ほそく、やわらかな棘
三角くるみ
01
ああ、またいつもの夢だ、と
いますぐに目を覚ましてしまいたい、とかすかに願うも、それはまったくの無駄に終わる。
人は、見る夢を選ぶことはできない。
白いシーツの上で、一組の男女が絡まりあっている。艶やかな長い髪を波打たせる女と、恍惚とした表情で彼女を見つめる男。
部屋の広さに対し不釣り合いに大きなベッドと、ささやかなテーブルセット。出入口以外のふたつの扉は、それぞれ狭いトイレと不相応に広いバスルームにつながっている。温度や照明、室内に流れる音楽や映像を調整するためのパネルは、横になったまま指先ひとつで好みに合わせて変えられるよう、ヘッドボードに備え付けられている。
寝転がったままなにもかもに手が届くなんて、まるで潜水艦みたいだ、と柊はできるだけ余所事へと意識を向けようと試みた。
行為に没頭するふたりが夢の世界の存在である証のように、この部屋には音がない。女が上げる嬌声も、男が吐き出す荒い息遣いも、ふたりが奏でる淫らがましい肉のぶつかる音も、なにも聞こえない。それだけが救いだと、柊は思う。
やがて女は仰向けになる。シーツと枕に広がる髪が、それ自体がまるで生きているかのようにうねり、体重を支える男の指先に絡みついている。
男が求めに応じるように女に覆い被さったために、ふたりの表情はまるでわからなくなる。
見たくない。もう見たくない。柊は夢の中で目を閉じる。目蓋に皺が寄るほどきつく閉じ合わせても、悪夢は消えてくれない。悪夢の、悪夢たる所以だ。
女の髪を纏わりつかせたままの男の腕が、そろり、と動いた。女は緩く目を閉じ、かすかに口を開け、一心不乱に淫楽を貪っている。男の指先が女の顎先に触れた。
やめて、と柊は叫んだ。
声なき声は、己の裡にばかり響き渡り、男を止めることはできない。それでも叫んだ。――やめて、やめて、お願いだから、やめて。
繊細に骨ばった男の指が、ほっそりとした女の喉に絡みついた。男の背中から肩、腕、そして掌におそろしいほどの力がこもる。女の目が、眦も切れんばかりに大きく見開かれた。先ほどとは異なる種類の苦しみに喘ぐ唇もまた大きく開かれている。
投げ出されたままだった腕を持ち上げ、男の指をほどこうと女が必死にもがいている。痣が残るほどの強さで男の腰に絡みついたままの脚はがくがくと震えている。
目を逸らすこともできないおそろしい光景を前に、柊はただひたすら叫び続ける。やめて、もうやめて、死んじゃう、死んじゃうから。
女の腕から、脚から、身体じゅうから力が抜けた。くったりと抵抗を失った女の喉を、男はなおもきつく絞め上げ続ける。
女の身体が痙攣を繰り返し、やがてもうひくりとも動かなくなるそのときまで、男は女の喉から手を離さなかった。
無駄だと知りながら、やめて、と叫び続けた柊は、止めることのできなかった暴虐を前に呆然とただ立ち尽くす。
男が女の喉から指をほどき、寝台の上に膝立ちになった。
ちょうど彼らの斜め背後からふたりを見つめていた柊は、今度は先ほどとは異なる意味で、やめて、と低声で呟いた。――やめて、振り返らないで。
男は汗の浮かんだ背中を捻り、肩越しに振り返ろうとする。
柊は今度こそ絶叫した。
やめて、わたしを見ないで。振り向かないで。こっちを見ないで。
お願い――!
