終わりと始まり

——そして今日、守永の元にチョコは届いたかというと。


「なんでだよぉぉぉほぉぉぉ」


 一切来なかった。もう、来なさ過ぎた。


「しかもさぁ、今日ほとんどの女子が僕のこと避けてた気がするんだよね」


 二人きりの放課後の教室で森永が嘆く。ちなみに昨日彼に土下座をされた麦千代子ちゃんは、今日腹痛で学校を休んだ。本当に腹痛であることを祈るばかりである。


「じゃあ守永、僕もう行くね」

「い、伊藤君は今日、チョコ貰えたの?」

「いや、まだゼロ個だけど……僕のバレンタインは、これからだよ」


 僕はそう意味深な言葉を残し、軽やかに教室を出ていった。



 下駄箱で靴を履き替え、そのまま外に出る。

 体育館の角を曲がり、誰もいない体育館裏にまで来た。


 ……そしてそこを通って裏から高校の敷地外へ出て、いつもの帰り道を歩く。


 数段の階段を上り、ホームで立ち止まると丁度良く、電車到着のアナウンスが流れ始めた——

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