第16話 蛇使いの悪魔VS猛牛
『ブモオオオオォォォォ!!!』
「いきなり来やがったな!!!」
アンドロマリウスを見るや否や、猛スピードで突進しするミノタウロス。
しかし、キズナは軽やかにジャンプすることでそれを
『マウウウウゥゥゥゥ!!!』
建物に激突するミノタウロスだったが、崩壊し降りかかる
「野郎!!!」
キズナは、蛇の巻き付いたような槍『フェルドランス』にて、ミノタウロスの胴体を突いた。
槍の穂先とは別に、巻き付いた蛇の牙すらも、獲物を喰い破らんと襲い掛かる。
『ブモオオオオ!!!』
「
しかし、迫りくる槍を見たミノタウロスが反射的に頭を振り回した結果、角に当たってはじかれた。
激突する直前に回避したものの、
『ブモッ! ブモォッ!!』
「何やってんだ……?」
突進をやめたミノタウロスは、ちぎれたマントの切れ端を興奮したように振り回していた。
やがて切れ端がボロ雑巾のようになると、またアンドロマリウスへ襲いかかった。
『ブモオオオオ!!!』
「まるで闘牛みたいな奴だぜ……闘牛! そうだ!」
何かを思い立ったキズナは、その場でクルリと一回転。
そのまま背中のマントを取り、フェルドランスに引っかけた。
「さあ、来い!!!」
『ブッッッ……モオオオオォォォォッッッ!!!』
ミノタウロスは地面を
風圧が豪快に建物を揺らす。行く手に存在する物体は一切合切破壊され、アンドロマリウスへ一直線に走る。
これによって多くの建物が崩壊しているが、問題はない。
中に人はおらず、家財道具も持ち出されている。なので、もし死ぬとすれば、侵略に来た異世界人だけとなる。
壊れた建物も、
「ほらよ!!!」
華麗に突進を避けるアンドロマリウス。
止まれないミノタウロスは、建造物へ激突したものの、すぐに脱出した。
『ブモオオオオォォォォッッッ!!!』
「あらよっと!!!」
突進、回避、激突を何度も繰り返すと、ミノタウロスの皮膚に無数の傷が目立ってきた。
いかに頑丈な魔怪獣といえど、鉄筋コンクリート造りの建物に連続で突っ込み続けては、無傷ではいられなかったのだ。
しかし、多量の血が流れ疲弊する身体とは裏腹に、その闘志は激しさを増していた。
『マウゥゥゥゥ……!!!』
「!」
ミノタウロスの角が輝いた。
体内に存在する『魔石』から全ての魔力を角に集中し、捨て身の特攻を仕かけようとしているのだ。
魔怪獣は、異世界の生物といえど生物。これだけ大きければ、脳の比率も大きい。そして、発達した脳は複雑な思考を可能とする。
「来るか……!!!」
その気迫を感じ取ったキズナは、迎撃の体勢へ入った。
『ブモオオオオォォォォッッッ!!!』
あまりの速度に、瞬間的に発生したソニックブームが、
両者の間は200メートル以上は離れていた。しかし、ミノタウロスは25メートルはあるとはいえ、一瞬でその距離を詰めた。
この時、技も何もなかった踏み込みは、己の生命を犠牲にした魔力での身体能力強化によって、
「そこだ!!!」
しかし、キズナはそれさえも見切った。
ミノタウロスと激突する直前にはすでに、キズナはフェルドランスから素早くマントを取り外していた。
そのマントを置き去りに、突進を回避。マントを目くらましとして利用したのだ。
『ブモッ!? ブモォォォォ……ブッ……!?』
慌てて覆いかぶさったマントを取るが、時すでに遅し。
後ろからフェルドランスで胸部を貫かれたのだ。
『マ……マウゥゥゥゥ……』
槍に巻き付いた蛇の口が、輝く石……魔石をくわえていた。
心臓と魔石という重要な器官を同時に奪われたミノタウロスは生命活動を停止した。
「勝ったぞおおおおぉぉぉぉッッッ!!!」
崩れ落ち、倒れ伏したミノタウロス。
勝者であるアンドロマリウスは、
『に、逃げろー!!!』
『助けてくれー!!!』
その声に、矢倍高校の生徒や本間博士の私兵にボコボコにされ、指揮系統を失っていたマジック・モンス軍は、我先にと逃げ出した。
しかし、そんな彼らも街中に潜伏していた、生徒や私兵によって次々と拘束されていったのだった。
――――――――――
【メガタウロス】体型:人型 身長:25メートル 分類:哺乳類
・デカいミノタウロス。
肉牛っぽい色合いだが、食用には一切向かな。筋が硬すぎるためである。柔らかくしても、そもそもの味が美味しくない。凶暴すぎて家畜化できないのもある。
赤くてヒラヒラした物に突撃する習性がある。
『この肉、見た目だけなら美味そうっスね』
『人間の歯じゃ折れて終わりだ』
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