第2pedia かゆみ
「ごちそうさまでした!コーヒー淹れてもらったし、食器はわたしが片付けるね!」
「では、お言葉に甘えて。よろしくお願いしますね。」
食器―といっても、メロンパンが乗っていた皿とマグカップだけだが、それらを片付けるために
案の定、すぐに洗い終わった様子で、彼女はすぐにこたつに戻ってきた。
それから何かを探すようにきょろきょろと、あたりを見渡している。
「食器、ありがとうございます。何かお探しですか?」
「えーと、食器洗った後はいつもハンドクリーム塗ってるんだけど、無くしちゃったみたいでー…。」
「あら、私が使っているものでよければ、使います?」
「ありがとー!冬は乾燥しがちだから助かるよ~」
「乾燥…そういえば、こたつと最低限生活に必要なものはありますが、加湿器がないですね、この家。そのうち届くように頼んで―」
それを聞いた
荷物を受け取った彼女は、なにやら大きめの箱を持って帰ってきた。
「また何か注文したのですか?」
「うんうん。わたしも加湿器ほしいなと思って、こないだの管理人さんからのL〇NEに、追加でお願いしておいたの。」
「あ、この前のそれ、LI〇Eだったんですね。私も欲しかったので助かりました。」
早速、
大きめの箱の中から、加湿機本体のサイズであろう、一回り小さめの箱が出てきた。
「荷物が届いたときって、大抵、自分で頼んで中身知ってるはずなのに、なんだかワクワクするよね。やっとでてきた!プラズ〇クラスターだ!」
「空気清浄機能もついてるものですね。サイズも邪魔にならない程度で、いい感じですね。」
「これで冬の乾燥ともおさらばだね!冬はすぐにお肌乾燥して、いろんなところがかゆくなっちゃうから困っちゃうねー。」
「かゆくなる前に、化粧水などで保湿すると良いですよ。」
そういいながら
それを聞いた
「そういえば、どうして乾燥すると、かゆくなっちゃうんだろうね?そもそも、かゆみって何なんだろう…」
「どうして…?どうしてなんでしょう…気になりますね…。」
純粋な疑問を口にしたつもりだった
「調べて!ヨミpedia!」
その掛け声を聞いた
その間に、
しばらく時間が経ってから、
「今回は長かったね。何かわかった?」
「いろいろな研究が為されていて、前回みたいな曖昧な感じではないのですが、生物学?でしょうか。専門的なお話がたくさんで――頑張って説明しますが、分かりづらかったらすみません。不明点があれば、都度、指摘していただけるとさらに調べますので。」
「
「まず、『かゆみって何なんだろう』という点から。よくよく考えると当然のことと思われるかもしれませんが、かゆみを伝える神経が刺激されることによって、かゆみが発生します。」
「痛みを感じるのと同じようなこと?」
「厳密に言うと、痛みとはまた違う神経になりますが、『神経が刺激されて発生する』という点に関しては同じと言えますね。そして、かゆみの神経が刺激される要因は、大きく分けて2つあります。この前みたく、1つ当ててみます?」
「えっ」
「そんな難しそうなこと、当てられるわけないじゃん」と顔に書いてあるかのような表情をしている。
それを見た
「難しそうな話の後にこの問題は、少し意地悪すぎましたか?と言っても、1つは私が調べる前に
「ほえー。でも、どうして乾燥すると、かゆみの神経が刺激されるの?掻くから?あれ、かゆいから掻くんだから違うか…。」
頬杖をつき、「うーん…」と唸っている
それから、
「
「
「いいえ。そんなことは一言も。先ほど
しかし、先ほど気になった矛盾点が解消できていないためか、目が泳いでいた。
「少し詳しく説明しますと、乾燥することによって、肌のバリア機能が低下してしまいます。バリア機能が低下した肌は、花粉・紫外線・服などとの擦れ、といった外部からの刺激に敏感になり、ちょっとしたことでかゆみを誘発します。ここで、かゆみを取り除くために掻いてしまうと、乾燥せずとも自ら肌のバリア機能をさらに低下させてしまいます。するとまたかゆくなり…といった悪循環が起こります。ご理解いただけましたか?」
「…抜け出せない無限ループだ!このループから抜け出す方法はないものか…。」
彼女は、反射的にそれを投げ捨てながら叫んだ。
「ひゃあああ何するの冷たい!!」
「冷やすとかゆみを伝える神経が鎮まるので、かゆみが治まるそうです。あとは最初に話題に上がった保湿と、あまりひどいならお薬が必要になるかと。」
「そもそも掻くことがダメなんだね!でも、それならかゆくなる意味ってないんじゃないの?掻くと気持ちよかったり、一時的とはいえ、かゆみが治まるのはどうして?」
「うーんと、これまた複雑になるのですが…長くなりそうなので、頑張って聞いてくださいね。」
「了解!」
「話の始めに戻ってしまうのですが、かゆみの原因は覚えていますか?」
「ええと、かゆみの神経が刺激されることによっておこる!」
「正解です。外部の刺激の方がイメージしやすいと思うので、こちらを例に――例えば、花粉や紫外線などのものが、目に見えるような異物だとして、肌についてしまったら、
「振り払う!!」
腕をぶんぶん振っている
小さく咳払いをしてから、
「間違ってはいないですが…取り除こうとしますよね。その『異物を取り除く』という行為を誘発するために、かゆみは起こっているようです。」
「ほえー。じゃあ、掻くと一時的にかゆみが治まるのは、異物を取り除けたから?」
「残念ながら、一般的な外部からの刺激は、掻く程度では取り除けないと思います。ここで少し想像していただきたいのですが、かゆい所を搔き続けると、どうなりますか?」
すぐに「血まみれになる…」と言いながら、絶望した表情で顔を上げた。
「…過激すぎません?間違ってはないですが…血が出ると痛いですよね。」
「いたい…」
「もう想像の世界から帰ってきてください…。この『痛み』がポイントで、痛みを伝える神経が刺激されることによって、かゆみを伝える神経の活動を抑える物質が放出され、一時的にかゆみが治まるそうです。」
「ふむふむ。じゃあ、掻くと気持ちいいのは、痛みの神経が出してる物質が関係してるってこと?」
「ここだけ聞くと、そう思うかもしれませんが、そこが関係しているという記録はないですね。『掻くと気持ちいい』というのは、脳の――少し専門的な話になりますが、『報酬系』と呼ばれる部分が活性していることが原因だそうです。」
「ほーしゅーけー?」
「そうですね…幸せや満足感を感じた時に活性化する部分、といったところでしょうか。」
「それは、メロンパンを食べたときに活性するところだね!!」
掲げられたメロンパンを眺めながら、
「今、まさに活性化してそうですが…おいしいものを食べたとき、誰かに褒められたとき、何かを達成したとき…などでしょうか。よく『ドーパミンがどばどば出てる』とか表現されていますが、あの状態のことですね。」
すべて説明し終えた
「解説は以上ですが、何かまだ気になることでも?」
「
「的外れ…というほど外れすぎてもないと思いますよ。あと、話の流れ的にそうしていただけて助かってます。」
そういいながら、
「これからもそうします!説明ありがとう!今日の晩ご飯は任せて!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます