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佐伯くんが彼女に何か声を掛けた。
これまでの展開はだいたい想像がつく。今日の昼間、奈留Aさんとカワタくんのあいだに何か決定的なことが起きたのだろう。彼女がカワタくんに、くだんの女性のことを問い
彼はひとの弱みにつけ込むタイプではないけれど、相手が望んでいるのに、それを拒絶してまで清廉な道を進もうとするほど堅物でもないはず。彼女にしてみれば、自分を強く求めている男性に優しくしてもらうことは、二重の意味での癒しとなる。純粋な慰めと、それに、暴落しかけた女性としての価値をリカバリーさせるってことでも。
ここからの展開は、まあ、だいたい想像通り。彼女は図々しくならない程度に、彼の好意とその優しさに浸りながら、少しずつ回復しようとしてた。心的
佐伯くんは立ち上がってキッチンに向かい、すぐに戻ってくると、今度は座る位置を彼女の正面から隣に移した。なんて見え透いた迷彩。でも、彼女はあんまり気にしていないみたい。と言うか、それを待っていたかのように、彼の腕に自分の腕を絡めた。「すがる」っていうのはこういうのを言うのかしら? 奈留Aさんは佐伯くんの腕に掴まって、自分のおでこを彼の肩に押し付けた。彼の顔が真っ赤になるのがわかった。唾を何度か飲み込み目を激しく
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