第110話 『バードストライク』Ⅳ


ーー無限の空駆る破滅の竜よ


  大翼に生ある者の嘆きを乗せて


  その陰を踏まば明日は無い


  眼下に聳える我らが命は


  天空に座す王の餌


  天蓋の如きその大翼は


  星の海すら飛び泳ぐ


  魔の頂きに立つ鳥翼うよくの竜王


  汝の名は………


  〜〜亡メトロナス王国詩篇一節より

         王女バロアナの遺詩


















ーーiiiiiiiiiiiiyaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!



空気が引き裂かれるような、腹の底から怖気が体中に広がる絶叫にすら聞こえる咆哮が広大なジュッカロ魔棲帯に響き渡る


全ての音が、消え失せた


あれ程騒々しく雄叫びを上げる魔物達すら、その咆哮を聞き音を発するのを止めたのだ


生物の発する声音ではあり得ないと断言できる、悍ましいその音は崩壊し天を突き上げられて舞った漆黒のピラミッドがある場所から…まるで地獄の鐘の音のように聞こえてきた


巨大な穴から、ピラミッドの残骸を掻き分けて現れる…その巨体


忌々しい己を封じていた瓦礫を踏み潰すように掛けられた…巨大で鋭利な猛禽を思わせる三叉の反対に一本の鉤爪を持つ黄土色のあしゆび、それが2対の計4本が巨体を支える


胴体は鶏のように純白、だが鳥にしては妙に胴体が長く鳥の趾が獣のように4本で支えなければ断つことは不可能とすら見える威容。全長だけでもその大きさは尾長含め150mはある…その全てが艶めいた白色の羽で覆われ、何よりもその翼


広げれば銀色に見え翼の中心に行く程に虹のように様々な色に光の加減で見える美しさ、その翼が二対四枚。恐るべきはその翼長、広げた姿は巨体をさらに巨大に見せ太陽の光で七色に輝かせる


嘴はまるで鴉、光沢のある黄色く分厚い嘴はあまりにも鋭利で先端は刃物の先端を思わせる



「っ……は、ぁっ…はぁっ……っく…っ……っ!!」


「あ………ぁ………な、ん………っ……」


「ん……ぅぅぅ…………!!!」



ペトラはあまりの威容、威圧、足元が崩れ去るような絶望感に呼吸の仕方を忘れ胸を握るように抑え込んだ


シオンは呆然と巨躯を見上げ、体全体を包む狂気の魔力に自分がなんて小さな存在なのかと体を震えさせる


マウラは響く悍ましい咆哮から伝わる残虐な本性と鼓膜を突き破るような声に猫耳を抑え込んでしゃがみ込む


その姿を目にし、開放の雄叫びを聞いただけでそれまで胸の中に灯る炎が嵐の日の蝋燭のように吹き消されるのを感じ取ってしまった


今まで、上位とされるような魔物を多数刈り取ってきた…戦い方を工夫し、生態を調べ、有効打を突き詰め、様々な魔物を殺してきた


中には白金級、金剛級にさしかかる魔物もいただろう


だが


これは違う


魔物とか、そういう話ではない



(い、きが…できん…っ!怖い怖い怖いっ……ふ、震えが止まらないっ…わ、我はこんなに…小さかったのか…?我が何をどうしたって、こんな化物…に、逃げることすら……)


(あれは、ダメです…ここで死ぬ…私達はここであの怪物に殺される…そのっ……!無理です、あんな…生き物としての次元が……)


(ふぅ……ふぅ………う、動けない…っ。…動くのが、こわいっ……何も、しちゃだめ…っ…あれに……殺される…っ…!)



強くなったつもりだった。カナタの戦いに、何かの力になれると思っていた


あの別次元の戦いを見せる三魔将と相対した時ですら、ここまでの絶望は到来していない


意気込んで膨らませた心が、萎んでしまった


目の前に先程まで相対していた敵が居ることすら、もはや木にしていられない…あの怪物から、意識を外すことが出来ない



「目覚めたか、グラニアス!だが…なぜ飛ばない?妙だな…。…あぁそうか、こいつら…グラニアスの気に充てられたか」


「初めて見たんでしょ?ま、無理ないよねー。で、どうする?この子達…連れてくんだっけ?」


「封印に力を奪われてたから、仕方ないわよ。あ、ちゃんとジンドーへの人質よ。自分の手で制圧出来なかったのは悔しいけど…でも、勝てればそれでいいわよね」



戦っていたはずの相手の言葉すらも、遠くから聞こえてくるかのようで…そこに返事をする余裕すらない


あの巨大で怖ろしい猛禽類のような鋭い眼光がこちらを見ている…奴の視界に自分達が写っている、それだけで怖くて身動きが出来ない


まるで心臓をあの爪で掴まれ嘴で啄かれているかのような気分に…吐き気すら感じてくるのだ



「そうだな。脚の腱を切っておけば十分だろう」


「悪いねー。痛いと思うけど、死にはしないからさ」



それすらも、他人事のように聞こえてしまう


この恐怖からすれば、目の前の相手に害される事などまだマシだと…思ってしまう程に


彼らが近づいてくるのをただ、感じ取ることしか出来ない


この敗北に絶望と屈辱を感じながらも、生きていられるのだろうかという恐怖が心の中で左右に分かれている…どうなってしまう?死ぬ?生きる?カナタは?


