第109話 『バードストライク』Ⅲ


『それにしても、まだ本気は見せてくれないのか?今も持ってるんだろう?……『魔神の血』を。まぁ、使わずに死んでくれるのならそれで構わないんだが…』


「まさか、まだまだこの程度では使わないとも。ジンドー、貴様こそ全力ではあるまい。出し惜しみなど貴様らしくも無いのではないか?」


『お楽しみは後まで取っておくものだ。いや、ご希望とあらば今すぐにでも見せてあげようか?その場合……お前達が最期に見る俺の姿になる』


「大した自信だ…たが貴様にはそれが許される。認めよう、ジンドー…幾百年もの間、勇者と呼ばれる者達と戦ったがやはり貴様こそが最強、勇者そのものだ」


『それはどうも。褒めても見逃さないけどな』



白銀の剣に絡む揺らめく魔力を一振りで払いながら、ギデオンは空中から悠然と降りてくるカナタを大仰に褒めるが、それをカナタは肩をすくめて流した


空中で思い切りカナタからの鉄拳を受けて大地に叩き付けられたギデオンではあったが、特に負傷のような物はなく、ダメージは一切感じさせない


逆にカナタの方も2人相手に随分と派手な大立ち回りを見せている割には消耗の一つも感じさせていないのだ。互いにそんな感想を抱くのも無理はないだろう


だが、それは互いに納得がいく理由があるものだ



(ここで本気を出し尽くせばグラニアスが出た後に逃す為の力が残ってない、さらに言えば後2体もこの作業が残っている……ここで『神の血』なんて使えないものね、ギデオン)


(やりづらいことこの上ないな…手の内をある程度知られているのも含めて。しかも今の我々と尚競り勝つか…いや、予想はしていた。まだこれからだとも)





(いやつんよいなこいつら…前も強かったけど、これでも俺って3年前からめちゃくちゃパワーアップしてんのよ?それを2人でド突きあえるのか……これ、ガランドーサまで居たらマジで面倒だな…。トばして殺しに行ってもいいんだけどこの後グラニアス出てくんだよなぁ…その分の余力は残したい)




これにはカナタも頭を悩ませる……全力即殺、出来るのならばこれ以上の事など無いのだがこれだけの応酬を繰り返した事でそれは不可能である事が確信できた


恐らくは…3年前から飛躍的に力を増した現在のカナタですらも瞬殺できるような相手では無い。特にレイシアスが後ろに控えているような状況では厄介さが100倍は増す


戦いながらの2年で魔神討伐を成し遂げたが本来生産職であるカナタは自身の修練とは別に生産と研究、開発にゆっくりと時間をとれる分だけ力を増す。それがまる三年間…パワーアップの幅は尋常のものではない


はっきり言えば、現在のカナタが3年前の魔将を相手取ったならば3人纏めて10分もあれば始末できる程の力を付けているのだ


それを2人でぶつかり合い、互いに余力を残しながらも無傷とは……少し自信が削がれたカナタである



そもそも魔神族最強と謳われる3人がまともに修練を積んだのは何百年も前の話。才気溢れ天性の力に恵まれた3人はそこから何百年と修練をする必要など無かったのだ


そんな彼らが大真面目に、宿敵を考え、新たな技を作り、地の力を底上げ…弛まぬ努力をまる3年積み上げればどうなるか?


逆に、今の彼らが三年前のカナタと戦えば勝利を収めていたのは魔神族の方だった可能性すらある。彼は魔神ディンダレシアに到達すること無く、彼等3人に阻まれて命を落としていたかもしれないのだ



「挨拶がてらの運動はもういいだろう。ジンドー、ここからが…グラニアス奪還の本腰だ」


『へぇ……何があるのかな?』


「貴様に単独で勝てると思う程自惚れてはいない。だからこそ、「挑む側」として少しばかり数の力に頼らせてもらうとしよう」


『それはジュッカロの外縁部に降りてる別動隊の事を言ってるのか?』


「流石にそこは気付いているか…。だがそっちではない。まだ転移阻害は有効のようだ、この場所に直接戦力を送り込む事は不可能……だが、我々が使った転移が1回きりしか使えないとは言っていない」