目覚めると鼓動がひどく速かった。まるで身体の内側から誰かに殴りつけられているみたいだ。
全身にじっとりと冷たい汗が浮かび、呼吸もすぐには整わない。シャツの布地の上から胸元に隠れたペンダントを掴む指が、強張って小さく震えている。
今日も男の顔は覚えていられなかった。
夢の中の柊の視点は固定されていない。ベッドの上で絡み合うふたりの背後からだったり、正面というか頭のほうからだったり、ときには真上から見下ろすことだってある。ふたりの顔だって、夢の中でははっきりしている。
だが、ひとたび目が覚めてしまうと、男の顔だけはどうがんばっても思い出すことができない。
知りたいのに。あの男が誰なのか、どうしても知りたいのに。
夢の中で叫んでいたこととまったく逆のことを思いながら、柊はベッドに凭れかけさせていた上半身を起こし、カーペットの敷かれた床の上に座り直した。喉の奥に絡まる煙草の味がひどく不快に感じられ、少し動いただけで頭がガンガンと痛む。
昨夜帰宅したときのままのスーツはヨレヨレで、シャツは皺くちゃだ。ストッキングも履いたまま、鞄は中身をあたりにばらまいたせいか、ぺちゃんこになって足元に転がっている。ごく端的に云って、ひどいありさまだった。
昨夜は早めに終電で帰宅し、充電の切れたスマートフォンもそのままに、ベッドの手前の床を布団と思い込んでダイブしたに違いない。まるっきり行き倒れの態で眠ってしまったせいで、身体のあちこちが軋み、目の中のコンタクトレンズがゴソゴソ音を立てそうなほどの異物感を放っていた。
喚くように痛む頭を押さえ、よろよろと立ち上がって給湯機のスイッチを入れた。眠った実感などこれっぽっちもないというのに、もう朝だ。シャワーを浴びて出勤しなくてはならない。
雑誌や新聞、書籍や書類が散らかし放題に散らかされた、八畳一間のワンルーム。狭苦しいキッチンが独立しているから、ほかになにか別の呼び方もあるのかもしれないが、それは柊にとってどうでもいいことだった。開きっ放しのクローゼットのなかの収納キャビネにかろうじて突っ込んであった替えのインナーを無造作に掴み、彼女はバスルームへと向かった。
トイレと一体になったユニットバスは、死ぬほど使い勝手が悪い。だが、なにごとも慣れだと柊は知っている。手を伸ばせばなんにでも手の届くこの狭さは、考えようによってはたいそう便利だ。
落とさなかった化粧のせいで荒れた肌を適当に擦り、髪にこびりついた煙草の匂いと身体をぬるつかせる不快な汗を流してしまえば、悪夢に囚われたままだった心も幾分かすっきりした。
長い髪と濡れた身体にタオルを巻きつけ、バスルームを出る。テレビをつけながら眼鏡を探し、歯ブラシを咥えながらキッチンに立った。
コーヒー豆のストックが切れかけていることに舌打ちしつつ、やかんを火にかける。口をゆすいでから、ドリッパーにフィルターをセットし、グラインダーに豆を投入すると、ハンドルをゆっくり回しはじめた。
手でひいた豆をドリップして淹れるコーヒーを飲むことは、粗雑に生きることにすっかり慣れてしまった柊が、ほとんど唯一丁寧に行うことにしている大事な習慣である。
沸かしたての湯をゆっくり注ぎ、豆が膨らむのを眺めながらじっくり蒸らす。適量の湯を注ぎ切り、大きなマグカップにコーヒーを移すと、先ほどからひとりで喋っていたテレビの前に戻った。
朝の情報番組をザッピングしながら、新聞に目を通す。興味深い記事は、床に転がっていたタブレットを拾い、アプリで同じものを呼び出して保存した。
ついでにメールを確認する。うんざりするほどたくさん届いているが、意味のあるものはそれほど多くない。必要なものにだけ短い返信をし、煙草に火をつけると、少し冷めてきたコーヒーを啜った。脳と胃に直接届くニコチンとカフェインの刺激は、先ほどまでの悪夢を手の届かない距離にまで押しやってくれる。
