第20pedia 腹鳴

ちょっとだけ前回のあらすじ。2人で七草粥を作った。



「お野菜とお塩だけのお粥だけど、意外とおいしそう!」

「塩加減がミソだそうですが、うまくできているといいですね。」


よみが、「それでは」といったと同時に、知依ちよから「ぎゅるるる」と大きな音が鳴った。

知依ちよは何も気にしない様子で「いただきまーす!」とおかゆを口へ運ぶ。


「おいしい!…って聞こえてたよね…お腹鳴っちゃった!あまりにもお腹空きすぎて――」


後頭部に手を当てながら「えへへ」と照れた様子を見せる知依ちよ

よみは特に笑うことなく続けた。


「お腹が鳴ることを『腹鳴ふくめい』というそうです。しっかりと胃が活動している証拠なので、恥ずかしがらなくても――といっても一般的にはお腹が鳴ると恥ずかしいものですよね。鳴ってしまうものは仕方ないですが、姿勢を正したり、体をねじったりすると、胃の内容物の状態や、胃の形が多少変わるので、鳴りづらくなるそうですよ。」

「ほえー。お腹が働いてるからお腹が鳴るんだね!」


知依ちよは、もりもりお粥を食べながらそう言う。

よみもお粥を口にし、初めて食べるお粥の味に「意外とおいしい」と言わんばかりに頷きながら、続けた。


「そうですね。主に空腹時の胃の収縮運動の際に大きな音が鳴るようです。一般的に、食べ物が胃から出ていくのに3~4時間かかりますので、そのころにお腹が鳴ることが多いみたいです。ちなみに、1日3食バランスよく食べると、お腹の鳴る頻度は減らせますよ。」

「なるほど!ずっと食べてればいいんだね!」


お粥をおかわりしながらそういう知依ちよを見つめながら、よみは答えた。


「鳴る頻度は減ると思いますが、健康的にはよろしくないですね。先ほども言った通り、しっかり消化して、空腹の状態になるとお腹が鳴りやすくなるので、お腹が鳴らない生活イコール、常に胃が食べ物で満たされているということになりますし、そうなると生活習慣病のリスクが高くなったりします。」

「ヒッ…病気はお腹鳴るよりやだなあ…。」


知依ちよはおかわりしたお粥を眺めながらそう言い、食べるのを止めてしまった。

よみもお粥をおかわりしながら続けた。


「これは晩ご飯なので、食べてもいいと思いますよ。あと、ずっと食べ続けなくても、適度な間食――例えば血糖値を手軽に上げられるチョコレートや、腹持ちの良いナッツ類などでお腹が鳴るのを抑えることもできます。と、先ほど少しお話した『1日3食バランスよく』のお話の補足ですが、消化吸収は大まかに分けると『炭水化物→タンパク質→脂質』の順番になりますので、炭水化物だけ食べるより、脂質・タンパク質なども入った、バランスの良い食事を――という意味合いです。」

「ほうほう!適度にバランスのいいご飯と間食!努力します!」


よみは「ごちそうさまでした」と手を合わせ、「余談ですが――」と続ける。


「空腹時の胃の収縮運動は、十二指腸で生成される『モチリン細胞』から分泌される『モチリン』というホルモンによって促進されるそうです。」

「モチリン…もちもちだね!」

「もちもちですね。なぜかこれだけは知依ちよさんに伝えておかないといけない気がしまして。」


知依ちよは自分の頬をもちもちしながら「モチリン…」と言っていたが、突然、頬をつまんだまま「あっ!」と大きな声を上げた。


「今日、ヨミpedia言ってない!!」

「まあまあ。今日は調べてないからいいじゃないですか。」


知依ちよは自分の頬をつまんだまま、餅のようにぷくーっと膨れあがった。

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