『……成る程。そうか……か』



ギデオンの言葉に若干の舌打ちをしながら真上を見上げた


そこに……いくつもの巨大な影が映り込むのを確認する


通常の魔物ではあの高度からの落下には耐えられない、地面との衝突でミンチになるのが関の山だがこの周辺にはグラニアスの眷属である魔物達が多く集結していた


王の復活を心待ちにしていた…有翼の家臣達


それが今、空を埋め尽くすが如く襲来した


翼長にして20mを超える魔物が多数、それを超える巨大な鳥獣型の魔物が陽の光を遮らせながら天空を舞い降下してくるのが見える


それが次々に、数十秒おきに遥か空の上に出現する巨大な転移の魔法陣から現れるのだ。その数は瞬く間に千、二千、三千、四千…さらに膨れ上がっていく


悍ましい鳴き声と羽ばたく風の音が突如として周囲を埋め、一瞬にして魔物の領域へと成り果てるジュッカロの森


これに焦ったのはシオン、マウラ、ペトラの3人である



「どこからこんな量の魔物を……っ!?カナタの転移阻害の結界はまだ生きている筈です!」


「考えれば当然か…!奴らが侵入したルートで送り込んてきた訳か…落下に耐性がある魔物を、有翼の魔物だけを空から送り込んできておるな…」


「……凄い大きいのもいる……っ。……どうする……っ?」


「私達では魔物にまで手は回せません!あの数をカナタだけで瞬殺するのは流石に…」


「……いや、カナタの言葉を思い出せ。我らは「欲を出さず」「撤退の指示を守る」…これを守れば良いのだ。あとは、カナタを信じるのみ」


「ん……分かりやすくていいね……」



流石に動揺を隠せなかったが、ペトラはここでしっかりと冷静さを維持する


見れば最低でも白金級の化け物が多数…金剛級の魔物も点々と飛び回っている異常な光景はそれだけでも大国を滅ぼせそうな大戦力であり、一体ずつが雑兵の類ではない


それでも…ペトラは理性の底から「問題ない」と信じていた


1つはカナタへの信頼からだ


だがもう1つは史実に基づいた信用があった


数の暴力が得意なのは…此の場においてのみ魔物の特権ではないということを。まるで物語の伝承のように、勇者ジンドーが如何にして世界を救ったのかを…





『あまり舐めるなよ…?いいとも、何を考えてるのかは分かってる…グラニアスが出てくる前に削いでおきたいんだろ?…乗ってやろう、その誘いに』




カナタの変声されながらに地を這うような低い声が響いた


漆黒の鎧の周辺に渡る空気が歪む…莫大な魔力の放出によって発生する異常現象


カナタの肩部分の装甲が一部開き、その内部からミサイルのようにアイスピック状のアイテムが10発近く発射された。ギデオン達でもなく、上空を渦巻くように飛行する魔物達にでも無く……自分の真後ろに向けて


地面に突き刺さったそれは頂上部の球体をピコピコと光らせながら魔力を放つ


それが…莫大な閃光を放った


爆発ではなく、衝撃もない


ただ、光が収まるその後に…





凄まじい数の機巧魔導兵器が大地を埋め尽くしていた




『魔法袋は付与出来ない…普通は、な。だが俺は違う、少しばかり使いづらい条件があるが金属製なら付与できる。さぁ、お望みとあらばを始めようか!』



蠍型の大型兵器、その中でも特に大型の最高性能機…八脚に二対の大鋏は近接戦武装にして内部に魔法素粒子砲エーテリックキャノンを搭載、尾部は大型の砲塔『テイルブラスター』となっている『スコーピオン』型の頂点に座す『アンタレス』シリーズ


対空兵装として長射程の大型魔法素粒子砲エーテリックキャノンによるビーム砲撃と細かな対空雷撃魔法式速射魔砲を数機備えた六脚戦車『サジタリウス』


高出力の雷属性を纏う2本の大型衝角を備え、広い翼よりもシャープなボディに上面と下面には2連装中型炎属性バルカン魔砲を備えた近接装甲戦闘機『アリエス』


3種全機で7500機が、主人の背後に並び立つ


収納魔法『魔法袋』は自分で発動する以外に使用できない。これを他のアイテムに付与しようとする試みは勿論あったが上手く行った前例は存在しなかった


だが、様々な条件をつけてカナタはこれを可能とした


1つはカナタが付与するアイテム故に金属製…それもかなり魔法との親和性が高い上位金属でなければ不可能であったこと


もう1つの利便性を損なう点はこと


重たい金属製で、手で持ち歩かなければならないならば普段使いでの利便性は商人や軍隊でもなければそれ程大きくない。だが、その分容量は大きくして内部に自身の魔導兵器を収納し…その魔道具を装備できたのならば…


これにより、カナタは自分だけでいつでも大軍を呼び出すことを可能とした


一瞬にして空と地上に己の軍勢を広げる姿…これこそが黒鉄の勇者の真骨頂


数による暴力を数によって覆す理不尽の権化


それが今…



『全機、害獣を始末しろ。一匹もあいつらに近づけるな』


「攻撃開始!魔物達よ、鋼の機兵を鉄屑に変えろ!」



一斉に動き出す


地上を動く六脚戦車と蠍型は巨体を感じさせない速さで戦場の様々な地点に走り展開していき、装甲戦闘機は恐ろしい速さで空に向かって飛び立った


空の魔物は翼を畳めて真下に向けて急降下を開始、それぞれが持つ魔法を放つべく翼や嘴に魔力を集中させていき


それが今、衝突する



装甲戦闘機アリエスは正面に備えた稲妻を放つ衝角をもって降りかかる魔物に向けてを仕掛けた。脆い翼部分はなく、最初からぶつかりに行くために造られた異色の設計はしかしながら十全な効果を発揮する


突進を許した魔物は昇格により顔面や胴体を圧し折られ、そこに纏う強烈な雷撃により瞬時に命を奪われた


そこから跳び動き、高速機動による上下の炎属性バルカン魔砲をすれ違いざまの魔物に浴びせ掛け地に落とす


現代の戦闘機ではまず不可能な戦闘方法は空中で立体的な機動を行う鳥獣型の魔物に対して極めて高い効果を発揮する


さらに地上から豪雨の如く放たれるレーザー砲


アンタレスの尾部砲『テイルブラスター』とサジタリウスの主砲が張る弾幕は神憑り的な連携でアリエスの移動する隙間を縫い、魔物を容赦なく射落としていく


空から弾け、半ば煤と化した魔物が雨のように地面に落下していく中で…突如としてそこら中の地面が地響きと共に盛り上がり始める


砂岩を噴き上げて大地から出てきたのは…巨大ミミズのようなワーム系魔物や土竜型の魔物達、それがそこら中から地面を突き破って這い出してきたのだ


突然現れたそれに対し…アンタレスは空を撃ち続けるサジタリウスを守るように正面へと前進を開始し、突撃してくる魔物達を尾部のレーザーと大型の両鋏でバラバラに解体し始める


その威力は凄まじく、尾部のレーザーは纏めて数体を貫通して薙ぎ払い、両鋏はワーム系の魔物を糸でも切るように胴体を輪切りにしていき、八脚の太い足は土竜型の魔物の突進を受けても尚、不動…反撃の両鋏を開いた魔法素粒子砲エーテリックキャノンは10mを有に超える魔物の上半身を跡形もなく消し飛ばす


空から撃ち込まれる魔物のブレスや魔法が命中するも、青白く輝く透明な膜に阻まれて命中することはなく…十全に機能する魔障領域エーテリオン・フィールドによって弾き返される


戦いを見れば魔導兵器の無双にも見える


だがそれを……魔物は湧き出す数でカバーする


ここに万軍が入り乱れる大乱戦が幕を開けた



『随分と送り込んできたな。しかし、下からもか……新しく地中を潰せる兵器を創らないと駄目そうだな』


「分かっていると思うが、手勢を転移阻害魔道具へと向かわせてある。直に直接この場所への転移によって、ここは魔物に埋め尽くされるだろう。そちらこそ随分と数を揃えているようだが…流石に物量では勝てまい」


