第1pedia メロンパン
「はっ」
そう言い放った
「突然どうなさったのですか?」
「わたし、メロンパンが好きって言ったけど、メロンパンのこと何にも知らないかも…。メロンパンのことをちゃんと愛してあげられてないかも…。」
「では、
足をこたつにぶつけた様で、ゴッと鈍い音を立てたが、気にしていない様子で語り始める。
「端っこはサクサクで甘いクッキー生地。真ん中はふわっふわのパン生地が増えていって、場所によってバランスが違ってくけど、それがいいの!あと丸いフォルムがかわいい!チョコチップメロンパンとかもいいよねぇ…」
彼女の目の前には、今まさにメロンパンが見えていそうな雰囲気がする。
今にも涎が垂れそうな、でれでれした表情で語り続ける彼女を横目に、コーヒーを淹れていた
「そこまで語れるなら、ちゃんと愛してあげられているのではないでしょうか。メロンパンもきっと喜んでいますよ。」
「ありがと!ミルクとシロップは大丈夫!コーヒーはブラック派なの!大人でしょ?でしょ?」
「ブラック派の理由は?」
「…メロンパンに合うからです。」
その答えを知っていたといったような無表情で、
その時、突然インターホンが鳴った。
「きたきた」と言いながら
小さめの箱を抱えて戻ってきた彼女に、
「今朝、スマホに『今日何か欲しいものはありますか』ってメッセージが来てたから、『メロンパン』って返事したら、『後で送ります』って返ってきたから―」
「あぁ、管理人さん、ですかね。というか
「ええっ、このメロンパン危ないの!?」
「メロンパンが危ないわけではないですが…。」
慌てて箱の中を確認する
「管理人さんというのは、文字通り、この世界を管理している方です。私も詳しくは知りませんがよくしていただいてます。」
小声で「何かと都合のいい方です」と付け足してから、
「おいしそうなメロンパンが入ってます!隊長!いただきます!」
「それはよかったですね。せっかくなので、私にもいただけますか?」
「どうぞー!」と言いながら、
その手が、こたつの上でぴたりと止まった。
「急に気になったんだけど、メロンパンってどうして『メロンパン』っていう名前なのかな?メロンの味しないし、発祥の地が由来とかなのかなあ。」
それを聞いて、
「どうして…?どうしてなんでしょう…気になりますね…。」
「調べて!ヨミpedia!」
その言葉を聞くとやらざるを得ないといった様子で、手元の本を開き、スラスラと調べ物を始めた。
その間、
数分ほど経ってから、「うーん…」と
「何かわかった?」
「それが、名前の由来ははっきりとしたものが無いようで、いくつかの説が存在することしかわかりませんでした。」
「いくつかの説?」
「大きく分けると3つほどあるのですが…1つくらい、『メロンパン愛好家』の
「うっ…当て…なければ…しぬ…」
『メロンパン愛好家』という名のプレッシャーに中てられた
「死にはしませんけど…」と言いつつ、今度は
1つ丸々食べ終わるまで、
「あの…単純すぎてたぶん違うと思うんだけど、見た目がメロンっぽいからっていうのもある…?」
「あ、はい。1つはそれで合ってます。」
「もう少し説明すると、ビスケット生地の格子模様が、マスクメロンに似ているという説と、円形ではなく紡錘形のメロンパンが、マクワウリ…こちらも紡錘形のメロンなのですが、それに似ているという説があるそうです。」
「ほえー。意外と単純なんだね。発祥の地とかそういうのはないんだ。」
「発祥の地は関係ないみたいです。これも曖昧で、日本、メキシコ、アルメニア…と諸説あります。」
「あと2つの説としては、『メレンゲパン』が訛った説と、調理器具の『メロン型』を用いて成型していた説があります。」
「メロン型?見たことないかも。まん丸で格子模様があるの?」
「いえ、紡錘形のマクワウリの方に似ています。チキンライスをきれいに盛り付けるための器具なのですが…少し待ってもらえますか?」
そういうと、
すぐにその本から青白い光が溢れ、ホログラムが浮き上がった。
浮かび上がったものは、紡錘形をした、アーモンドのような形のメロンパンの表面に、取っ手がついたような形をしている。
「ヨミpediaにこんな機能もあるんだね!百科事典というより魔導書みたい…!」
「実体化しているわけではないので、触れはしませんが。それがメロン型ですね。」
ホログラムを触ろうとしている知依(ちよ)を眺めながら、
それから思い出したように「あ、そうそう」と続けた。
「一般的なメロンパンのカロリーは、約300キロカロリーだそうですよ。チョコチップメロンパンとか、カロリーすごそうですね。」
「いろいろな説がある、謎多きメロンパンですが、満足いただけましたか?」
「わかったよ
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