自分達はどうなってしまうの………ーー




















「だーめっ、ですわ」












「っ、避けて二人共っ!!」




「「ッッ!!?」」




後方から叫ぶキュリアの声とともに、ゼウルとバウロの視界にスローモーションにも感じる勢いで迫る……金色


まるで城壁が丸ごとスライドして移動してきたかのような非常識なスケールの黄金色に輝く美しいクリスタルを繋ぎ合わせたような透明感の巨壁が


地面を何mもこそぎ削りながら真横に薙ぎ払うようにフルスイングされたのである


避けるも何も、避けるスペースが存在しない圧倒的なサイズの質量攻撃


それがゼウルとバウロをホームランボールのように弾き飛ばしたのだ


目を見開く、その声とあまりにも特徴的な魔法を目にして




わたくしの可愛い妹分に、あまり酷い真似はしないでいただけます?傷物にしてしまうと…後が怖くてよ?」




いつの間に、シオン、マウラ、ペトラの後に彼女は居た


純白に黄金の意匠が施されたローブ姿、その下にはかの聖女教会における頂点、大聖女にのみ身に付ける事を許された法衣を身に纏う


手にした黒銀の錫杖をゆるりと振りながら、ボリュームのある黄金の髪を乾いた風に靡かせて


柔らかな笑みを絶やすこと無く、身の毛もよだつ魔力とプレッシャーの中で飄々と、余裕を見せる自然体



「ら、ラウラ…クリューセル……!何故ここに…ゆ、勇者とは仲違いしてた筈じゃ…」


「あら、随分と話が古いですわねぇ。私、勇者ジンドーとはとっても仲良しでしてよ?そう……寝所を共にして熱い夜を重ねる程度には、ね」


「あんたらそういう関係なの!?聞いてないわよ!?」


「なら知っておきなさいな。それはもう激しく体を重ね、愛を囁き合う関係ですのよ?」


「えぇぇっ!?変態!エッチ!淫乱聖女!」


「失礼ですわね、命を繋ぐ営みは悪ではありませんのよ?無闇矢鱈で邪な姦淫は罪でも、行為そのものは素晴らしい物だと思いますけれど」



こてん、と首を傾げてカオを赤くしながら指を指してくるキュリアに……大聖女ラウラ・クリューセルはこの状況にも関わらず悠然と言い放つ


だが、羞恥心で顔を赤くするキュリアではあったがその脳裏では突然の乱入者に混乱していた


それは想像していなかった、恐らくはアルスガルドの人類の中でも最も出会ってはならない部類の者の一人であるからだ



(ラウラ・クリューセルっ…勇者ジンドーと共にディンダレシア様を討ち滅ぼした聖女…!治癒と、あとは結界を操る魔法って聞いてたのに今のは何っ!?それにグラニアスのプレッシャーの魔力の中で何でこんなに余裕にしてるのよ…!?)



一気に、雲行きが変わってしまった


それ程までに、目の前の女は未知数の力を持っていると判断したのだ


長年、聖女というのは必ず勇者にくっついてくる回復役の腰巾着のようなもの。戦闘力は持たず、ひたすら治癒や異常回復等のサポートを行う女性であり魔神族の中ではそれ程警戒するに足らないと言われ続けてきた


強力な癒し手ならば、真っ先に殺させば勇者を消すのが簡単になるので順番的には勇者の次点ではあったのだ


ラウラ・クリューセルはまさにこれに当たる


並外れた聖属性魔法と強大な魔力によって様々な傷や病を癒す聖属性の申し子であり、その上で特異魔法すら身に収める天才


勇者ジンドーがまだ貧弱だった頃に殺せなかった理由の半分は彼女の存在こそが占めているのだ


だが、質の悪い事に天は彼女は二物も三物も与えた


戦いのセンス、努力、邁進の強さも持ち合わせていたラウラは自分の戦闘向きではない筈の結界魔法を世界で誰も使ったことがないような使用方法で独自の戦闘術に仕立て上げてしまった



いってぇ…!!今のなんだ!?」


「ぐッ……!ずいぶん遠くまで飛ばされた……!!無事かキュリア!」


「ゼウル君、バウロ君!気を付けてその人!ラウラ・クリューセルよ!」


「ッ…聖女か!まさか増援に来てたとは…勇者の一行は解散したんじゃなかったのか…!」


「うっわすんげぇ美人!?なにあの人色気がやべぇ!是非知り合いになりたい!てかスタイルぶっ壊れてるって見たことねぇ!す、少しでいいからお話から…!」


「バウロ…」「バウロくん…」



弾き飛ばされた先から急いで戻ってくる2人だが、美女と美少女に目が無いバウロの目が「♡」に変わる!


彼は可愛く美しい女性に目がなかった…!


それを見て溜息がちにがっかりと肩を下げるゼウルとキュリア…もはや見慣れた物である


そんな3人を他所に…ラウラは震え固まるシオン、マウラ、ペトラの前に回り込みその顔を覗き込む。顔色悪く震える3人を、黒銀の、地面に突き刺し、その手で引き込み両腕を広げ…




ぎゅうっ…と自らの大きく豊かに張り出した胸に抱え込むように抱き締めた




「「「っ…」」」


「さぁ、落ち着いて……わたくしの魔力と、体温と、胸の鼓動だけを感じて……他の事は、何もかも気にしないでいいですわ…」




温かいラウラの体温、染み渡る魔力の穏やかな波動、母性の象徴の柔らかさ、優しく強く伝わる心臓の鼓動……3人の頭の中の情報が、心を埋め尽くす真っ黒な怖気が…ラウラ・クリューセルに埋め尽くされていく


不思議なことに、周りの音も気配も、魔力の波動も、あれだけ本能を揺るがしていた押し潰されそうなプレッシャーも、緊張感も…何もかもが撫で抑えられるように消え失せていくのだ