もう何度も見た夢だ。
もう二度と見たくない夢だ。
けれど、そう遠くないうちにまた同じ夢を見るだろうことは、柊が一番よく知っていた。
昨日と同じパンプスの踵を鳴らしながらアパートの狭い階段を下り、駅へと向かった。通勤の至便だけを考えて借りている部屋は、繁華街と通りを一本隔てただけの雑多な場所にある。寝に帰るためだけの場所に快適さは必要ない、というのが柊の考えである。
自宅と職場は地下鉄を乗り継いで三十分もかからない距離にあり、通勤にさしたる苦痛はない。新聞の見出しを眺め、記事を斜めに追いかけているだけで、すぐに職場へとたどり着いた。
ウィークリーゴシップという、きわめて低俗な雑誌の記者として働いている柊の日常は、多忙という言葉も擦り切れるほどに仕事一色だ。いまの媒体に移ってきてから、ようやく一年が過ぎようとしているが、まるで十年休みなく働いているかのように心身ともに草臥れきっていた。
昨日とどこが違うのかさえはっきりしない、いつものスーツ姿で出勤した柊を待ち構えていたのは、彼女の直属の上司である
いつものことだと云わんばかりの無関心で自席に向かった柊だったが、彼女よりも十分ほど長く騒音に耐えている同僚の
「あれ、どうにかしろよ」
「厭ですよ」
反射で応じながらも、柊は日向野と、彼の前で項垂れている
ウィークリーゴシップのデスクのひとりである日向野
「うるさいんだよ。どうにかしろ」
柊は唇をきつく結んで市原を見下ろした。市原は無表情の瞳の奥に厭味な色を浮かべ、デスクをどうにかできるのはおまえだけなんだからな、と続けた。持ち上げているわけでも、もちろん褒めているわけでもないことは柊にも伝わっている。
「おまえのことは殴らないだろ、デスクも」
特別だからな、おまえは、と市原は唇を歪めた。柊もまた顔を顰め、市原の指図どおりに動こうとはしない。痺れを切らした市原は、ふと厭味のない表情に戻る。そして、悪いことは云わない、と云った。
「あれ、おまえの特ダネ案件だぞ?」
わたしのですか、と柊はますます顔を顰めた。そう云われたら放ってはおけない。
柊は鞄を自席に置くやいなや、精一杯に派手な足音を立てて日向野の傍へと歩み寄った。だが、空になったばかりの煙草の箱を右手に握り締め、いまにも投擲せんとしている日向野も、やがて飛来するであろう箱の軌道に気を取られているらしい北居も、互い以外に注意を向けたりはしない。
「デスク」
柊の呼びかけなどなんのその、日向野は手にしていた小箱を北居へと投げつけ、次なる武器である赤鉛筆を握りしめた。
ウィークリーゴシップには、デスクと呼ばれる班長がふたりいる。そのひとりである日向野の厄介な癖は、腹を立てるとやたらにものを投げたがることだ。煙草の箱や赤鉛筆などは挨拶代わり、電卓や灰皿やスマートフォンも日常茶飯事、パソコンのマウスにキーボード、デスクトップ本体を投げつけようとしたことがあるのを柊は知っている。
精密機械をぶん投げられると、いろいろな意味で後始末が大変なので、部下たちは日向野がスマートフォンに手を伸ばしたあたりで、編集長である
「デスク。おはようございます、デスク」
びくびくしながら赤鉛筆が飛んでくるのを待っている北居と、部下の期待に応えるべくいままさに腕を振り上げたばかりの日向野とのあいだに割って入った柊は、いつもの倍の声量で上司を呼ばわった。
突如として目の前に湧いて出た柊に驚いたのか、日向野は、あっ、ああ、と妙な発声をしたのち、気まずそうに右腕を下ろす。
「おはようございます、デスク」
柊はもう一度そう云って、隣で身を竦めている北居をちらりと見遣った。
「どうしたんですか、朝早くから」