『手勢を、ねぇ…。そいつらが、息をしてるといいな?当然、俺の手勢もそこに居るわけだが』


「対魔導兵器の対策を積んだ精鋭部隊だ。阻害結界を構築している基点3箇所…時間の問題だと思うが?そこさえ潰せばこの拮抗は崩れさる」


『あぁ…対魔導兵器の対策、そりゃ十分するだろう。だからだ、ギデオン…だからんだ』  


「…なに?」



不審に眉をしかめるギデオン


この場所さえ魔物で制圧できれば、ジュッカロを守る魔導兵器の群れを挟み撃ちの形で攻めることが可能となる


この場の兵器群を破壊できればグラニアスの開放後の保護を十分に行うことも可能なのだ


ギデオン達の第一目標はこの封印周辺を魔物と自分達で制圧、それが出来なくとも配置された魔導兵器の類を半分でも潰すことが出来れば良いのである


そこに加えて転移阻害の結界を同時に攻め、これをあわよくば破壊。そうすればさらに大型で力のある魔物を直接この場所に送り込むことが出来るのだ


そうなれば10mや20m程度の今まさに戦闘を行っている軍勢程度は叩き潰せる巨獣を何体も引き寄せられる


空と地中に移動手段を限られた魔物で攻めなくとも問題なくなるのだ


そう…この場所に次いで重要なのは転移を妨害する結界を支える3箇所の基点なのだ


だからこそ、ギデオンとレイシアスは自らジンドーを抑え込みにかかり、いつグラニアスが現れても問題ないように彼を押さえ付けるべく戦闘を開始。精鋭の十剣隊をそれぞれ一部隊まるごと対空兵器を黙らせながら封印の基点へと向かわせた


彼らは対大型兵器や空飛ぶ兵器への有効打となる魔法の使い手やアーティファクトを携えている


のだが…



「ギデオン、不味いわ…。二剣と四剣が…半壊したそうよ。三剣は拮抗状態を保ってるらしいけど…」


「……!」



レイシアスが手にする水晶玉を見ながら苦々しくそれを伝えてきたことでギデオンも忌々しそうにカナタを睨みつけた


多方面作戦…ジンドーという頭一つで戦っていれば必ず片方は脆く出る、そう踏んでいたのだ


事実、対魔導兵器用のアーティファクトや魔法はこのジュッカロへ向かう本隊の大軍勢が衝突している前線でも成果は上がっているのを確認している。未だ戦闘が続き競り合っているのは間違いなくこうした対策の成せる結果なのだ



(まさかそれ程に強力な魔導兵器を配置していたのか?この封印ではなく、結界の基点に…?…グラニアスを殺すならばここにあって然るべきの筈だ、何故…)



『なぁギデオン。お前は「勇者ジンドー」と戦ってるつもりなんだろうが…少し違うな』



カナタの言葉に思考から引き上げられたギデオンはその言葉に「…まさか」とつぶやいた





『お前達は今、「勇者パーティ」と戦ってるんだ。ま、半分しか居ないけどな…強くなったのは何も俺やお前達だけじゃないみたいだぞ?』






ーー




その光景を見て、互いが目を見開いて戦慄していた


あまりにも異常、あまりにも異質…街や国すら飲み込める魔物達を相手に偉業の兵器が大地を埋め尽くし空へと飛び立ち真正面からの戦争が始まったのだ


魔将の教えを受けていた3人も、勇者の教えを受けていた3人もが初めて見る…勇者ジンドーの戦い


彼女達も知らない…見たことがあるのは精々鎧を身に纏っていた戦う姿や、それも数分という短い間のみという事がほとんどだ


それだけでも強かった、最強という幻のような言葉を渾名されるに相応しい圧倒的戦闘力を見せつける…成る程、これが勇者ジンドーか、と納得していた


甘かった


自分達は……自分の師匠を知らなすぎたのだ


鋼鉄の軍勢を手足のように操り、洪水のように犇めき押し寄せる魔物を同じ力の流れで押し返し、その上に君臨する姿


そして単騎にて最前線に乗り込むその雄姿


それこそが、黒鉄の勇者なのだとようやく認識するに至った


今、互いの軍勢の最前線に躍り出たカナタが今一度魔将2人と激突するのが遠目で確認できた



「これが…黒鉄の勇者ですか…!実際に見ると…現実味すら薄れますね…!」


「今、我らはお伽噺の戦場に居ると言っても良いだろうな…。もはやあやつが自分を卑下する「怪物」という言葉では的外れだろう。あれは……「軍神」の類いだ」


「んっ……流石カナタっ……多分、魔物がこっちに流れないようにしてくれてる……っ」


「なら、モタモタしていられませんね。…ケリをつけましょう、早々に。そうすればグラニアスを残すのみです」


「そうしようか。気合を入れて行くとしよう!カナタが魔将2人を止めてる内に…!」



それを見るだけで勇気づけられる


三人の体に魔力が高まり本来の自分を超えたはずの力が引き出されていき、ただ1人にのみ与えられる才能が花開く


だがそれを見て意志の力を強めるのは彼女達だけではない



「これが黒鉄の勇者との戦争か…!二人共、早く決着を付けるぞ!俺達でこの戦いを終わらせる!」


「と、いいけどね。まぁやるだけやってみようか!このままだとマジで負けかねないし!」


「そうね…!じゃあ二人共、殺さないギリギリくらいにするわよ!あの化物がこっちに来る前に終わらせないと…っ!」


「そこはギデオン様とレイシアス様を信じるしか無い。奴が来たら終わりだ、カタをつける!」



魔神族の若き3人に莫大な魔力が宿り、高まり溢れ出る


その魔力量は間違い無く金剛級…いや、それを超えかねない怖ろしい力を秘めていた。他の魔神族とすら一線を画するその力は間違い無く…魔神族最強とされる者達の教え子たる姿