「なんだか知らないが……纏めてジンドーへの鎖になってもらう!バウロ、回り込んで自由を奪ってくれ…!」


「りょーかい!」



そんな無防備な姿を晒すラウラと3人にこれ幸いと動き出すゼウルとバウロ


正面から直進して手にしたグレイブを振りかぶり、突進の勢いをそのままに叩き付ける…絶命はせず、しかし動けない程度の負傷、肩口を狙い腕の一本を斬り落とす為の一撃


地面ごと粉砕して全員纏めて重症に追い込むのには十二分な威力を持ってその怪力で叩き斬る




バ ギ ィ ィ ィ ィ ィ ッ ッ ッ



耳を劈く衝突音と何かを削るような硬質音


クリスタルを繋いだような黄金の結界がその行く手を遮りゼウルの一撃をいとも容易く受け止める



「な、ん…ッ!?チィッ…!舐めるなラウラ・クリューセルッ!!」



その手応えは、まるでなんの力も持たない赤子が居城の壁に手を着いたかのような…あまりにも硬い感覚


驚愕に歪むゼウルの手は、まるで鋼鉄の柱を金属の棒を握り締めて思い切り殴り付けたような反動に襲われ痺れすら感じる程に異常な衝撃が伝わってきていた



「マジ…ッ!?ゼウル、これは…ッ…!」



背後から双剣で強襲したバウロの刃も、激しく輝きながら結界の表面で止まっており、自身の俊足で回り込んだにも関わらず見向きもせずに凄まじい展開速度の結界は彼の刃を完全に弾いていた


目を閉じて、慈愛の笑みを湛えたラウラが愛しい妹分達を大切そうに抱き締めながら………薄く、瞼を開く


その目に宿る光は……近寄った2人に臓器が浮くような怖ろしい緊張を走らせる圧力を秘めていた



「ガァっ!?」


「ぐあァっ!?」



突如、真上から叩き付けるように落下してきた黄金の直方体がゼウルとバウロを押し潰し地面に叩き付け、半ば埋める勢いでプレスしたのだ


強化魔法に力を振り、抵抗するもまるで巨人に押さえつけられたかのようにビクともしない





「…伏しなさい、下郎」





背筋に氷を挿し込まれるような感覚が、凛と放たれる彼女の言葉からひた走る



 

「私の可愛い妹分が、こんなに怯えていますのよ?………少し静かにしていなさい。でないと、このままお二人を……大地の染みにしてしまいそうですわ」




冗談や脅しではない、やろうと思えば今すぐ出来る


それを感じさせる冷たい口調


そんな中、彼女の腕の中で3人が…ぽんぽんと彼女の腕や肩を軽く叩いていた事にラウラ自身も「…あらっ?」と気が付いた


むぎゅむぎゅと彼女達の顔を柔らかく包んでいたラウラの豊満な母性の象徴から「ぷはっ」と顔を離した3人に…怯えの色は消え失せている



「ら、ラウラさん…どうしてここに…っ」


「まぁ、カナタさんから聞いてませんの?ふふっ……まぁ、言ってないですわよねぇ。あの人は少し秘密主義の所がありますし…」


「私達、今っ……ご、ごめんなさい…っ。動けなくなっていました……っ!身体を動かすのが怖くて…それで…っ」


「分かっていますわ。四魔龍の魔圧に最初から耐えれる方はそうそう居ませんもの。でも…今はどうかしら?」


「ん……あれ…?……あんまり気にならない……?」


「ふふっ、でしょう?気付いてしまえばただの魔力の波動…。でも、これを何も知らずに浴びせられてしまうと自分の魔力が押し込められて四魔龍の魔力が肉体や精神に染みてしまう…強い魔力がある方や、体外に魔力を纏うように維持できるならば問題はありませんわ」


「魔力を……体の外に纏う…?あ、あまり聞いたことが無いが…」


「放出するのではなく、鎧のように固めて身に纏うイメージですの。これを常時無意識に出来ている者に、精神干渉や異常系の不意打ちはそうそう効きませんわよ。相手の魔力を纏う魔力で押し返していれば、自分への魔法の侵入を防げますもの」



事も無げに言うラウラだが、その理屈は理解できてもやり方等は簡単な技術ではない


3人が今もそれを出来ている訳ではないのにグラニアスの魔力による圧…魔圧が効いていないのはひとえにラウラのお陰だった


抱き締め、己の体温や鼓動、感触で彼女達の感覚や心を落ち着けながらグラニアスの魔力にひたされた3人の体に自分の魔力をゆっくりと染み渡らせ、グラニアスの魔力を追い返す


黄金の魔力で身体の内からしっかりと満たし、体の外まで覆ってあげるように強く柔らかく、3人に自分の魔力をじっくり分け与えたのだ


だが、それがどれ程緻密な魔力操作の技術で行われているのかを、3人はまだこの場で知ることはなく…そしてラウラ自身はこれをことに、気付くことはなかった




「さぁ、3人共…まだ戦えますわね?」


「「「っ…」」」



悪戯な笑みと共に問われると三人は目を見開いた


不甲斐無く、かの龍が封印から放たれただけで怯え竦んだ自分達に変わってあの3人を下しに来たのかと…そう思っていたのだ


だが、そんな彼女達の心情を察してのことなのかラウラの眼差しは、すっ、と鋭く変わりその方向へと向けられる



わたくしは行かなければなりません。私の戦場…私の勇者の元へ。三魔将2人に加わりグラニアスが解き放たれたのならば尚更…ですからーー」



その視線を戻して柔らかく微笑み、ちょっとだけからかうようなイタズラっぽい笑顔を浮かべて3人を改めて抱き締めながら


確固たる信頼をもって囁やく




「ーーここは、頼みましたわよ?」



「「「はいっ!」」」




勢いよく応える


その信頼と、あの烈火の如き戦場へ向かう彼女の背中を守る為に


ラウラが指をパチンッ、と鳴らせばゼウルとバウロを抑え込んでいた結界が一瞬にして掻き消え、自分達を囲んでいた結界でもって、まるでゴルフボールのようにキュリアの方向へと弾き飛ばす


