第8pedia 雪合戦

前回のあらすじ。

庭に立っていたモミの木に飾り付けをした。


庭でのクリスマスツリーの飾りつけを終えた2人。

よみはまたまた「寒い寒い」と言いながら、使った脚立を片付け、そそくさと部屋に戻ろうとした。

部屋の窓を開けたその時、彼女の背中にドスッと何かがぶつかり、「う゛っ」と変な声を上げた。


よみちゃん!せっかくだから雪合戦しよう!」

「イヤです。寒いので。」

「えー!やってたらあったまるよー!!」


問答無用で雪玉がよみに向けて投げつけられる。


「ちょ、窓割れますって!」


そういいながらひとまず窓を閉め、距離をとる。

知依ちよの思惑通り、戦わなくてはいけない状況になってしまったようだ。


「そ、そういえば、どうして雪合戦というのかとか気になりません?」

「あー、確かに気になるね!でもとりあえず一戦!!」

「あなたは戦闘狂ですか!?」


よみは仕方なく、どうしても雪合戦をしたい知依ちよに付き合った。

雪合戦というより、ただの雪玉のぶつけ合い。

お互い、雪まみれになるまで続いた。

終わるころには体も温まり、よみの防寒具は取り外されていた。


「楽しかったー!」

「つ、疲れましたね…でも久々にこんなにはしゃいだ気がします。」

「ね!満足したので、雪合戦のこと、調べて!ヨミpedia!」

「ふり方が雑すぎません?調べはしますが…。」


そういわれたよみは、アウトドアチェアに置いていた本を拾い上げ、調べ始めた。

調べ終えたのか、疲れていたから雑に調べたのか、すぐに知依ちよに声をかけた。


知依ちよさん知依ちよさん、大体わかりました。」

「はやっ!じゃあ教えて!」


そう答えた知依ちよは、引き続き、雪で遊んでいる。

「元気ですね…」とよみはあきれた様子を見せながら、説明を始めた。


「雪合戦の起源は、本当に合戦だそうです。日本ですが、そこだと思います?」

「雪といえば、北海道!」

「安直ですね。正解は新潟県の魚沼市です。実際に『雪合戦発祥の地』の石碑が建てられているそうですよ。」

「ほえー。合戦ってことは、武将が戦ってたの?」

「おっしゃる通りで、上条 定憲じょうじょう さだのり長尾 為景ながお ためかげが。『刀折れ矢も尽きてもなお、両者は戦いをやめず、雪を固めて投げ合った』とされているそうです。」


大きな雪玉を転がし始めた知依ちよは立ち止まり、「遊びじゃないんだ…戦なんだ…」と重く捉えたように考え込む。


「あ、合戦ではなく、似たようなものですが、ただただ雪をぶつけ合う遊びとして、源氏物語に『雪ぶつけ』というものが記されておりますので、現代人がやっているのはこちらと考えた方がよさそうですね。」

「そうなんだ!じゃあ命がけでしなくて大丈夫だね!」

「そんなに簡単に命をかけようとしないでください…」


知依ちよはそういうと、大きな雪玉とは別に、新たな雪玉を作り始めた。


「命がけ、というわけではないですが、この雪合戦、実は遊びだけでなく、公式なスポーツとしても広がっており、日本以外でも競技として、確立されているそうです。」

「それはまさに雪合戦って感じするね!ちょっと見てみたいかも!」

「プロの本気の雪合戦。私も少し見てみたいですね。」


そう話している間に、知依ちよは「できたー!」と満足げな表情を浮かべている。

彼女の目の前には雪だるまが出来上がっていた。


「雪だるまにも飾りつけします?」

「うーん、目とか鼻とかないとさすがに寂しいね。一応しておく!」

「せっかくなので、私も手伝います。」


そうして、今度は2人で雪だるまの飾りつけを始めた。

部屋に戻るのはいつになることやら…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る