部下からの詰問に、早いなおまえ、今日は遅いんじゃなかったのか、校了明けだぞ、などともごもご云っていた日向野は、やがて開き直ったのか、こいつが、と低い声で応じた。
「
えっ、と柊は言葉を飲んで北居を振り返った。頼りない後輩は怯えきった亀の子のように首を縮め、すみませんすみません、と泣きそうな声を出す。
「北居くん、ちょっと、どういうこと」
昨夜はずっと先生を張ってたんじゃなかったの、と柊は声を尖らせて北居を問い詰めた。
はい、もちろんです、と北居はいかにも情けない声を出し、眉を八の字に下げて、昨日も、と続けた。
「例の息子のアパートの前にずっと張りついてました」
「じゃあ、なんで」
「そ、それが……」
近くにな、と口を挟んだのは、先ほど猛獣の始末を柊に押しつけたはずの市原である。背後からの声に振り返った柊は、瞳を眇めて続きを待つ。
「Sの記者も張りついてたんだとよ。んで、親切にもそいつが差入れをくださったそうだ。パンだの茶だのあれやこれやと」
で、そのあれやこれやを、と市原は刺々しい口調で重ねる。
「そこの莫迦は意地汚く貪り食った。パンも茶もきれいにな」
話のオチが見えた柊は、ああ、と低い声で呻いた。
「仕方なかったんすよ。だって、腹も減るし喉も乾くし、で、そんなところに、そんな差入れ貰ったら食うじゃないすか、飲むじゃないすか」
「北居くん、あのねえ……」
「一日中車ん中で、交替もないし、買出しにも行けないし、そんなんで」
北居くん、と柊はさっきよりも大きな声を上げる。
「それで、どうしたの?」
「それで、あの、だから……」
北居は気まずそうに口ごもり、日向野と市原に縋るような目を向けた。助けを求められたふたりは、しかし手を差し伸べてやったりはしない。日向野はいたく腹を立てているし、市原は使えない後輩になぞ興味がない。孤立無援の崖っぷち男は仕方なく、自ら口を開いた。
「朝からなんにも食べてなくて、んで、貰ったもん食べたり飲んだりしたら、その、ト、トイレに行きたくなって、それで……」
「それで?」
結論などわかりきっているくせに問い詰める自分はたぶんだれよりも性格が悪い、と柊は思う。だが、幸か不幸か、ウィークリーゴシップ編集部日向野班には、いまの北居に対して親切な人間はひとりも存在しなかった。この場に限って云えば、正義は柊にある。
「そのあいだに塩穴の息子は部屋に入ってしまったんです。しかも、その、父親と、塩穴
はあ、と柊は思わず大声を上げた。
「塩穴が? なんで?」
「知りませんよ、そんなこと」
デスクを筆頭に先輩たちからタコ殴りにされて開き直ったのか、北居も負けずに大声で答える。ぼくが知るわけないじゃないですか、と喚く彼を遮って黙らせたのは、またもや市原だった。
「でも、とにかく、Sはその現場を押さえた。隠し子の存在を頑なに認めなかった父親が、当の息子の部屋に、本人ともども足を踏み入れるその瞬間をバッチリ撮った」
「……最悪」
吐き捨てた柊に北居が情けない顔を向け、すみません、と云った。
「すみませんって、あんたねえ……!」
柊にはそれ以上言葉もない。十か月以上も追い続けてきたネタを土壇場で他誌――週刊スキャンダル、通称S、ウィークリーゴシップと双璧を成す低俗週刊誌の雄――に抜かれ、いまの彼女は苛立ちと徒労感と悔しさでいっぱいだ。こんな気分を味わうために朝っぱらから出社したわけではない。デスクの云うとおり、昼まで寝ていればよかった。
現役衆議院議員にして最大野党の三役、その一角を担う塩穴雅憲に外国籍の愛人と庶子がいるらしい、という情報を編集部内で最初に掴んだのは柊だった。いまから十か月ほど前、彼女が編集部にやってきてから約二か月後のことだ。