再び、その距離が開いた


ラウラが己の愛杖シャングリラを地面から引き抜き、歩み去る




その背中を




「ラウラ・クリューセルッ!貴様ァ!」



「行かせる訳には行かないっしょ…ッ!」



「もうっ…!こんなに強いなんて聞いてないわ…っ!」



3人の魔神族が狙い、動き出す


動けなかった少女達を無視して、あのグラニアスの元へ彼女を行かせない為に…


近くで見ていたゼウル達は、ラウラが戦う際に強化魔法の類を一切使用していないのを見ていた。恐らくは……使えない、近接戦は出来ないのだろう


その体を抑えつければ終わり


その背中を狙うゼウルの視界の真横から…真紅の影が瞬間、割り込んできた。いや…それよりも遥かに勢い良く視界に迫るその鉄拳が


ゼウルの顎を真横から撃ち抜いた



「ごアッッ!?」





それよりも速く前に躍り出たバウロがいち早くラウラの首へ後ろから手を伸ばし掴み取ろうと、視認不能な速さで彼女の真後ろに現れる


見てすらいない…大聖女の無防備な後ろ姿


手を伸ばす


その横腹を…瑠璃色の稲妻が瞬いた



「グぇッ…!?」



地面に手をついて、逆立ちのまま体を回転させた強烈な回し蹴りがバウロの体を真横から薙ぎ払った





衝刃ブレイクエッジッ!ファイアっ!」



杖を向けてキュリアが魔法を放つ


鋭利な魔力の刃を飛ばす魔法は単純ながら人の脚程度は簡単に切り落とせる


ラウラの後ろから足首に向けて、歩く力を奪い取る為の一撃…それは



「……鎌鼬ソニックブレイド


「きゃあッ!?」



瞬時に放たれた更に大きな新緑色の風刃が、その刃を丸ごと飲み込み避ける間防ぐ暇も無い速さでキュリアの頬に一線の切り傷を刻んだ


ラウラの背後を狙う3人の奇襲は全てが、それよりも速く行われた攻撃により跳ね返されたのだ


しかし、当のラウラは無防備に…振り向くこと無く歩き去る


その顔に…穏やかな笑みを浮かべながら






「任せましたわ、3人とも」






ーーー





巨大、凶悪、最悪の生命体…四魔龍


その一角の出現に対し、彼の反応は冷ややかだった



『……出たな、害鳥』



金眼のバイザー越しにその姿を見ながら冷たく呟くカナタはアマテラスに向けて計画を「フェーズファイブ」に移行する事を伝える


ここからが本番…フェーズⅠ戦場造りフェーズⅡ防衛線構築フェーズⅢ迎撃開始フェーズⅣ魔将迎撃を経て遂にカナタのプラン『バードストライク』はフェーズⅤ魔鳥龍殲滅へと移行する


周辺の魔物の掃討は順調に進んでいた


カナタが今回の作戦に選び、自ら率いる軍勢として選んだ魔導兵器3機種はどれもが蠍型、超近接戦闘機型、対地対空砲撃型の中でもハイエンドモデル…つまるところ同型の中で最も性能が高い物を引き連れている


高々数千や万程度の魔物に負けはしない


だが、何せ数が多いのだ


無数に上空から転移させられてくる魔物と地中を移動してくる魔物は殺した端から数が追加されていき軍と軍の衝突は圧倒的性能と圧倒的物量による完全な膠着状態に陥っていた



ーーいや、それはいい。雑魚は抑え込めてる証拠だ。横槍が入らないだけでも効果は十分にあった。だが、ここからは…



『全機散開。封印から距離を取れ。ここから先は質より数で押す…アマテラス!』


『了解しました、マスター。ブルーバード、グリーンスパロー群隊、全機突入開始します』



魔物達が転移してくるよりも遥か上空から、それらは直角に落下するようにしてジュッカロ魔棲帯へと突入してきた


まるでダイヤのような菱形のボディに、その両脇に小さな菱形が連結されたような異形の魔導兵器…それらが文字通り、空を埋め尽くすような数が降下してくる


大きくはない、恐らくは2mに届くか届かないかという小型機…しかし数が尋常ではなかった


まるで空中の洪水、川の流れにすら見える程の数が高速で飛翔しているのだ


それが…封印の残骸の上に立つグラニアスを取り囲むように渦巻き、包囲しながらその機首を中心のグラニアスに向け…



無数の雷弾をすべての機体がマシンガンのように乱射し始めた


黄色の稲妻が走る光弾を巨躯の怪鳥に向けて浴びせ、周辺にフラッシュを連続で焚いたかのような発光が撒き散らされる


バチバチバチッ、と迸る稲妻と雷撃が弾ける閃光、巻き込まれる有翼の魔物はその射線に出た瞬間にあまりの射撃量によって瞬間蜂の巣にされ焼き尽くされて墜落する中程の火力


それが一点に向けられる威力は想像に難くない



それを受けたグラニアスは…鬱陶しいと言わんばかりに翼を広げてすべての攻撃を受け止める


放たれる一撃が…その怪物の羽根の羽毛を焦がす事すら出来ない


ガパリ、と嘴を開いたグラニアスの口内に闇色の魔力が渦巻くように収束したのは一瞬の事だった


まるでウォーターカッターのようなレーザービームとしか言いようがないブレスが取り囲む兵器群の一部に突き刺さり、その衝撃の余波だけで周辺にいた機体全てが爆散したのだ


そして、梟やミミズクのように首だけを真後ろに向ける程回転させながら自分の周囲を円形に薙ぎ払い…取り巻く兵器の大部分を一薙のブレスで粉微塵に爆散させていく


空から次々と降下していき攻撃を加える兵器群に対し、レーザーブレスは凄まじい攻撃範囲によってこれを爆砕…一薙だけで数千の魔導兵器群を粉微塵に破壊していく


だが、破壊された端から次々に追加されていく機体はカナタがとにかく打撃と量産性を高めて創ったものである。耐久性もそこそこ、機動性もそこそこ…だが数は凄まじいのが特徴