揺らめく闇色のオーラが大気を震わせ埋め尽くし……正面から溢れる真紅、瑠璃、翠緑の魔力と波のように衝突する




「起きろ、天帝の蛇王アヴァラス・ギドラ……!」




戦いの幕を再び開けるようにして、10体の大蛇がペトラの背後よりその巨体を持ち上げた


アルドラと嵐纏の力により本来ならばまだ辿り着けないであろうフルパワーに近い力に手を掛けたペトラはなんの苦も無く10体の大蛇を従える


空気をきしませる爆風が大気を支配し、その目が怪しく光を放つ…それを見て僅かに顔を引き攣らせたキュリアは自分の背後から光の綱で繋がった十の巨大鋏に魔力を回した



「あぁもうやっぱり…!10体同時顕現…あの子をすぐに潰すのは無理よ!どうにか出来る!?」



キュリアが大蛇を控えさせたペトラと対峙しながら

問いかけるその先で…いつの間にか前に出たギデオンが魔力を湛えながら正面に出てきたシオンに対して上段からグレイブを振り降ろし、長槍のプロメテウスを突撃しながらくるりと器用に回転させたシオンがこれを同じく上段から迎え討つところだった



断骸ダンガイ……牙斬ッ!」



第七臨界オーバーロード・セブンスッ!」



断骸ダンガイはギデオンが操る魔法にして剣術。それを自分の武装に落とし込んだゼウルはこれを操ることを可能とする


その効果は武装に自身の魔力を流し込み、覆い尽くすことによりその武装による一撃に様々な力を施す、という物


ギデオンはこれにより、先程「自身の斬撃を数十倍の数と威力に引き上げ」、「魔力による斬撃を放つ」「魔力を切断する」力を込めたことによりカナタの星核アトムを切り払った


一見単純な魔法だが、その真価は己の武技に左右される。達人が操れば大地を2つに裂き、山を3枚に卸し、海に道を作り出し、そして魔法を容易く掻き消す


ゼウルはその領域にまで辿り着いて居なかったがそれでも…この周辺地形を変える程度の一撃は容易く放つことが可能だった。純粋に破壊力と斬撃を乗せた一撃特化の「牙斬」はガードの上から目の前のエルフを叩き潰せる



筈だった



鼓膜を引き裂くような破壊的な衝突音が鳴り、互いの魔力がオーラとなって衝突して目まぐるしく光を放つ中で…その中心にいるシオンのゼウルは互いに一歩も引かず互いの愛器を押し合う形となる



「チッ…!!小娘、貴様ッ…!」


「っ……これでも押し勝てませんか……!ならば……灼炎槍ブレイジング・スピアっ!」



シオンの魔力が更に高まる


両手でプロメテウスを振り下ろしながらの魔法行使、力を振り絞る近接戦の最中に発動する魔法の難易度は桁外れに高い


だが、この槍自体が杖と同じ魔法の発動媒体であることも含め彼女の天性の才能がこれを可能にする


頭上に現れたのは円錐型の炎で形作られた3mはあろう大きな槍…炎槍フレイムランスの上位魔法である灼炎槍ブレイジング・スピアは螺旋状に炎を渦巻きながらその穂先を真上からゼウルに向ける



「上級魔法か!だがその程度……付与により魔法耐性を底上げした俺には効かん!」


「そうでしょうかっ…?なら試してみましょう………臨界オーバーロードッ!!」


「なにッ!?」



それが、バグンッ、といきなり巨大化した


実に3倍を超える程に、突如として10mを超える巨大な柱のようなサイズに膨れ上がったのだ


見た目だけではない、明らかに内包する魔力まで爆発的に上昇しており元より強靭な肉体と魔力を持つ上、仲間達より様々なバフを掛けられたゼウルがその熱にうめき声を上げる程に…


その威力は元の数十倍という数値では効かない程の変貌を遂げていた、もはや別の魔法と言ったほうがいいだろうその魔法をゼウルは先の敗北から受けてはならないと判断する


シオンの腹を蹴り飛ばすようにして自分自身も真後ろに飛び退き距離を離す…そのゼウルを、蹴り飛ばされ宙を舞いながらもシオンは逃さない


 

「くっ、ぅ……!!逃がしませんっ!穿て!炎王の魔槍ヴァーナレクッ!!」



シオンの呻きを混ぜながらも衰えない戦意と共に、指先を振り下ろした仕草によってその槍は放たれる


それは大砲のように勢い良く発射され一直線にゼウルを正面から貫通させるべく猛速で飛翔、その威力はどう見ても負傷を負ったあの時の複合魔法の比ではない


ゼウルはグレイヴを下段から切り上げようと構えるとその刃に魔力を集中させる


断骸ダンガイによる武装の魔力強化、付与


迎撃による相殺ではあまりにも向こうの破壊力が高すぎる…バウロとキュリアを余裕で飲み込みかねない。故に、これを打ち払うには先程ギデオンがやったように……



(構築している魔力そのものを両断して霧散させる…ッ!)



ギデオンは星核アトムを切り刻み、霧散させた…爆裂させることなく無力化していた


完全に真似できなくとも良い、打ち合って爆発させてしまえば前の二の舞いだ。つまりやるべきは…



断骸ダンガイ……魔絶ッ!」



切っ先正面から飛来する焔の巨槍の、穂先ど真ん中に正面から刃を叩き付け…真上に向けて切り払い上げる


師のように完全に掻き消すのは今のゼウルには不可能だ。だが魔力を両断する事なら出来る…だからこその、一刀両断


正面から刃を押し当て、そこから上に向け勢いよく斬り上げたグレイヴは込めた魔法の力を遺憾なく発揮し灼熱の巨槍を真っ二つに両断した


本来触れれば爆裂するはずの巨槍……しかし縦一閃に両断された魔法は左右に分けれて遥か彼方にそのまま飛んでいき…遠くの地面に着弾、大噴火の如き爆発を巻き起こして大地を震わせる


その威力…まともに当たればどうなるか分からない。自分の判断は正しかったことをゼウルは感じていた



(なんだこの威力……!?いや、そもそも奴の馬鹿力は何だ…?魔力による強化を回した俺がまともに打ち込んで微動だにしないだと?肉体強化系…違う、あの魔法の変化は……)


