第17話 捕獲! 初めての魔術師
バランスのいい4体パーティを
俺は自転車を走らせ、前に異能力者(恐らく)が戦っていた場所の付近を通っていた。
ふと、ライトに照らされた地面や住宅の
それもそうだ。裏の存在、超能力者みたいな奴らが戦ってる場面の証拠など、隠滅されて当然だろう。超常の力が世間にバレるなど、能力者と一般人、どちらにとっても良くない。
特殊能力を『持つ者』と『持たざる者』では、
だから、彼らは必死になって証拠隠滅するし、その存在を認知してる政府も手伝う……というのは、完全に俺の妄想である。
実際はどうなのだろうか。やはり、目撃者の記憶を消したり、普通に
まあ、巨大ロボットと怪獣でその
当事者じゃなければ知らんぷりできたんだがなぁ……ロボットのパイロットな上、戦いを既に目撃してる身としては、警戒するしかない。そう簡単に出くわすことではないことは分かっている。余程
「……ん?」
通りかかった廃ビル。割れた窓から一瞬、光が見えた。
浮浪者か誰かが、懐中電灯でも点けたのだろうか。俺は少しだけ気になり、そちらを見た。
そこには、誰かがいた。浮浪者にしては身綺麗すぎる……というより、身なりがいい。何で仕立てのよさそうなスーツっぽい服装してんだ?
「?」
すると、あまりに凝視したからか、
あちらは何か驚いているようだが。また、厄介なものを目撃してしまったかもしれない。ここはさっさと立ち去ろう。そう思い、自転車を走らせたその時。
「ウェッ!?」
自転車が、
整備不良かもしれないが、間違いなくそんな壊れ方ではない。いきなり、何の前触れもなく、パーツごとに分解されたからだ。
……これは、不味いかもしれない。
俺は、ポケットから博士に貰った
廃ビルから足音が近づいてくる。
余裕からなのか、正直とても遅いペースだったが、そいつはようやく廃ビルから出てきた。
「ふむ。まさか見られてしまうとはな」
姿を現したのは、そこそこ若く見える男だった。
仕立てのよさそうな
しかし、俺を見下しているというのが、その目からありありと見て取れた。
「な、何だアンタ……?」
多分、超能力者とかそんな具合だろ。
いきなり人様の自転車ブッ壊しやがって……俺は4割サメだけど。
「ふん。お前のように下賤な者と話すことはない……が、冥土に土産に教えてやろう。魔術師だよ」
「ま、魔術師ィ~?」
魔術師! そう来たか。
「魔術を見られてしまったものだからな。貴様には死んでもらう」
「は?」
「本来なら記憶を消すところなのだが、面倒でな。どうせ魔力の欠片もない者が死んだところで、もみ消すのは簡単なことだ」
こいつ……魔力を持ってないとか、魔術を使えないとかの理由で一般人を見下してる奴だ。
魔法とか魔術が出てくる、あらゆる創作で見かける奴やんけ。
しかも記憶消せるのにしないとか。喧嘩売ってんな?
「殺す? 俺を?」
「何か文句でも?」
「待って、殺さないでくれ……よっ!」
「おっと」
俺は素早く、自転車のパーツを投げつけた。
「手癖の悪い……が、
しかし、それは魔術によって防がれる。
だが想定内だ。後退しながらどんどん投げよう。
「貴様……私を怒らせるとは、良い度胸だ。苦しめて殺してやる」
「お前がな、出オチ野郎」
「何? ……ぐわぁッ!?」
魔術師野郎が、いきなり膝から崩れ落ちた。
地面に倒れて、ピクピクと痙攣しており、動けないようである。
「き、貴様……何をした!?」
「サメだよ」
「は……?」
サメ、というのは本当だ。
正確には、本間博士に持たされていたガジェットが、サメの形をしているのである。
魔術師野郎の
これが博士の作ったガジェット、『メタルコバンザメ』である。
この『メタルコバンザメ』は、対象に噛みついて、強烈な電流と筋弛緩剤などを一気に流し込むという、対象の無力化を狙ったアイテムである。
しかも、電気ショックについては『電流』なので、0.1アンペアくらい流せば人は死ぬ。
つまり、噛みつかれた時点で、
だが、これだけは言っておく。コバンザメは厳密にはサメではない!
「く、わ、我が名においてこの者の……グエェッ!?」
「何しようとしてんだ! あぁ!?」
魔術にありがちな詠唱を始めたので、自転車のチェーンで首を絞めつける。
さっきは無詠唱だったっぽいが、今は詠唱を必要としている。集中が乱れたからとかそんなんか?
そういえば、まだ何もされてないな。
まあ、殺すとかいう恐喝とか、器物破損とかはあるので、正当防衛だ。それに、殺人をほのめかす供述もしてる。
メタルコバンザメ君がレコーダー代わりになってくれているらしいので、証拠もある。
俺は、首を絞めながらメタルコバンザメ君を呼び、スマホを取り出してもらった。電話先は本間博士である。
「もしもし博士?」
『ああ、状況は把握しておる。魔術師じゃな』
「あれ? 何で知ってるんです?」
『メタルコバンザメには監視機能もあるのじゃ』
「なるほど……プライベートとかは? いや、見られて困るようなものは無いですけど」
『そこは問題ない。別にトイレまでついていこうとかではないのでな。普段はGPSじゃ』
「なら安心? ですね」
『そうじゃ。あと、人員をよこした。もうそっちにつくはずじゃ』
博士がそういうと同時に、俺の目と鼻の先に1台のハイエースが止まった。
中から出てきたのは、作業員風の男達だった。
「何か、ハイエースからぞろぞろ出てきたんスけど」
『それじゃな』
男達は、魔術師野郎に手錠などをかけ、ハイエースに乗せた。
それが終わると、自転車のパーツを片付けていた男が、ハイエースから自転車を取り出し、俺のそばに置いた。今まで乗ってた物と全く一緒のやつだ。
「ど、どうも……?」
俺の言葉にも、男達は
やがて、彼らはハイエースで去って行った。
「……無駄な時間を過ごした気が」
『そうでもないぞ』
「はい?」
『おかげで憎き魔術師共のアジトを割り出すことができる。お前さんのおかげじゃ、今日はゆっくり休むがええ』
「……はい」
電話越しでも分かるほど博士は喜んでいるし、まあいいか。
しかし、魔術師のアジトを割り出して何をするつもりなんだ?
「……帰るか」
きっと、
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