グラニアスの苛ついた喉を鳴らす音が鳴る


打撃力は自身の羽根を通らない程度だが、その鬱陶しさはかなりの物らしく度々ブレスを放ってはその数を減らしていく


それを見ながら…『さて…』とカナタは呟いた



『あいつの始末には手間がかかるんだ…少し、急がせてもらおうかーー』



上空にブースターで滞空しながら、その2人が居る場所を見下ろす


大地は粉々に砕け、所々にクレーターと大地の亀裂が点在し、煙と炎が周囲を埋め尽くす地獄のような光景と化したその場所に立つ2人…擦り傷程度の軽症を負いながらもその脚で立つギデオンとレイシアスは険しい表情を浮かべる



「…ここまで鍛えてもまだ届かないか。まったく……いつ以来だ、我々が揃ってここまで苦戦するなんて、な」


「どうだったかしら…私、苦戦ってしたこと無いから不思議な気分よ。それにしても……強すぎじゃないかしら、彼。私も結構強くなれてると思ったのだけど」


「準備が必要だったとは言えは、3年は時間をかけ過ぎたか…。奴の能力は時間があればあるほど力を増す…研究者と同じだ。時間を与えれば与える程により強く、より利便性を増し、さらなる機能を作り出す」


「私達からすれば、大分急いで3年だったのだけど……彼にとっては十分過ぎる程に時間があったのね。確かに、魔法研究も時間をかければより優れた魔法が出来上がるもの」


「あぁ。奴はその究極点と言える存在だろうな。丸3年…全ての時間を費やせたジンドーは文字通り……ーー」









『ーー終わらせよう。あの害鳥に殺された、かつての勇者21人全ての仇を…ここで討つ』






漆黒の鎧の背面の空間が歪む…幾つもの機械的パーツや兵器がその空間から現れ、その鎧へ金属音と共に、まるで元から一つだったかのように繋がれていく…


四角形二連装の砲身を持つ高圧魔法素粒子炎撃砲『ガーネット』、右背面ジョイントに接続ーー完了


極短い三角形砲身を4つ纏めたガトリング状の無砲身四連装雷針速射砲『カルセドニー』、左背面から肩部へのマウント接続ーー完了


右腕…高振動波硬質ブレード『イガリマー』、直射熱線砲『オニキス』内蔵追加装甲装着ーー完了


左腕…魔法霧散硬質ブレード『シルシャガナ』、螺旋風弾速射砲『フロライト』内蔵追加装甲装着ーー完了


右脚、左脚…小さな菱形が太腿外側に並ぶ誘導型魔法弾発射機構『ジャスパー』内蔵追加装甲装着ーー完了


胸部…高出力魔法素粒子防壁『魔障領域エーテリック・フィールド』展開機構追加装甲装着ーー完了



全ての兵器と追加の装甲、機能を漆黒の鎧に装着、接続したカナタから…身が震えるほどの魔力が溢れ出す


グラニアスが放つ魔圧が揺らぎ掻き消える程の膨大かつ異次元的な魔力の波動は周辺の魔物がそれだけでパニックに陥り、金剛級に及ばない魔物の半数はその恐怖に失神…グラニアスは怨敵の悍ましい魔力の波動に威嚇の声を鳴き上げ


放たれる魔力の波動は周辺の土砂を吹き飛ばし、地鳴りのような音と振動を伝播させ、漆黒と紫が入り交じる魔力の色は太陽の光すらも半ば遮り周囲の空間を薄暗く変色させる…


その黒と紫の波動の中心に座すその男を見上げて、ギデオンは言った





「ーー勇者怪物そのものだ。さぁ、奴を止めるぞレイシアス…あれが到着するまでは!」



「そうね。気張りましょ、ギデオン!ここからが本番だもの!」





ギデオンが空に向けて跳び出した。足元に展開される魔法陣を蹴りながら飛翔し、温存していた魔力と技を開放する


魔神族の強靭な肉体、そこに加え魔将ともなる強大な身体能力と膨大な魔力、長い年月を掛けて培った技術と経験は瞬時に凄まじい力を発揮し、振るった白銀の剣は容易く山を両断する


だが、それを正面から右腕の追加装甲から伸びるブレードで受け止めたカナタが左腕のブレードをギデオンへと横薙ぎに振るうが、瞬時に引き戻す白銀の剣がこれを弾く


その間、瞬き一回の半分以下


ギデオンの剣が、消える…


いや、消えるように見える速度で乱舞が始まり漆黒の鎧をバラバラの微塵切りにかかるが…これを両腕のブレードを高速で振り回して弾き返す


弾け跳ぶ金属が打つかる火花と魔力の光が爆ぜ、カナタのブースターが火を噴き瞬間的に移動した先へギデオンが魔法陣を踏み込み一瞬で距離を詰める


だが、これにカナタの左肩にショルダーマウントしているガトリング『カルセドニー』が火を…いや、稲妻の長針を噴いた



バラララララララララララララララララララッ



凄まじい連射速度で黄色い雷針がギデオン目掛けて乱射され、すぐさま仰け反りつつ真上に展開した魔法陣を踏んで真下に飛び込み回避するギデオンに向けて右腕を突き出し、上腕の装甲が展開して迫り出した砲口、『オニキス』から赤熱した熱線が放たれる


空中で回避姿勢のギデオンにこれを避ける術は無い…だが、地上からのレイシアスから放たれた闇色の光線がこれを斜めから直撃させて拮抗、ギデオンの地上着地への時間を稼いだ



『邪魔を……ッ』



熱線他の『オニキス』を引き、その場でぐっ、と構えたカナタの両脚部に装着された追加アーマーの一部がガパッ、と開き黒紫の魔法弾が「ボボボボボボムッ」と放たれ光の尾を引きながら地上のレイシアスへと急速に方向を変えて誘導を始め、殺到


