第2話
「幽霊ホテル?
面白そうじゃないかぁ」
しぶしぶ打ち明ける彼に、同期は楽しそうに言う。
「じゃあ…オレも一緒に行こう。
ついでにみんなで、見て来ようぜ!」
この人は、こんな状態の恭介を、1人にはしておけない…と思ったのだ。
「えっ、いいの?」
思わず聞くと
「そんな面白そうなトコ…
おまえ1人で行くなんて、ずるいぞ!
本心なのか、そうでないのか…よくわからない口調で、橋本はそう言った。
「すまない」
きっとみじめったらしい自分のことを、同情しているのだ…
そう感じて、恭介は自分のことを不甲斐なく思う。
そんな彼の様子に気付くと、橋本はポンポンと恭介の肩をたたく。
「誰だってそうさ!
いきなり彼女に逃げられたら、仕事だって手にもつかなくなるさ」
優しい一言に、恭介は信じられない思いでいっぱいだ。
「そうだ!霊感の強いアイツも連れて行こう。
アイツなら、何か感じるかも」
勝手に盛り上がる同期を見て、気が重かった仕事だけれども、少し気が楽になる。
「こんなの、1人で行くよりも、みんなで行った方がいいんだ。
例えガセだったとしても、みんなと一緒の方が、気が楽だろ?」
本気なのか、どうなのか。
ただの同情としても、恭介の心が動いた。
「そうだな」
そうボソリと言うと
「よし、これで決まりだ!
調整はまかせてくれ」
そう言うと、さっさと廊下を歩いて行った。
どうして、こういうことになったのか?
彼はまだ、ボンヤリとしている。
1人で行くよりは、みんなで行けば心強いだろうけれども…
あんまり人に気を使いたくないなぁ~
正直恭介は、そう思っていた。
それでいいのか?
そう思うけれども。
だが同僚は、これで話が終わった…とばかりに、自分の席に戻って行く。
(これって、編集長に言わなくてもいいのか?)
そう思うけれども。
(何か言われたら困る、
まぁアイツにまかせておけ)
すっかりその気もない。
あれこれ気を揉むのも面倒だ、とあえて他のことを、考えるのやめた。
だが、もしかしたら、案外楽しいのかもしれないぞ…
気が向かない仕事だったけれど、もしかしたら彼は、何かを期待していたのかもしれない。
「ま、下見くらいは、かまわないだろう」
そう彼はつぶやいていた。
「とにかく、レンタカーを借りていこう」
思いのほか楽しそうに…橋本はそう言う。
それならば、今日は早く帰って、明日の準備でもするか…
いつもは1杯飲むどころか、終電間際まで飲んでいるのだが…
この日はさっさと、家に向かう。
(一応、一泊くらい出来るように、荷物を用意するかぁ~)
ふいに思い立ち、近くの衣料品店へ飛び込んで、下着と靴下を買い求める。
(運転は、アイツがしてくれるからいいとして…
地図とか、ないのかなぁ)
電車の中で、検索をかけてみた。
さっき会社でもらったのは、簡単な地図と住所だけだ。
しかも番地まで書いてはいないので、こんなので、たどり着けるのだろうか…
彼は不安になってきた。
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