コセイダーの活動時間は2分。

◇るろうに剣心(1994年)

 敵の親玉である志々雄真実は15分以上全力を出すと自然発火して全身が燃える。(SFではなくて時代劇です)

◇エヴァンゲリオン(1995年)

 電力を供給するアンビリカルケーブルが外れると活動時間が5分に制限される。


 テッカマンは長いですが、3分から5分程度が戦闘シーンの長さを考えるとちょうど良いようです。

 

3.タイマー制からダメージ制へ

 決められた一定時間の経過ではなく、変身後にエネルギー切れや、大ダメージを受けると変身が解けるケースが現在では主流となっています。一定時間だと物語展開がマンネリになるため、ゲームのヒットポイントに準じた活動制限とすることで時間に幅を持たせ、限界に達した後に何らかの手段によって活動時間を回復させたりすることも可能になります。


◇機動戦士ガンダムSEED(2002年)

 一定のエネルギーを消費することでダメージを無効にするフェイズシフト装甲。エネルギーが切れると被弾する。

◇プリキュアシリーズ(2004年)

 大ダメージを受けると変身が解ける。

◇ワールドトリガー(2013年)

 トリオンが無くなると活動限界となり、トリオン体からベイルアウトする。


 日本の作品は活動制限のあるものが多いのですが、アベンジャーズやDCコミックなどのハリウッド作品は活動制限がなく、ずるずると戦っているイメージがあります。日本は尺の短いテレビの連続ドラマ主体で戦闘シーンに割ける時間が5分程度しかなく、アメリカは尺の長い映画が主体でたっぷりと戦闘シーンを描けることの違いなのかもしれません。

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