「ゼウル君!そのエルフの子、多分色んな物を強化出来るのよ!今の魔法も術式から構成まで全部が上位魔法のままだったのに、魔法の威力も魔力も規模も…全部が丸ごと!」


特異魔法オリジンマジックか…!面倒な事を!だがそれだけでここまで強くなるものか……?!」



キュリアの声が飛んでくる、その魔法を見る目は確かなものだ。魔神族最高位の魔法使いであるレイシアスの教え子は伊達ではない


つまり、不可思議なことに完成した魔法を発動後に爆発的に強化した事になる…これはあまりに不自然だ。完成した魔法の威力を魔力を更に込めて上げるだけならば理解できるが完全に形、大きさ、威力、魔力量、何から何まで変化するのはおかしい


例えるならば絵の具で書き足して絵を大きくするのではなく、書いた後の絵をキャンパスごと巨大化させるが如き異常現象



(いやそうか!魔法だけではなく自分自身にまで同じように強化をかけてるのか!魔法の威力の膨れ上がり方…あれが肉体に掛けられるならばあの馬鹿力もあり得るッ!)



シオンの力の正体にある程度の感付くものの、距離を取った彼女が手にする槍を振り回し発動させた魔法は瞬く間にシオンの周辺にボーリング玉のような赤いオーラを固めた球体が、まるでホタルの群れのように多数浮かび上がるのが見えた



赤熱球レッドスフィア臨界オーバーロード……!!加減無しで使うのは何回目でしょうか…此処から先、私ですらどれ程の威力が出るのかやってみなければ分かりませんっ!」



くるり、と回転させた槍、プロメテウスを真横に構えてそこに人差し指と中指の2本を添えたシオンのその言葉とともに周囲に浮かぶ赤いエネルギー球が……全て一斉に膨れ上がる


ボーリング玉程度しか無かった大きさはバランスボールのように巨大化し、内包する真紅の魔力は色が変貌するほどに濃密に…立ち上る陽炎によって景色すら歪む



炎星群メテオニスフレイムッ!」



それが一斉に放たれる


真紅の大玉が周辺丸ごと巻き込むように一面にばら撒かれる。ギデオンの回避先や周囲一帯まで全てを魔法による爆発で埋め尽くして潰すべく撒き散らされた


これにいの一番に反応したのはキュリアだった


杖をダンッ!と地面に突き立て、手のひらを正面に向ければ正面に控えた大鋏の内5本が口を開くように上下に開かれた、その内側にギュッン、と魔力を挟み込むように蓄えガトリングのように回転しながら



衝閃雨ショック・シウスっ!」



凄まじい連射速度で衝撃を孕む光弾を乱れ撃ちし始める


ギテオンの背後から彼を型抜くように放たれた弾幕は周辺を爆砕するべく放たれた真紅の大玉が地面に接触する前にそれに何発も命中。数発までなら耐えたシオンの魔法も幾度と叩き込まれる光弾を受ければゼウルや目標の場所に辿り着く前に爆散させられていく


だが、それを許さない者も居た



「ストームゲイザー、風撃衝エアロブレイク烈風刃ゲイルエッジ、ウィンドアックス、緑閃砲グリーンメーザー、エアープレッサー、ソニックブレード、旋風錘スピアーハリケーン…」


「ちょっ…多すぎっ!?なによそれ!?何個同時に発動してるの!?」



2体を残し、ガパッ、と大口を開いた8体の暴風の大蛇がその口腔内に魔法を咥え込むようにしてチャージし、撃ち放つ


しかも、大蛇一体一体がそれぞれ別々の魔法を連発してきたのだ


一つの魔法を10個展開するのとは訳が違う…その点に関してペトラはキュリアを凌駕していた


残り5本の大鋏の甲を組み並べて壁とし、嵐のように撃ち込まれる8種類の魔法の盾とするキュリアに地面から脚が離れそうな衝撃と爆風が襲いかかる…ツインテールをその風に吹きなびかせるキュリアはそれに怯まず自分の杖の先端をペトラに向けた



「ぐぅ…ぅ………!!非常識よほんとっ……衝撃砲ショックカノンッ!ファイアッ!」



一閃に放たれた白色の魔力は光線となって一直線にペトラに向かって放たれる


これに反応した2体の大蛇がその身を立てに射線へと割って入り、額で受けるようにして受け止めた…が


大蛇一体はこれを受けて頭部が完全に吹き飛び、二体目はその衝撃に耐え切れず首から半ば千切れかける程の損壊を見せ、貫通した白色の光線は止まること無くペトラに向かう



「っ…!2体とも破壊されるか…どんな威力をしておる…!?」



ペトラの顔が想定外の威力を目の当たりにして険しさを増す


これに対して即座に手にしたアルドラを変形、弓型へと変えると瞬時に魔力の弦を引き絞り、正面前方、自身の胸の中心に迫る白色の光線の頭一点を狙い…



「魔弾、シルバリオっ!」



つがえた魔力を撃ち込む


翠緑に輝く槍状のそれは驚異的な狙いに推し進められて跳び向かう光線の先端から正面衝突させるように衝撃し、まるで傘を開くように平たく魔力を展開した


そこに衝突した白色の光線は



ーーキュババババババッッッ



聞いたことのない音を連続で立てて吸い込まれるようにして消えてしまったのだ



(防がれた!?にしては変よ…!衝撃砲ショックカノンは命中すれば爆発的な衝撃を撒き散らす魔法なのに……防がれたというより?撃った魔法そのものが何かに食べられたみたいに消えたように見えた…!?あ!今殺した蛇が再生した!?あれ風で作られてるのね…って、それじゃあ不死身じゃない!!?)



(硬いなあの鋏…!!あれだけ魔法で袋叩きにして無傷か!というか今の魔法もどんな威力をしておる……!ギドラが2体で受けてどっちも崩壊した上で貫通してくるだと!?まともに喰らえば一撃でダウンの可能性もある…あれを周りに浮かんでいる鋏からも撃たれれば防御しきれるか……!?)



