ヒーローものにおける定番の発明

明弓ヒロ(AKARI hiro)

第1話 変身の発明

1.変身とは

 ヒーローものにおける最大の発明、それは「変身」です。


 「変身」が発明される前は、ヒーローもののお約束は「変装」でした。ヒーローが正体を隠すために、マスクをかぶる、伊達メガネをかける、髪形を変える等で「変装」します。傍から見れば、そんなの変装じゃないだろう、すぐ正体ばれるだろうと思いますが、実際にオレオレ詐欺が蔓延している現実社会を鑑みるに、人間は意外と簡単に騙されるものです。


 「変身」という考え自体は、狼男や、カフカの変身、山月記、人間に化ける狐や狸、さらには動物に変身するギリシャ神話の神々など昔からありましたが、ヒーローものにおいて「変身」をメジャーにしたのは、1971年から始まった仮面ライダーシリーズだと言われています。先だって1966年に始まったウルトラマンでハヤタ隊員がウルトラマンに変身しますが、ハヤタ隊員の中に封印されてるウルトラマンが出てくるという感じで、ハヤタ隊員の体が変形するという感じではありません。


 では、「変身」と「変装」の違いは何でしょうか? 

 ヒーローは「変身」すると強くなります。


 つまり、

「変身」=「変装」+パワーアップ

なのです。


 クラーク・ケントの強さ=スーパーマンの強さ

 ピーター・パーカーの強さ=スパイダーマンの強さ

ですが、

 仮面ライダーの強さ>本郷武の強さ

 アイアンマンの強さ>スタークの強さ

となります。


◇著名な正体を隠しているヒーロー

1938 スーパーマン 眼鏡による変装

1958 月光仮面 マスクと眼鏡による変装

1962 超人ハルク マーベルコミックに登場

1966 ウルトラマン ハヤタ隊員がウルトラマンに変身

1971 仮面ライダー 本郷猛が仮面ライダー一号に変身


2.変身の種類

 また、「変身」は大きく分けて、自身の身体能力が変化するものと、自身の身体能力は変わらずに特殊スーツを着ることで変身するもの、ウルトラマンのように別の生物が表に出てくるものに分かれます。


(1)自身の身体能力が変化するもの

 仮面ライダー(昭和の改造人間タイプ)、超人ハルクなど


(2)特殊スーツを着るもの

 戦隊もの、宇宙刑事シリーズ、仮面ライダー(平成以降)、アイアンマンなど


(3)別の生物が表に出てくるもの

 ウルトラマンなど


 (1)と(2)を組み合わせたプリキュアシリーズや、(2)と(3)を組み合わせたヴェノムなど、変身もだんだんと複雑化しています。


3.多段変身

 変身後、さらに別の形態に変身する多段変身のはしりは、1988年放送の仮面ライダーブラックRXと思われます。イナズマンのサナギマンは変身途中の形態、仮面ライダーストロンガーのチャージアップはパワーアップの一種であり、一定期間当初の変身形態で活躍し、中盤で完全に形が変わる変身は、仮面ライダーブラックRXのベースのブラックRXから、ロボライダー、バイオライダーへと変わるパワーアップ変身が最初だと思われます。


 多段変身は、最近のヒーローものでは定番になっており、ロボットのものにおける主人公機の交代同様、作り手にとって新たな展開を作りやすい、スポンサーも新しいおもちゃを出せる、視聴者も喜ぶと三方全て良しの素晴らしい発明で、困るのは新しいおもちゃをねだられる親だけです。


4.変身シークエンス

 昔の作品は変身するとき、変身ポーズや掛け声を出すと一瞬後には変身後の姿になっていますが、最近の作品では変身中の変化する様子を視聴者に見せる演出が使われています。

 変身シークエンスのはしりは、1973年放映のキューティーハニーといわれており、服がはだけて裸になり、変身後のコスチュームがだんだんと形成されるアニメーションは、少年たちの目をくぎ付けにしました。


5.変身アイテム

 変身ヒーローは、何らかの変身アイテムを使って変身するパターンがほとんどです。仮面ライダーの変身ベルトや、プリキュアシリーズの変身アイテムなどは毎年商品化されるおもちゃの定番となっており、変身アイテムが無ければ日本ではヒーロー作品を作り続けることは不可能だと言っても過言ではないでしょう。


 超人ハルクのようにハリウッド作品では変身アイテムが無くても変身できるパターンが多いのは、CMスポンサーに頼らず、映画館での入場料収入やケーブルテレビの加入料で製作費をまかなえていたことが要因ではないでしょうか。


 今後、動画配信サイトが主流になってスポンサーに頼らずに制作できるようになれば、日本でも不自然な変身アイテム不要のヒーローが出てくると思われます。

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