そこから背面に装備された大型砲『ガーネット』が左肩上にスライド移動して砲身部をショルダーマウント。白くエネルギーが砲口部に集中し、大型のレーザービームを容赦なく撃ち放つ



断骸ダンガイ、魔断ッ!」


「刎ね閉じよ、断絶の光!拡閃砲ディヒュージョナルレイザーっ!」



しかし、正面から放たれたレーザービーム『ガーネット』をギデオンが正面に構えた白銀の剣で真っ二つに切り裂くようにして両断。2つに別れたレーザーが後方で大爆発を引き起こす…


さらに、多方向から迫る誘導魔法弾をレイシアスが放ったミラーボールのような魔法陣から放たれる拡散する光線が蜘蛛の糸のように放たれ、これを全て叩き落とした


レーザーに射抜かれた誘導魔法弾が全て爆散し、上空を紅蓮に染める中…


その爆炎を引き裂いてブースターを噴かせて弾丸の如く飛び込む漆黒の鎧がギデオンとレイシアスに迫る



「チッ……結界と付与を頼む!迎え撃つ!」


「えぇ!」



レイシアスが即座に発動させた個人防御用の結界に、筋力、威力、魔法攻撃等の様々な強化を付与させるバフがギデオンに注ぎ込まれていき、魔力の光を体に宿らせたギデオンが白銀の剣を上段に構える


衝突は一瞬で起きる


レイシアスが即座に放った何発もの光線系魔法は、カナタの鎧を覆う強靭な魔障領域エーテリオン・フィールドに阻まれて青白い光に遮られながら跳ね返されるように四方へ拡散…その勢いを止めることも躊躇わせることすら叶わず


カナタが構えた右の鉄拳は膨大な魔力を宿し、背中から噴き出すブースターと、右腕の肘の装甲パーツが展開して現れたロケットブースターによる尋常ならざる加速と勢いを付けて打ち込まれた


対して、ギデオンは上段に構えた剣を両腕で青筋が浮かぶほどに強く構え、身に宿る付与され力と己の強化とパワー、そして発動させた魔法に大量の魔力を注ぎ込んで真上から振り下ろされる



鉄拳と剣が……




破壊拳はかいけんッ!!』



断骸ダンガイ…天墜ィッ!!」




激突した



世界から音が掻き消える



あまりの破壊力の衝突に大地を大規模なクレーターを作るようにして陥没し、上空に疎らに散っていた雲は真上から四方八方に爆散する


そこから発生した衝撃波によって空を舞う魔物や、カナタが送り込んだグラニアスを囲む兵器群ですら煽られて姿勢を崩し、グラニアスは自身を脅かしかねないあまりの威力の衝突に翼を広げて警戒の声を上げた


地上の魔物はボールのように吹き飛び、カナタの地上兵器ですらその数トンはくだらない重量と身に覆う魔障領域エーテリオン・フィールドによってようやく転倒せず、ズリズリと押される程度に留まる程


彼らの弟子達すらも、姿勢を下げて手で大地を掴まなければ体が飛ばされかねない物だった



全てが通り過ぎた後…破壊し尽くされたその中心地に事も無げに立つ漆黒の鎧と白銀の剣を携えた男が相対していた


その後ろに杖を正面に向けたレイシアスも、しっかりと両足で立ち、わずかに息を早くしているのみ



『強いな…本当に、よく今までこの世界が無事だったもんだ』


「…勇者、なんて者が居なければとっくに手に入れていたとも。そう、いつだって我々の行く手を阻むのは…勇者だ」


『それはどうも。皆命を懸けて戦ってきた甲斐があるな。だが、それもこれまで…俺の代で、全ての戦いを終わらせる。二度と勇者は必要にならない』


「だからこそだ。貴様という壁さえ乗り越えたなら、もはや我々を止められる存在は居ない。勇者召喚魔法陣は既に貴様の手によって破壊されている…今度は時間稼ぎすら出来ん」


「次世代はもう育ってきているわ…けれど、貴方という怪物をあの子達に残しておく訳にはいかないもの。刺し違えてでも、貴方の……勇者の時代を終わらせるわ」



ギデオンとレイシアスの言葉は、悲壮では無く強く高い覚悟が込められている…カナタにはそれが十分に感じ取れた


ナチュラルに自分の事を怪物扱いされているのに苦笑しながらも、…とある言葉を呟いた。それも、「ピッ、ピッ」と機械音の後に変声機能を使った……女性の声によって



『「…ここで私が倒れたら、またあなた達は次の勇者も、その次の勇者も殺してしまうでしょ?だから、負ける訳にはいかないの。私がここで死んででも、あなただけでも倒して見せる」』


「っ…貴様、それを…何故…!!?」



ギデオンが目を見開いた


その言葉に…いや、声そのものに聞き覚えがあったかのように


それ程までに今の言葉には…身に覚えがあった



『100代目勇者……破壊の勇者、霊堂雫の言葉だ。彼女は俺が現れる6年前までこう呼ばれていたそうだな…「歴代最強の勇者だ」と。しかし殺された…魔神族最強の3人の1人、「絶剣」の名を関する男…エズディアル・ギデオンの手によってな』


「なぜその言葉を…いや、その声を貴様が知っているジンドーッ!あの時、彼女と相対していたのはこの俺だけだった筈……!」


『聞いたんだ、本人にな。別にそれに関して「よくも…」と言う気はない。聞けば、邪魔立てナシの一騎打ちで破ったそうだな。その後も、随分と丁重に遺体を人類に送り返したと聞いてる…本人も、そこに恨み辛みは無いそうだ』


