第七話 空を読む才
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わずか数分飛んだだけで、アーリアルのレーダーには、マルチマイルの空を舞う複数のシヴァ機の姿が映った。
「ザックス、突っ切る!」
「そうとも。
レーダーに映る敵の挙動から、先ほどのように
その読みは当たっていた。五機一組の戦闘機が四隊ほど、先ほどの味方全滅の報を受けたのだろう、慌ただしく飛んでいた。
「慌ててる……。そんな気持ちを晒しながら飛んでいる……」
どうしてか、一抹の寂しさがアーリアルの胸によぎった。それを振り払い、ワーズワースの五機の
ほどなく前方に、ワーズワースと変わらない規模の小国、カフィニッシュの基地が見えてくる。既に、合流を打診する通信はキーフォルスから届いているはずだった。
ザクセンの通信が各機に入る。
「アーリー、見て。カフィニッシュはもう出撃準備ができているね」
カフィニッシュから、十機ほどの旧型の
カフィニッシュからの通信が、二機のレグルスに入った。
「こちらはカフィニッシュ第二飛行部隊、トーキン少佐です。援軍に感謝します」
通信をやり取りしながら旋回したワーズワース機は、カフィニッシュ軍を加えてUターンした。
再びマルチマイル空中回廊へ戻ると、ちょうど後発のB隊とシヴァ軍が接触するところだった。どうやら急遽動員したらしい敵の
アーリアルが地上をあらためたが、キーフォルスの乗るトレーラーはまだ到着しておらず、代わりに遠距離通信を送ってきた。
「レーダーで会敵を確認した。挟撃の好機である。撃て!」
A隊とカフィニッシュの連合部隊は、B隊と同士討ちにならないよう角度をずらしながら、またもシヴァ軍を挟撃の餌食にした。
そのため、二十機もいるシヴァの戦闘機群は一旦その場を離脱し、射程圏内に改めてワーズワース軍を収めてから射撃せざるを得なかった。だが遠目からの攻撃では、
それを承知しているアーリアルたちは、まずシヴァの
四機のシヴァの
「行く! 水平射三連!」
アーリアルの
四倍近い兵力差を前にして、シヴァの残機には元々勝ち目はなかったが、ザクセンの放ったビームが容赦なく、更に一機を撃墜する。
残った二機が前後からの集中攻撃を受け、瞬く間に火を噴いて散った。
残るは戦闘機の二十。
逃げられた方がアーリアルたちにとっては厄介だったが、この敵は全員が戦意を喪失せずに向かってきた。だが、機銃とミサイルによるその攻撃はやはり、
「ザックス、ミサイルで、今度は当てる! ここで壊滅させる!」
「了解、アーリー!」
アーリアルとザクセンが、敵機とすれ違いざまにミサイルマーカーを放ち、それぞれが四機ずつに的確に命中させた。マーカーは全長五十センチほどの円錐状の機械で、それ自体攻撃力を持たず射程も短いが、ミサイルよりも追尾性能が高く、強力な磁力で敵機体に張りつく。そしてマーカーを追うようインプットしたマイクロミサイルを放つと、ほとんど振り切られることなくマーカーの貼りついた敵機に命中する。
マーカーなしでは、ロックオンした敵に対してでもミサイルの追尾性能には限界があるため、確実に当てるためにこれを愛用するパイロットは多い。
アーリアルたちも、適当に間合いを計りながらマイクロミサイルを四発ずつ放った。
まるで見えない糸に引かれるように、ミサイルが戦闘機八機を撃墜した。
アーリアルは、
「全部当たった……これで普通なのか?」
と一人ごちる。
レグルス二機のミサイルの残弾はゼロになったが、これで一気に、敵は十二機に減った。
それと同時進行で、ワーズワースの
同じ戦闘機でも、
そこへ、レグルスをはじめとした人型の機体が援護射撃をして、さらに優位性を積み上げていく。
マルチマイルの空は、間断なく弾けるシヴァ機の爆煙に彩られた。
やがてキーフォルスが陸路で到着した時、アーリアルからの、
「終わりました。カフィニッシュに入ります」
という通信が、落ち着いた声で告げられた。
「ああ。よくやった。敵基地からの増援の気配もない。カフィニッシュで態勢を整えて、本格的にこの空域を奪取するぞ」
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