芸能界、政財界、そのほかあらゆる人間の澱みを掬う醜聞専門誌ウィークリーゴシップは、その手の雑誌の中でも特に低俗である、というありがたくない評判をいただいている。取材方針は火事場泥棒。煙のないところで騒ぎ立てるどころか、自ら火をつけてでも記事のネタにする、三流週刊誌という華々しい肩書きを裏切らない、じつに下種な雑誌である。記者たちもまた、他人の醜聞を食い物にすることに良心の呵責を覚えないような猛者ばかりだ。
柊はそうした編集部の中にあって、当時すでに一目置かれる存在だった。年齢の割に広い人脈を持っているせいもあるだろうし、転職してきてまだいくらも経たないうちに、いくつかの特ダネを上げたせいもあるだろう。
彼女が得意とするのは、政治家や官僚を相手にした取材である。また、敏腕というほどではないが、元新聞記者らしい緻密な取材と事実の本質を伝える精確な文章は、他の追随を許さない。うちなんかにゃもったいねえな、と日向野が云うのにも一理ある。
塩穴の隠し子の存在を知ったのち、柊はおよそ三か月ほどかけてひとりで裏を取るべく動きまわった。日向野に情報を明かしたのは、班ぐるみで塩穴の行動を追い、記事にできるような確実なネタを押さえるためだった。
標的である親子はもちろんのこと、周囲のライバルたちにも気づかれないよう地道に追い続けた。ようやく息子の素性が掴め、あとは写真を押さえるだけとなったところでの、今回の北居の大ポカである。日向野以下、みなが北居に冷たくあたるのも無理はないと云えた。
半年前の定期異動によって日向野班に異動してきたばかりの北居は、柊たち三人の苦労をあまりよく理解していない。生理現象には逆らえないのだと開き直りを重ねて、市原から、おまえいっぺん死ねば、とこれ以上ないほどあからさまなパワーハラスメントを食らっていた。
「Sの発売は金曜日ですよね。うちも明けた月曜日には最新号が出る。どうします、日向野さん、
週刊誌であるウィークリーゴシップは、現在、二班体制で取材編集にあたっている。半井とは、日向野と対を張るもうひとりのデスクの名である。
「写真もないのにか」
「今日一日粘って……」
食い下がる柊に、日向野は、無駄だ、と吐き捨てるように応じる。なんでですか、とさらに噛みついたのは市原だった。
「これまで隠し子はおろか、愛人の存在さえ頑として認めようとしなかった先生さまが、昨夜に限って息子とともに顔を晒し、これみよがしに同じ部屋へと帰ったのは、別にSの運がよかったからってわけじゃない」
わかるだろう、それくらい、と日向野はいまここでは火をつけられない煙草を唇に咥えたり手で弄んだりしながら、苛立った声で云った。
「先生は、昨日、あの場所であの時間、あのタイミングで、撮られるべくして撮られた。そう狙っていたとしか思えない」
「狙ってって、先生自身が撮られるのを狙っていたということですか」
柊が首を傾げれば、なんでそんなこと、と市原も同調する。
「わからない。だが、塩穴は腐っても代議士、それも野党の大物だ。次の選挙で、万が一にも政権交代なんてことになれば、官房長官くらいにはなれるかもしれない。博打好き女好きの碌でもないオヤジに見えるが、腹ん中は冷静で計算も得意だ。汚いものを腹いっぱいに飲み干してもカラカラ笑っていられる頑丈さは、下手な二世議員に真似できるものじゃない」
「それはそうですけど……」
市原の声には不服と不審が同じくらい含まれている。
「その塩穴が本当に隠しておきたい相手を、うっかりでもなんでも俺たちの前に晒すと思うか。なにがなんでも懐にしまい込み、その存在、いや、存在しているという事実すら隠匿する。そうすることもできなかったわけじゃないのに」
塩穴はそうはしなかった、と日向野は苦虫を噛み潰したような顔で低く唸った。
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