「本人、だと…?」


『俺が言いたいのは、だ。…今のお前達と、今までの俺達勇者は同じだって事だ。後ろに続く同胞に強敵と脅威を残すまいと命を盾にして戦い…最大の壁となる魔神族の将に打ち破られる。その繰り返し…繰り返し…繰り返し続けて120回目だ。さぁ、今なら俺達勇者達の気持ちが分かるだろう?』



混乱するギデオンだが、その背中をレイシアスに触れられて落ち着きを取り戻す


そう…今まで続けられていた立場が、くるりと反転しただけなのだ…カナタをそう言っていた


ーー最大の障害に命懸けで挑む…後進の為に少しでも道を開くべく


これまでの勇者と、今の魔神族…その状況は全く同じ事。一つ違うのは…方や119回の死と敗北を積み重ね、方や何百年もの間も敗北はなかった…それだけの事なのだ、と



『俺か魔神の死…それを無くしては、この戦いは終わらなかった。その先駆け…まずはあの害鳥を駆除する。本当に…お前達が性根の腐ったクズじゃないのが残念だ。でなければ、心置きなく…殺しにいけたのにな』



意味深なカナタの言葉…それと同時と言えるタイミングで上空に影が差す


そう…待っていたのは彼らだけではなくカナタも同じ


それは12機の編隊を組んで上空を大きく旋回する…まるで巨大なブーメランにしか見えない大型航空兵器


全幅は50mにも到達するそれは、カナタがグラニアス殲滅の為に創った専用兵器の一つ…空の王者を消し去るための嵐の目


その名を『ストームライダー』


それが今、ジュッカロ魔棲帯の空に到着した


4枚の大翼を広げ羽ばたかせた天空の支配者は、空に現れた闖入者を高まる魔力と共に見上げ、咆哮する


今、己の上を陣取る影を落とすべく…グラニアスは飛翔を開始した








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【Database】



『ラウラ・クリューセル』



〘種族〙人族ヒューマン(熾天還り)



〘年齢〙19



〘魔法名〙慈母抱擁アマティエル(基本属性・聖)



〘魔力りrrrrrrryyy・・・ERROR・・・



〘職業〙大聖女



〘身体〙172cm B98 W58 H92



〘来歴〙

ラヴァン王国を代表する一大貴族。四公爵家の一角に座し、建国前から後にラヴァン王国初代国王となる男を支え、建国に大いなる貢献をしたクリューセル家の長女。

代々光属性や聖属性魔法の使い手を輩出する家系であり、特徴はその黄金のように輝く黄金色の髪。純粋な人族ヒューマンの家系ではあるが、その実は遥か昔に女神と人が交信をしていた時代にその使者であり女神の子である天使と交わった者の末裔である。

光属性や聖属性持ちがやたらと多く産まれてくるのはこれが理由であり、クリューセル家の中には言わば星の女神の血が流れている。

これはクリューセル家門外不出の秘密であるが、ラウラはまさに天使の生まれ変わりとも言える女性となった。知見に富み、美しく妖艶な容姿に穏やかな気風と高貴な佇まいを自然体で醸し、豪快な決断すらも容易く下す豪胆さを併せ持つ。

何よりも特出したのが魔法の才能である。

聖属性魔法を持って産まれ、母から産まれた直後には産声と共に発した癒しの魔力が疲弊した母を肥立ちもかくやと言う程まで癒やした程。

お風呂が大好きであり、クリューセル家の屋敷や別邸には必ず大型の浴室が設けられているのはラウラの趣味である。

さらには密かに王都や街の宿屋に宿泊しに行き、そこの風呂や温泉を巡ることもしばしば。本人は秘密で騒ぎにならないように気を付けているのだが、浴室で見かけられればその美貌や体付きで一発でバレてしまうのが悩みとか。

酒精を嗜むのも好きであり、特にワインや果実酒には目が無い。酩酊すらも楽しめる質であり、記憶を失ったり奇行で失敗するような真似はせず、寧ろ酔っ払った風でしっかり意識を保ったまま来るので酒飲みからすれば厄介。何度か貴族の夜会で男貴族から強い酒精を飲ませられて酔っ払ったところを介抱と称して既成事実を作ろうとしてきた事もあったのだが、出された酒精を全て飲み干してお替りまでした上でその悪行を全てを報告するという真似までしており貴族社会に伝説を打ち立てた。

そして、そもそもどれだけ酔おうとも聖属性魔法による異常回復は高めれば酩酊まで回復させられる為、ラウラは酒精に対して無敵の耐性を持っているに等しかったりする。


昔はかなりのヤンチャ少女であり、庭を走り回り泥だらけになり、街の悪ガキを喧嘩で黙らせ、父の酒を勝手に飲み、魔法の練習で家の壁を破壊したりとかなりの問題児でもあった。

一度目線が合うと「なによ!あたしとやんの!?」と言ってガン付けてくる様はまさに小さなギャングであり、幼いながらにイロイロな意味で有名だった。

ちなみに、この話題を出されると「あらあら…」と言いながらその口を塞ぎに来るらしい。曰く「死んでいなければ大丈夫ですわ。ですから……ね?」らしい。命が惜しいならば口にしない事だ。



〘大聖女〙

ラウラ・クリューセルが関する称号である「大聖女」は世に広くある聖女教会の中でも特別な物である。

元より特級聖女が全ての聖女の上に立つ存在だったのだが、あまりにも特出した聖女が現れた際にその枠に当て嵌められない程の力があると渾名される「通称」だったのが始まり。

そこから特出した力を持つ者に「大聖女」の名を与え、全ての聖女の頂点とした。歴史長き教会と言えども、正式に「大聖女」を任命したのは後にも先にも6名のみであり、その6人目こそがラウラである。

その聖属性魔法は群を抜いて凄まじい力を持ち、彼女曰く「死んでいなければどうにかなりますわ」とのことで、実際に如何に瀕死の重傷であろうとも指先一つで健康体まで癒やして見せる。