頭の中で走る今起きた魔法の情報に互いに顔色を少し変えるキュリアとペトラ。相手の想像を越えた力に戦法と戦略を考え直す


だが、それを考えさせない為に、と考えるしかない程に…彼女の周囲では金属と空気がぶつかり爆ぜるような音がそこら中で響いており、時折の衝突音と共に地面がガンガンと砕け散る


それを見て舌打ちするペトラは思考を急いだ



(今のマウラに追い付くのかこの男…!?)



ペトラですらも姿が消えかけて見える速度…その高速域の中でバウロとマウラが双剣とガントレットをぶつけ合わせているのがなんとか視認できた


現状、バウロはいの一番にペトラへと襲撃をかけていた


先の戦いから、放置してはいけない相手であることを重々に理解しており、ペトラがキュリアへの攻撃を開始した瞬間には既にペトラの方へと移動していたのだ


それを阻んだのがマウラである


瑠璃色の稲妻を纏ってバウロの進路上に瞬時に現れたマウラがこれを正面からの正拳で迎撃、突撃の速度を後ろへと殺されたバウロに低姿勢のままに突っ込んだマウラの一撃とバウロの一撃が



「……雷迅掌ッ!!」


激震ゲキシン、破壊ッ!!」



衝突する


闇色の光と瑠璃色の雷撃がぶつかり弾け、そして2人と姿がくらみ、別の場所に


振るう双剣と連打される掌底が衝突して火花を起こし、その度に巻かれる破壊力が地形を壊す…時折振りまかれる破壊の力と雷撃が交錯しては空気を揺らし、姿は見えどもそれが光となってそこら中で瞬いているのだ


現在のマウラは雷焉回帰ハイエンド・ボルテージによる無限の魔力を六装雷心ヘキサ・コアという六個の魔力発生源を体に備えた膨大な出力で強化魔法を回しながら動いていた


その速さはもはや肉眼で捉える限界を大幅に超えている


ペトラですらも目で追いきれない異常な速度域での戦いがペトラの周りで起きている…彼女の心臓を狙うバウロにそれを阻止して返り討ちにしようとするマウラの攻防



「邪魔、してくれるねぇ子猫ちゃんッ!ていうか随分と魔力を噴かしてるけどいいのかな?そんなんじゃ、すぐに無くなるね!」


「んっ……!……なら、魔力無くなるまで待つ……?……試してもいいよ……っ!……今度はこっちの番……ッ……雷帝の撃槍ヴェンダニールッ!!」


「チッ!させるか……!」



マウラが放つ飛び蹴りを腕を交差させて受け、真後ろにノックバックした瞬間にその反動で宙返りをしながらマウラの手の中に3mに達する稲妻を束ねた槍が発生し、握られる


それを体を回転させながら迷うこと無く投げ放った




ばら撒かれる真紅の爆裂弾を斬り伏せ続ける…ゼウルに向けて



(あそこからキュリアの盾を貫通できないと判断したか…!前とは段違いに強いなこの子!それにさっきからバカスカ魔力吐きまくってるのに全然疲れる様子が見えないしどうなってんだ!?)



魔力を自分の強化に回すバウロは足の裏から極小の破壊魔法、激震ゲキシンを放ち猛烈な加速を実現する


真紅の大玉が雨あられと降り注ぐ中をジグザグと紙一重で全て躱しきりながら、速度を上げて放たれた雷槍に追い付くようにして正面に回り込み、交差させた双剣の中心で受け止める


瑠璃色に弾ける稲妻と双剣にかかる強烈な衝撃とスパークに腕の痺れを感じ、受け続けるのは得策ではないと判断



激震ゲキシン、交刃ッ!」



雷槍を受ける双剣に纏う破壊の力でこれを力技にて打ち消す事に成功させる


両手に残る痺れるような電撃の感覚に手をシパシパと開いて握るを繰り返しながら改めて、相手の強さの大幅な上昇を感じ取る…どう考えても異様な強さ、今の自分達がここまで力を出して、それを正面から戦えるなんて人類の何人が出来ようか


真紅の大玉が止む


見ればシオンが少しばかり額に汗を浮かべ「ふっ……ふっ……」と息を僅かに深くしているのを見れば、流石にここまで連続であの破壊力の魔法をあれだけの量ばら撒き続けるのにも限界があるのだろう


放った魔法の大部分をキュリアの予想以上の威力と連射速度の魔法で撃ち落とされたのがシオンにとって想定外の事だった、ならばと量でカバーしようとするも魔法を構成する魔力そのものを切り払い爆発させずに迎撃するゼウルも厄介なことに有効打を打てない要因にもなっていた


ペトラへ攻撃する大鋏の数を半分奪える事とゼウルの拘束をするべく連続で放ち続けていたのだが、それも限界…力を残すべく魔法の連射を中断し、ペトラの元に下がる判断を下した


そこにマウラも続き一度集まる3人だがあまり顔色は良くない



「すまん、あの女術師を抑えきれなかった。あれの魔法は食らってはならん。理屈は分からんが凄まじい威力だ、生身で喰らえばどうなるか分からん。大丈夫か、シオン?」


「ふぅ………私は問題ありません。少し、集中力を使いました…。向こうの手札があれだけならば抑え込めますが…」


「ん……多分まだある…。……チャラい奴、取り敢えず追い付いてるけど……あの魔法は面倒……二人共気を付けて……」


「うむ。悪いがサポートは程々になりそうだ。我はあの女術師に意識を向ける」



ペトラがその場で2人に魔法を付与し、シオンは掛けていた伊達眼鏡を魔法袋に収納した


三人の考えではそれぞれ前衛と後衛、遊撃に分かれてのチーム戦だったのだが相手がやはり相当に強い…ペトラがタイマンに意識を裂けばこの戦いはそれぞれの個人戦が中心となる