これがどれだけ異常なのかと言えば、教会に数名しか認められていない特級聖女全員が集まってようやくラウラの5割の癒やしを発揮できる程。

挙げ句、あらゆる聖属性魔法に精通しており解呪から異常回復、退魔、守護、防御、退病、解毒と何でもござれ。ずば抜けた魔法センスはこれらの魔法や通常の魔法にも発揮され魔法使いとしても英雄的な能力を持つ。

しかし、そんな彼女も持ち得なかった才能が「強化魔法」なのであった



〘出会い〙

14歳になる年に国王招集によって勇者ジンドー…彼方と出会う。

当時はヤンチャも少し残っており、強気な態度での話しかけをしていたが無言無反応の彼方への心象は悪かった。

挙げ句、戦闘もからっきしでそのへんの魔物に返り討ちにされては回復をさせられるラウラは彼方への評価をどんどんと下げていく。

しかし、ある時を境に凄まじい戦闘能力へと成長を遂げた彼方に置いていかれ始め、ある戦いをきっかけに彼方の胸の内や悲壮な想いを知り、自分だけでも彼の焼き尽くされた心に寄り添えるようにしたいと思うようになる。

そこからは今までしてこなかった必死の努力を続け、己の常識を破壊した立ち回りや魔法に手をかけ、少しでも彼の側にいれるように必死の邁進を続けたがその想いはこの時は届くことはなく。

結果、王国の大将と宰相の企みが彼方の憤怒に火を付け、全ての異世界人を敵と見做した彼方の破壊的魔法を最後に彼とのコンタクトは絶たれていた。

それからも、弛まぬ修練と努力により歴代最高の聖女とすら言われる傑物へと成長を遂げるが、婚姻騒動や会うことの出来ない彼方への想いで気を落とし、勇者祭の最中に街の宿へ気分転換をしに向かった。


そこで、ラウラは運命と出会う事となる



〘戦闘力〙

※・・・現在のアクセスレベルでは情報が開示出来ません。暫くお待ち下さい・・・


〘特異魔法〙

※・・・現在のアクセスレベルでは情報が開示出来ません。暫くお待ち下さい・・・



〘・・・〙

「何が」とは言わないが彼方とする時は正直どんな体位でもバッチコイらしい。と言うか、そもそもクリューセル家の女性は例外なく夜に強くいまだかつて敗北した女は居ないとされている程で、火が付くと性欲自体もかなり強い。これを自覚したことが無かったラウラだが、彼方との逢瀬により覚醒。シオン、マウラ、ペトラを纏めて返り討ちにする彼方と7日間もの間激しく愛し合うという偉業を見せ付けた。ちなみに、他の女性よりもボディラインやらスタイルが特出している自覚はあるようで、初見でそのボリューム満点の胸やら尻やら、靭やかでもむっちりした太腿やら括れた腰元やらにちょっと押され気味だった彼方の耳元で「ぜ〜んぶっ…カナタさんのモノですわよ…?」という殺し文句で彼方の理性を抹消した。

抜かずの最高記録は7回。その胎内にたっぷん、と重たく溜まる彼の生命の種に悶えながらもうっとりし、気が付けば7回も出されて…というか出させていたらしい。

そのスタミナやテクニックは強烈であり、初めての夜には彼方の物をお胸でサンドイッチしてはみ出た部分は美味しくいただいてたとか。

曰く「濃くて多くて何度も出来るのは素敵ですわよね…愛し合えるなら兎に角愛し合う…ええ、素敵な愛の形ですわ。それがどんなにエロティックでマニアックでも……ふふっ、その内私がメイドの装いでご奉仕いたしましょうか。私にさせられるのは…カナタさんだけですわ」とのこと。

欲しい子供の数は男1人以上、女2人以上。お互いに貪り合い、興奮を高め合い食い合うようなどエロエロなのが大好きらしく、彼方に貪られて立てなくなるのも本望だしなんなら「もう無理っ」と言ってからも遠慮なく貪って欲しいとか。



〘一言コメント〙


「一気に奥まで迎えるのが刺激ですわよね。腹の奥まで抉じ開けられて、最も大切な場所に入り込まれていくあの感覚……思い出すだけで胸が高鳴りますわ。特に、出される時は思い切り押し付けるようにして…そうするとカナタさんもぐっ、と押し込んで来ますからより深く、奥の子部屋に種を飲み込むようにする…。あとは独占欲を刺激する言葉を囁くととぉっても情熱的になってくれますのよ?…あら?淫乱聖女ではないか…ですか?まぁ、キュリアさんみたいなことを仰いますのね…「淫」ではありますけれど「乱」では無いと思いますわよ?相手は唯一人ですし、私は別に子を孕むのは大歓迎ですし…。あと、カナタさんのモノは普通の女性相手にはかなり厳しいですわね…私含め本当に相性が良い女性達だから大丈夫ですけれど、普通なら壊れてしまいますわよ?あと、一晩で孕みますわね…量も濃さも回数も、あれをまともに受け止めて子を宿さない女性は不妊の病か子宮が無いかのどちらかですわ。ちなみに、この濃さと量と回数を増やす秘訣は…「ねだる」「煽る」「我慢させる」の3つがポイントですの。これをするだけで……ふふふっ、「ど ぼ っ」っと来ますわっ」



・・・本当に大聖女なのだろうか。怪しいものである。一応付け加えると、ラウラ・クリューセルの相手を1人でしきれる男も彼方1人である。もしで倒したいならオークキングとかゴブリンキングとかの人族の雌との繁殖大好きなつよつよ魔物を連れてこないといけなくなる。






















※一部情報再読み込み中






・・・






※アクセス成功






『ラウラ・クリューセル』






〘魔力量〙・・・NowLoading・・・(数値化による誤差あり)



・・・



・・



・    



※読み込み完了











〘魔力量〙 ・  2 4 0 0 7 7 0 0

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