それを避けたかったペトラだが「致し方ない…」とこれを諦めた





だが……その判断すら、ペトラの中で過去のプランへと成り果てる




突如として発生した、下から突き上げるような大地震に体が浮遊したのだ




「なんだっ!?地震……いやまさかっ!?」


「ペトラ!これは……っ!?」


「……ゆ、ゆれてるっ……!」



それも揺れてるなんて話ではない


真下から、ドンッ、ドンッ、と何度も強い揺れが連続で起きているのだ。まるで地の底から巨人が殴り付けて来ているかのように…


ペトラはこれに表情を歪めた


その方向に目を向ける


その視線の先にある……漆黒のピラミッドに




ーー  バ  ギ  ン  ッ




巨大な罅が入った


地震が起こる度に、不吉な音と共に巨大な罅が走り


その欠片が天に吹き飛び、崩れ落ちる


漆黒のピラミッドは幾度もの巨大な地震により罅割れ崩れ、そして…






天空にそのパーツを巻き上げるようにして粉々に粉砕されたのだった








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【Database】



『マウラ・クラーガス』



〘種族〙神獣人(天猫族)



〘年齢〙15



〘魔法名〙雷焉回帰ハイエンド・ボルテージ(基本属性・雷)



〘魔力量〙412200(通常時)(数値化による誤差あり)



〘職業〙魔法使い



〘身体〙150cm B84 W54 H79



〘来歴〙

ケネルーの森に存在したユーラシュア巨大亜人集落にて産まれ、生活してきた少女。その中でも古よりユーラシュアを支え導いてきた最古の四家であり力と特殊な体術の教え手にしてユーラシュアの治安と外敵から守護する防衛軍を率いる一族であるクラーガス家唯一の生き残り。

かつて星の女神に仕えた選ばれし六神獣の末裔であり、その6体の神獣が1つである天猫の一族という伝承に記される程の希少種族。その肉体能力は凄まじく、神獣の血の強さによってさらに肉体能力は高まるとされており天猫の一族は最たる特徴として身の熟し、直感、素早さに特化した一族とされている。

マウラの異次元的な速度と肉体能力は神獣の生まれ変わりとされる程に強い物を受け継いでいる、言わば「先祖返り」が由縁である。

後述の特異魔法が能力上昇系の能力ではないのにも関わらず、著しい肉体能力の上昇が可能なのは強化魔法の才能も去る事ながら彼女がその見に受け継いだ血と才能がどれ程特異な物なのかを裏付けている。

体を動かす事やお昼寝、食事が大好きなのんびり屋であり普段から眠そうな目付きをしている小柄な少女。獣人は三大欲求という本能的な物に正直だが、マウラは特に顕著であり、良く食べ良く眠り良く動く。彼方と結ばれてからはそれはもう彼とようになった。自分の家族群れを何よりも大切にする少女であり、親友達や想い人に対してとても強く情深く心を寄せる。

心を寄せた相手の匂いが大好きなのは本能的に自分と相性が良い相手を選んでいるからであり、彼方とお昼寝する時は器用に彼の腕の中にすっぽりと収まるのが大好き。親友達と眠る時は2人の間によく挟まっている。


神藤彼方と出会い、彼に助けられ拾われてから共に暮らすようになる。

昔、どこかから伝わってきた勇者が持ち込んだ物語に出てくる「ヒーロー」という存在に密かな憧れを抱いていた。目の前でユーラシュアの人々が殺され隠れることしか出来ず、震えるだけの自分達の前に現れた彼方にその姿が重なり、共に暮らすようになってからはお昼寝も美味しいご飯ももたらされ強さへの道標を示してくれる彼方に想いを寄せるようになる。口数の少ない少女だが、その想いは強く、彼が黒鉄の勇者と判明してもそこに強い興味を示さず、あくまで「私の勇者ヒーローはカナタだけを指す言葉である」とその熱い感情を伝えた。



〘戦闘力〙

まだ己の力を知る前にユーラシュアが滅亡する憂き目に会ったが、後に最愛のパートナーとなる神藤彼方に拾われてからその才能を開花させた。

保有する特異魔法、雷焉回帰ハイエンド・ボルテージは生物の常識を遥かに逸脱した魔法であり、操りきれなければ身を焼き滅ぼすと警告した彼方により使用を禁じられていた。


その効果は「無限の魔力生成」

自身に加わる力、速度、衝撃、負担、ダメージ、ストレス、そして心に抱える感情を元に自身の雷系魔力を生成する能力であり生物の魂のエネルギーとして湧き出す魔力とは完全に別で生み出される魔力。

その魔力生成量は使いこなせない時から相当量があり、彼方がこれを確かめた時、操り切れずその身を焼き焦がしてしまう可能性を危惧する程のパワーを秘めていた。

完全にマウラが使おうとする消費魔力を生成魔力が逆転する事により彼女は無限の魔力を保有する事を事実上可能としている。

これは生物上不可能な筈であり、魂から肉体に溢れ貯まる魔力とは別に魔力を用意する事は、魔道具により大気などに存在する魔力を吸収利用する事は出来ても生物として行うことは不可能。

操り切れれば文字通り無限の魔力による戦闘が可能となるが、課題として操りきれる魔力の出力に技量が試される。操り切れなければその魔力は自身の身を焼き焦がす結果となるだろう。

運動エネルギーの魔力への変換効率が高く、最初は自身の生み出す速度をメインに魔力を生成していたのだが彼方との距離が詰まったことで心情的魔力変換がその効率を凌駕する。強い感情により生み出される魔力はそれまでの物より強い出力を生み出しており、本人曰く「愛」らしい。そのおかげか、なんと速く強く踏み込み過ぎる事でという怖ろしい技を生み出した。


つまり、空をのである。


戦闘スタイルは自慢の速度を活かした超攻撃的な遊撃を行うマッハファイターであり親友達の面々きってのスピードスター。

強化魔法は力の増強もだが、特に俊敏性の向上を大の得意としており常人の目には映らない程の速度で戦闘を行うことが可能。元より持って産まれた天性の肉体能力は獣人の中でも特出した身の熟しと俊敏性を持っており、これを強化したマウラを捉えることは困難を極める。

この速度を生かした連撃と一撃離脱がメインの戦法であり、これを利用した最も多用するお気に入りの技が所謂「ラ◯ダーキック」。

助走や勢いが威力に直結するこの技を彼女の神速で行えばその威力は語るべくもないだろう。

余程読みの強い相手か、同速度帯で戦闘が出来る者でなければ攻撃を当てることは不可能とすらされ、認識する前に命を刈り取られる事となる。


ちなみに、彼方への夜這いが彼女の秘めた隠密性を開花させてしまい、神速と隠密による奇襲で理不尽な暗殺が可能となってしまった。


愛武器は装甲ガントレット。関節部を除いて手の甲側は全てが装甲を施されており、掌部分の柔軟さを求められる部位にすら可変可能な装甲部位を施されている。手首から少し上までしか無い短めなガントレットであり、これは彼女が自分の機動力を損なわないための設計となる。

このガントレットによる装甲で攻撃を防ぎ、連撃により叩き伏せるのが愛用する戦法。

実は脚部装備も所々が装甲化されており、脚撃も視野に入っている設計である。


その実力は驚異的であり、金級パーティ全員を単騎で死なないように無傷で制圧、知らずに戦った戦闘マニアの三魔将ガランドーサが己の弟子に、と惚れ込む程に高い戦闘力を誇る。白金級でも上位に位置する力が間違いなくあり、レイシアスからの不意打ちで動けなかった事へと後悔が彼女の直感性と警戒心を覚醒させ不意打ち等への高い対応力を引き伸ばした。


雷属性魔法を得意とし、様々なオリジナル魔法を編み出して使用している。

破壊力も相当な威力があるが、雷撃による麻痺などが非常に厄介でありクリーンヒットしてしまえばダメージに加えて痺れが相手の自由を奪い去る。

雷撃由来の伝播する破壊力は余計な破壊を及ぼさずに命中させた対象のみを破壊する器用さも持ち合わせており、威力はシオンに譲るものの厄介さは随一。これを無限の魔力で無尽蔵に出力を上昇させて放つオリジナル魔法は凄まじく、アレンジして格闘戦に織り込んで戦うスタイルは彼女独自のもの。


真に恐るべきはこれらの魔法を魔力切れ無しで放ってくる事であり、あからさまに大技ばかりを連発しているように見えてその実、魔力的な消耗はゼロという初見殺しを仕掛けてくる。


お気に入りの魔法は近距離雷撃衝波魔法『雷迅掌』。

指先や掌底を相手に触れさせゼロ距離から放つ破壊の雷撃を直に叩き込む魔法であり、彼女の神速と合わせて使用される事で不可避の一撃となる。

相手に接触する必要があるものの、結界などでの対策が不可能であり、手加減していたとは言え激震ゲキシンによる魔法相殺で防御していた三魔将ガランドーサの防御を貫通して僅かながらダメージを与えた。



〘・・・〙

「なにが」とは言わないが彼方とする時は上に乗ってするのが好き。仰向けで寝る彼方や座る彼方の上に乗るのが大好きであり、しっかり体重を乗せながら両手で真上から押さえ付けられて一番奥を嬲られるのがいいんだとか。Мっ気は強いが攻め気質であり肉食型。夜這い回数はメンバーの中でも最多を誇り、彼方が他のメンバーと致した匂いを鋭敏に感じ取って襲い掛かる肉食の獣。

抜かずの最高記録は5回。達成時には腰がガタガタに抜けて呼吸も乱れ、意識は半分飛んだ状態で自分の下腹部を抑え込んでいたんだとか。

基本的に押し倒す方でメンバーの中でも特に激しい。しかし序盤の彼方の上に乗っかって激しく押せ押せなのに対して中盤から怪しくなり、後半は完全に彼方の攻め攻めににゃんにゃん言わされる。しかも自分が攻めてる時は妖しく蠱惑的に焚き付け煽り、彼の男心と攻め心をガンガン燃やしてからこっ酷く仕返しされるのを狙う策士系誘い受けキャットでもある。

上に乗ってのハイペースなは容赦なく彼方を搾り取りに行くが、結局は下腹が重たくなる程たっぷり仕込まれて足腰立たなくなり、挙げ句メンバーの中で一番打たれ弱いという汚名を付けられてしまった。

しかし攻めスキルは本物でお口での攻めも、初めてでいきなり彼のとても立派なモノを喉の奥までお迎えして根本までいただいちゃったりした。彼方曰く「あれはやばい……腰が溶けそうだった…」らしく、なんだかんだでお気に入り。

彼は苦しくないのか少し不安だったりするが、食べちゃう系猫耳曰く「んっ……濃い匂い、好き…っ…あとちょっと美味しい……っ」とか



〘一言コメント〙


「んっ………カナタは上から根本まで入れてお尻ぺたん、ってくっつけて……一番奥まで届いた所でお尻ぐりぐり動かされるのが好き……っ。……あれやるとカナタの腰が浮いて……私の一番奥を狙ってぐりぐりしてくる…っ…私はこれが好きっ…!……出す時のカナタは脚とか腰を上から押さえてくる…っ…私の体重もあって、お腹の奥に…めりっ、て食い込んで…その状態でどばっ、てされるとすごいっ…!……蓋されて溢れない感じっ…どんどんお腹の奥にカナタのが溜まってく…っ、私も耐えられなっちゃうけど…でもこれが大好きだから絶対一回はやる…っ!…あとカナタは向かい合ってキスしながらも大好き…声全部飲まれちゃう感じで…私も頭ふわふわになっちゃう…っ。…口ですると嬉しそうに頭撫でてくれるの…っ…そこで耳とか、くにくに触るのもカナタは好き…。…出そうになると私の頭を抑えようとするけど…でもちょっと躊躇って撫でてくれる…っ…別に思いっきり抑えてもいいのに…っ。…カナタは燃えてくると向かい合って抱き締めるみたいにしながら一番奥で押し込みながら出してくる…これが凄くて…頭がパチパチってなって意識がとんじゃいそうになる…っ!…あとはっ…ーー」



※匿名の人物から「これ以上俺の癖をバラさないでぇ!」と悲鳴が上がったので割愛



最後に彼方と結ばれたのに回数で行けばもうすぐ一番に躍り出そうなのは一体どういうことなのか

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